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40代女性「なぜ私から対応してくれないの!」出血しているのに… 元救急隊員が“目立った外傷のない男性”を優先したワケ

  • 2026.10.15
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。ライターのとしです。

交通事故の現場では、見た目に分かりやすいけがに目が向きがちです。

今回は、自転車と歩行者の事故で、周囲から「こっちを先に見てください」と声が上がったときの出来事をご紹介します。

出血していた40代女性

自転車と歩行者がぶつかったとの通報で現場へ向かいました。

傷病者は2人。

歩行者の40代女性と、ロードバイクに乗っていた20代男性です。

女性は肘や膝などから出血しており、周囲から見てもけがをしていることが分かる状態でした。

「こっちを先に見てください」

そんな声が周囲から上がります。

女性本人からも、「なぜ自分から先に対応してくれないのか!」という不満が聞こえてきました。

一方、20代男性には目立った出血はありません。

意識もあり、こちらの問いかけにも答えていました。

男性の訴えに気になる点が

事故の状況を確認すると、男性は歩行者を避けようとして転倒したとのことでした。

ロードバイクでかなりの速度が出ており、転倒時には体が縦に一回転するような形になったと聞きました。

救急隊は、傷の見た目だけではなく「どのようにけがをしたのか」も確認します。

さらに男性を観察すると、手足のしびれを訴えていました。

大きな衝撃を受けた可能性があり、そのうえ手足にしびれもある状態です。

この時点で、頚髄損傷など重大なけがが隠れている可能性も考えました。

そこで私たちは、20代男性を優先して対応する必要があると判断したのです。

「なぜそちらを先に?」

ただ、女性や周囲の方からすれば納得しにくかったと思います。

目の前では女性の肘や膝から血が出ています。

一方の男性は会話もできており、大きな出血も見えません。

そこで女性には隊員1人を付け、出血部位の処置や状態の確認を続けました。

別の救急隊も現場へ向かっていることを説明しました。

さらに、男性には手足のしびれがあり、転倒状況から慎重な対応が必要であることも伝えました。

理由を説明することで、女性や周囲の方にも次第に理解してもらうことができました。

現場では処置を進めることが最優先ですが、周囲が状況を理解できないままだと、不安や不満がさらに大きくなることもあります。

搬送先で分かったこと

20代男性を、その後、対応可能な医療機関へ搬送しました。

診察の結果、頚髄損傷と診断されたと聞きました。

交通事故では、血が出ている、強く痛がっているといった「目に見えるけが」がどうしても目立ちます。

しかし、大きな外傷が見えなくても、事故の勢いや転倒の仕方、手足のしびれから重大なけがを疑うことがあります。

複数の傷病者がいるとき、救急隊は声の大きさや見た目だけで対応する順番を決めるわけではありません。

意識や呼吸、出血、受傷状況、神経症状などを合わせて確認し、その時点で緊急性が高いと考えられる人から対応します。

もちろん、優先順位をつけても、もう一方の傷病者を放置するわけではありません。

今回も女性には隊員を付け、必要な処置を続けながら、後着の救急隊へ引き継げるように対応しました。

周囲から見えるものと、救急隊が確認しているものが必ずしも同じとは限りません。

だからこそ、処置だけでなく、なぜその判断をしたのかをできる限り伝えることも大切だと感じます。

見た目だけでは分からない重症度があること。

そして、複数の傷病者がいる現場では、優先順位の理由まで丁寧に伝えることの大切さを改めて感じた事案でした。


ライター:とし

元救急隊員。
消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


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