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「まだですか?」数分おきに受付に来る外来患者…何度も確認していた“理由”に看護師「なるほど」

  • 2026.10.15
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。現役看護師ライターのこてゆきです。
外来では、診察を待っている患者さんから「あとどれくらいですか?」と聞かれることがあります。

予約時間を過ぎれば、待ち時間が気になるのは当然のこと。
ただ、同じことを何度も確認されると、最初は「待つことへの不満が強いのかな」と感じてしまうこともあります。

今回紹介するのは、通院していた中年男性Aさんとの出来事です。
その日、Aさんは予約時間を過ぎてから、何度も受付を訪れていました。

「まだ呼ばれてないですよね?」

最初は、ただ診察が予定より遅れていることを気にしているのだと思っていました。

ところが、何度も時計を確認するAさんの様子を見ているうちに、少し違和感を覚えるようになりました。
Aさんが気にしていたのは、単純な「待ち時間」ではなかったのです。

「まだ呼ばれてないですよね?」数分おきに受付へ

その日の外来は、少し混み合っていました。

Aさんの予約時間から20分ほど経った頃、受付の近くにAさんの姿が見えました。

「すみません」

「はい、どうされましたか?」

「まだ呼ばれてないですよね?」

「はい。もう少しお待ちくださいね」

「そうですか…」

Aさんはそう言って待合室の椅子へ戻っていきました。

それから5分ほど経ったでしょうか。

また受付へやってきました。

「すみません。まだですか?」

「もう少しお待ちください。順番にご案内しています」

「…分かりました」

再び席へ戻りました。

その数分後。

「まだ呼ばれてないですよね?」

今度は看護師の私が対応しました。

「Aさん、もう少しお待ちくださいね。診察の順番が来たらお呼びしますので」

「はい…」

Aさんは小さくうなずきました。

その時点では、私は正直、

「今日は待ち時間が気になるのかな」

と思っていました。

外来では、予約時間から多少前後することがあります。

そのため、待っている患者さんから「まだですか?」と聞かれること自体は珍しいことではありません。

ただ、Aさんはこれまで、診察を待っている間に何度も受付へ確認するような方ではありませんでした。

そこが少し気になりました。

時計を何度も確認するAさん

待合室に戻ったAさんは、椅子に座っても落ち着かない様子でした。
スマートフォンを見る。時計を見る。受付を見る。また時計を見る。その繰り返しです。

私は少し離れたところから様子を見ていました。

すると、Aさんがまた時計を確認しました。そして、小さく息を吐きます。

「Aさん、何か気になることがありますか?」

声をかけると、「いや、大丈夫です」と答えました。

「診察が遅れていることが気になっていますか?」

「そうですね…。まあ、早くしてもらえたら助かるんですけど」

少し苛立っているようにも見えました。

ただ、よく見ると「怒っている」というより、「焦っている」という印象のほうが強く感じられました。そこで私は、もう少し聞いてみることにしました。

「このあと、何か予定がありますか?」

するとAさんは、一瞬黙りました。

「…あります」

「時間が決まっている予定ですか?」

「そうなんです」

そこで、Aさんが時計を何度も確認していた理由が少し見えてきました。

「家族に、すぐ終わるって言っていて…」

Aさんには、その日の診察後に家族との約束がありました。17時から家族と一緒に出かける予定が入っていたのです。

「病院から家までも少しかかるので…」

Aさんはそう言いながら、また時計を見ました。

「でも、診察が何時に終わるか分からないじゃないですか」
「家族には、病院はすぐ終わるからって言ってるんです」

そこでAさんは少し困ったような顔をしました。

「だから、遅れたら嫌なんです」

私は、

「なるほど。それで何度も時間を確認していたんですね」

と伝えました。Aさんはうなずきました。

「はい。早く診察してほしいっていうのもあるんですけど…家族との約束に遅れたくないんです」

そこで初めて、これまでのAさんの行動がつながりました。何度も受付へ来ていたのは、単純に「待たされるのが嫌」だったからではありませんでした。

このあと自分がどうなるのか。約束の時間に間に合うのか。それが分からないことに、焦りを感じていたのです。

