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「妻が発熱と呼吸苦を訴えている」出張先の夫から救急要請が…現場に駆けつけるも「行きません」女性が“搬送を拒否”したワケ

  • 2026.10.26
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出典:photoAC ※画像はイメージです

こんにちは。ライターのとしです。

救急現場では、本人が搬送を希望しない場面に出会うことがあります。

ただ、「行きたくない」という言葉の裏に、別の事情が隠れていることもあります。

今回は、発熱と呼吸苦を訴えた30代女性が、救急車での搬送をためらっていた事案をご紹介します。

救急車が来て驚いた30代女性

30代女性が発熱と呼吸苦を訴えているとして、出張先にいた夫から救急要請が入りました。

救急隊が自宅へ到着すると、女性本人は救急車が来たことに驚いている様子でした。

話を聞くと、夫が出張先から心配して119番したもので、女性自身は救急車で病院へ行くつもりはなかったとのことでした。

そこで、

「まずは状態を確認させてください」

と説明し、女性の了承を得たうえで観察を始めました。

発熱の程度や呼吸状態、意識状態などを確認したところ、救急隊としては医療機関で診察を受けた方がよいと判断しました。

そのことを女性へ伝えましたが、女性は

「病院には行きません」

と搬送を希望しませんでした。

こちらとしても、本人がなぜそこまで搬送をためらうのか分からないままでは、無理に話を進めることはできません。

まずは女性が何を心配しているのかを確認する必要があると考えました。

「行かない」には理由があった

本人がはっきりと搬送を断っている以上、ただ「行きましょう」と繰り返しても話は進みません。

そこで、なぜ病院へ行きたくないのかを尋ねました。

すると女性は、自宅にいた幼い2人の子どものことを気にしていました。

「この子たちを置いて病院には行けません」

そう話したのです。

診察そのものを拒んでいるわけではありませんでした。

自分が救急車で家を空ければ、幼い子どもたちだけが自宅に残されてしまう。

それが心配で、搬送を断っていたのでした。

出張中の夫がすぐに戻れる状況でもなく、女性にとっては切実な問題だったと思います。

「一緒に行けるか聞いてみます」

事情が分かったところで、

「子どもたちも一緒に連れて行くことが可能か、病院へ確認してみます」

と提案しました。

すると女性から、

「それなら行きます」

との返答がありました。

そこで受け入れを依頼する医療機関へ、女性の症状だけでなく、幼い子ども2人も一緒に連れて行く必要があるという事情を説明しました。

確認の結果、無事に受け入れ先が決まり、女性も搬送に同意してくれました。

もちろん、子どもを一緒に連れて行けるかどうかは、その時の状況や医療機関によって異なります。

今回は事情を伝えて確認したことで、本人が納得できる形で搬送につなげることができました。

救急車が到着した時には搬送する意思がなかった女性が、事情を一つずつ整理したことで「それなら行ける」と気持ちを変えたことが印象に残っています。

言葉の裏にある事情を聞く

救急現場では、「病院には行かない」と言われると、単純な搬送拒否のように見えることがあります。

しかし、その理由を聞いてみると、本人なりの事情が隠れている場合もあります。

今回も、女性が拒んでいたのは診察そのものではなく、幼い子どもを残していくことでした。

理由が分かれば、救急隊として何ができるのかを一緒に考えることもできます。

本人の意思を尊重しながらも、必要な受診につなげるためには、「なぜ行かないのか」を一つずつ確認することが大切です。

最初の言葉だけで判断せず、その背景まで聞くことで解決の糸口が見つかることもあると、改めて感じた事案でした。


ライター:とし

元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。
現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


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