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薬の準備中、50代女性「今すぐ処方せんを返して!」薬剤師「返せない」と伝えるも?→返却を迫った“切実な理由”とは…

  • 2026.10.10
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

80代の母親のお薬を一包化している最中、「処方せんを今すぐ返してください」とカウンターから離れなくなった50代の女性。

スマホのカメラを構えて「写真だけでも」と繰り返したのは、予想外の理由でした。

家族で薬の情報を共有するときに役立つ方法もお伝えします。

一包化を待つ間に突然始まった「返してください」の押し問答

「すみません、さっきの処方せん、一度返してもらえませんか!」

受付から15分ほどたった頃、カウンターに来られたのは50代くらいの女性でした。お母さまの退院後、初めての処方せんです。

お薬は9種類あり、飲むタイミングごとに1回分ずつ袋にまとめる「一包化」の作業を進めているところでした。

待合室の椅子には、80代くらいのお母さまが一人で座っていました。娘さんはそちらを気にしながらも、カウンターの前から動こうとしません。

「処方せんは今、お薬との照合に使っていますので、作業の途中ではお返しできないんです」

とご説明しましたが、娘さんは引き下がりませんでした。

「写真を撮るだけでいいんです。すぐ返しますから」

娘さんはスマホのカメラを起動したまま、画面とこちらを交互に見ていました。指先はかすかに震えていて、画面にはメッセージアプリの通知が何度も表示されていました。

処方せんを撮りたかった本当の理由

「何かお困りのことがあるんですか」と尋ねると、娘さんはため息をついてスマホの画面をこちらに向けました。

「兄は、母の薬がこんなに増えたなんて信じないんです」

画面には、お兄さまからのメッセージが表示されていました。

「本当にそんなに薬が出てるのか? 証拠を見せてくれ」。退院を機にお薬が5種類から9種類に増えたことを伝えたところ、信じてもらえなかったそうです。

お兄さまは遠方に住んでいて、お母さまの通院や服薬の管理は、すべて娘さんが担っていました。

「薬が増えたのは、私の世話が足りないせいだと思われている気がして」

娘さんがほしかったのは、処方せんの写真というより、自分の言葉が正しいと分かってもらうための“裏付け”だったのです。

私は、お薬の写真と名前、効き目が載っている「薬剤情報提供書」をお渡しすることを提案しました。

お渡しのときに用紙を受け取った娘さんは、「これなら兄にも伝わります」と言って、ようやく表情をゆるめました。処方せん一枚の向こうに、家族の間のすれ違いがあったことを知り、私は胸が詰まる思いでした。

家族と薬の情報を共有したい時にできること

患者さんのお薬が多くなると、管理が大変になります。

本人だけでなく家族もお薬の情報を共有することが大切です。

お薬手帳や薬剤情報の用紙を“家族の共通資料”にする

処方せんの原本は、法律に基づいて薬局で一定期間保管することになっています。

ご家族と情報を共有したいときは、お薬手帳や薬剤情報提供書を活用するのがおすすめです。お薬の写真や飲む目的が載っているため、医療に詳しくない方にも伝わりやすくなります。

電子版のお薬手帳には、家族で情報を共有できる機能を備えたものもあります。お薬手帳の切り替えを機に、導入を検討してみてもよいでしょう。薬が増えた理由が分からないときは、遠慮なく薬剤師に聞いてください。

※登場人物のプライバシー保護のため、内容の一部を変更しています。


ライター:下田篤男

京都大学薬学部総合薬学科を卒業後、調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務してきました。総合病院の門前店舗では管理薬剤師を務め、たくさんの患者さんと向き合う日々の中で、「薬を渡す」だけではない、人と人との関わりの大切さを実感しています。現在は薬剤師として現場に立ちながら、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントとしても活動中。読者の皆さまに、薬局がもっと身近で頼れる場所になるような情報をお届けしていきたいと思っています。


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