「遅れるって知られたくなくて」

さらに話を聞いていると、Aさんはもう一つ気にしていることがありました。

「家族には、今日病院に行くことは言ってるんですけど…すぐ終わるって言っちゃったんですよ」

「なるほど」

「だから、遅れたらなんでそんなに時間かかったの?って言われると思って」

Aさんは苦笑いしました。

「病院が混んでたって言えばいいんですけどね」
「でも…なんか、病院に行ってること自体をあまり心配されたくなくて」

そこまで話して、Aさんは少し黙りました。

「家族に余計な心配をかけたくないんです」

その言葉を聞いて、私は最初に感じていた印象を少し修正しました。

「早くしてほしい」と何度も訴えている人。「待ち時間に不満を持っている人」。

そう見えていたAさんは、実際には、

「家族との約束を守りたい」
「病院のことで余計な心配をかけたくない」
「予定通りに帰れるか分からないことが不安」

という気持ちを抱えていたのです。

「何時に終わるか分からないのが一番困る」

私はAさんに聞きました。

「何時に終わるか分からない状態が一番つらいですか?」

「そうですね」

Aさんは即答しました。

「何時になるか分かれば、家族にも連絡できますから」

なるほど、と思いました。

Aさんが欲しかったのは、必ずしも「今すぐ診察してもらうこと」ではなかったのです。

「あとどれくらい待つのか分かること」でした。

それによって、その後の予定をどうするか判断できるからです。見通しが立たないことが、Aさんの不安を大きくしていたのです。

その後、診察までの目安をできる範囲で伝えました。

「今の状況だと、もう少しお待ちいただく可能性があります。もし時間が厳しそうなら、こちらでも相談できますので声をかけてください」

「分かりました」

Aさんは、先ほどまでより少し落ち着いた表情になりました。

「それなら大丈夫です」

そして、スマートフォンを取り出し、家族に短いメッセージを送っていました。

「まだですか?」の裏にあった焦り

外来では、患者さんの言葉や行動だけを見ると、その人の本当の気持ちが分からないことがあります。

「まだ呼ばれていませんか?」
「あとどれくらいですか?」
「早くしてもらえませんか?」

こうした言葉だけを聞けば、

「待つことへの不満が強いのかな」「少しせっかちな方なのかな」と受け取ってしまうこともあります。

もちろん、本当に待ち時間に不満を感じている場合もあります。

だからこそ、すべての行動に特別な理由があると決めつける必要はありません。ただ、普段はそんな行動をしない人が、急に何度も同じことを確認するようになったとき。

その変化には、その人なりの理由が隠れていることがあります。

Aさんの場合、それは「待ち時間」そのものではありませんでした。

「このあと、どうなるんだろう」
「約束に間に合うだろうか」
「家族に遅れたことを知られたくない」

先の見通しが立たないことへの焦りでした。

「早くしてほしい」だけではなかった

その日、Aさんは最後に、「何回も聞いてすみませんでした」と話しました。

私は、「大丈夫ですよ。時間が分からないと気になりますよね」と答えました。

するとAさんは、

「そうなんです。時間が分かっていれば、そんなに気にならないんです」と笑いました。

人は、先の予定が見えないとき、不安が大きくなることがあります。

そして、その不安が「何度も確認する」「急かす」といった行動として表れることもあります。

目の前に出ている言葉だけを聞くと、「早くしてほしい」という要求に見えます。

けれど、その一言の奥には、

「間に合わなかったらどうしよう」
「約束を守れなかったらどうしよう」

という、本人なりの困りごとがあるかもしれません。

「まだ呼ばれてないですよね?」

あの日のAさんの言葉は、単なる待ち時間への不満ではありませんでした。

その言葉の裏には、

「このあと、どうなるのか知りたい」

という、切実な思いがあったのです。

患者さんの行動だけを見て判断するのではなく、「なぜ今、この言葉が出ているのだろう」と一度立ち止まってみる。それだけで、同じ言葉でも、少し違って見えてくることがあります。



ライター:精神科病院で6年勤務。現在は訪問看護師として高齢の方から小児の医療に従事。精神科で身につけたコミュニケーション力で、患者さんとその家族への説明や指導が得意。看護師としてのモットーは「その人に寄り添ったケアを」。


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