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「ブシュロン」“ヴァンドーム リズレ”イヤリング――未来の自分に贈るダイヤモンド|40代までにそろえたい名品

  • 2026.9.29
Pepper

私には特殊な能力がある。自分の生活水準に合わない金額のものが「見えなくなる」力だ。

雑誌で仕立てのよさそうな上質なコートに目がとまる。小さなクレジット表記を素早くチェックし、「コート 500,000円」の文字を見つけた瞬間、そのコートにはもやがかかったようにぼやけてしまう。 あるいはショップをぶらぶら歩いているとき、美しいシルエットのパンプスを見つける。手に取って裏に貼られた価格を確認し、そっと棚に戻す。次の瞬間、その靴は私の記憶からすっかり消去されているのだ。

人間には、つらい出来事を記憶から締め出すことで精神的な苦痛を軽減しようとする防衛機能があると聞いたことがある。私のこの能力も、分不相応なものは見なかったことにして経済的な危機から身を守ろうとする、一種の本能なのかもしれない。

よく晴れたある日、手持ちのジュエリーを一斉にクリーニングした。洗浄液を洗い流し、トレーに並べて乾燥させる。ずらりと並んだ ジュエリーは、長い時間をかけて少しずつ集めてきた宝物だ。失敗や遠回りもたくさんしたけれど、その過程で自分に似合うスタイルや好きなものを知ることができた。永遠に尽きないと思っていたウィッシュリストも、ようやくゴールが見えてきたところだ。そして、最後に残ったのがダイヤモンドのピアスだった。

これまでピアスは立体感とツヤが重要だと信じて、パールや地金のものを愛用してきた。けれど、40代半ばのいま、耳元に静かな白い輝きが欲しい。近づいて初めて気付くような静謐な光をたたえた、そんな女性になりたいと思うようになった。

Pepper

どんなピアスがいいだろう。真っ先に浮かんだのは、「ブシュロン」の“ヴァンドーム リズレ”だった。パリのヴァンドーム広場を空から見下ろした八角形のフォルムをモチーフにした“ヴァンドーム リズレ”は、エメラルドカットのダイヤモンドをラウンドカットのダイヤモンドがぐるりと囲み、その外側をブラックラッカーで縁取ったアールデコ調のデザイン。幾何学的な造形でタイムレスなエレガンスを表現したコレクションには、「ブシュロン」の伝統と革新性が表れている。

しかし、“ヴァンドーム リズレ”は私にとって分不相応なぜいたく品だったので、例の特殊能力が発動し、価格の記憶は抹消され、ウィッシュリストに入ったことすらなかった。

だけど、自分の好きなものがわかってきたいま、“ヴァンドーム リズレ”はこの先もずっと好きだと断言できる。もし他のものを選んだとしたら、しつこい性格の私は一生悔やむだろう。たしかに高価だけど、絶対に買えない値段ではない。身の丈に合わないからと見ないふりをしていたけれど、それっていつ決めたもの? いまの私はあの頃よりも成長しているはずだ。だったら身の丈の方を更新してしまえばいい。

「欲しいものはだいたい買いがち」を自負しているものの、その実態は年2回の賞与の範囲内。いわゆる“清水の舞台から飛び降りる”覚悟で手に入れたものはない。飛び降りるなら、ダメージを負ってもなんとか回復できる40代のうちだ。いざ、清水買い!

ずっと手が届かないと諦めていた“ヴァンドーム リズレ”が、いま私の耳元で透明な光を放っている。ブラックラッカーのラインがダイヤモンドの輝きに知的な輪郭を与えていて、その唯一無二のデザインにほれぼれする。ただ、似合っているかと問われれば、少し口ごもってしまう。この気高いピアスを自分のシグネチャーのように使いこなすには、外見も内面ももっと磨く必要があるだろう。私の髪が真っ白になる頃、何本ものしわが刻まれた横顔をリズレが照らしている——そんな未来を夢見て、鏡の中の自分と向き合う。

思い切って手に入れたことに後悔はないが、ひとつだけ問題が生じた。今回の清水買いによって分不相応のボーダーがグッと上がってしまったことだ。特殊能力で見えなくなっていたものが急に目に飛び込んでくるようになり、完走したはずのウィッシュリストには、新たなアイテムが次々と追加されて困っている。

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“キャトル ブラック”リング スモール¥902,000(予定価格)/<a href="https://www.boucheron.com/ja_jp/quatre-black-edition-small-ring-black-edition-jrg01790.html" target="_blank" rel="nofollow">ブシュロン</a> boucheron

ブシュロンの伝統的なコードを4つ重ねたベストアルバム的存在の“キャトル”。ブラックPVDとホワイトゴールドのコントラストがクールなキャトルブラックは、ネイルカラーをボルドーにすればハンサムに、ピスタチオカラーでポップにと、いろんな表情を楽しんでみたい。

“セルパンボエム” スタッズイヤリング エクストラスモール¥759,000(予定価格)/<a href="https://www.boucheron.com/ja_jp/serpent-boheme-ear-studs-xs-motif-yellow-gold-jco00942.html" target="_blank" rel="nofollow">ブシュロン</a> boucheron

とにかく仕事のできる年下の同僚がいた。私は認められたい一心で実力以上の力を出そうと奮闘した。彼女の定番だった“セルパンボエム”のネックレス。信念を貫く強さと、しなやかに困難を乗り越えるヘビのモチーフが彼女にぴったりだと思っていたけれど、いま思えば、彼女自身も“セルパンボエム”から力をもらっていたのかもしれない。

“ウルス”リング¥5,900,400(予定価格)/<a href="https://www.boucheron.com/ja_jp/the-bear-ring-jrg03519.html" target="_blank" rel="nofollow">ブシュロン</a> boucheron

私のウィッシュリストに彗星のごとく現れた超大型新人。つぶらなオニキスの瞳と目を合わせたら最後、このかわいらしいシロクマにノックアウトされてしまった。清水の舞台から3回ほど飛び降りる覚悟が必要だけど、このリングを肌身離さず身につけて、いつか街の名物「シロクマのおばあちゃん」と呼ばれる人生もありだと思っている。

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AYA KAWACHI

pepper/都内で働く40代の会社員で、2人の男の子の母。インスタグラムにつづる、懐かしのフレーズとユーモアを交えたファッションへの愛に魅了されるファンが多数。ジュエリー選びの虎の巻が詰まった著書『わたしのジュエリー365日』(CEメディアハウス)も話題に。2024年7月よりELLE STYLE INSIDERとしても活躍中。

問い合わせ先/ブシュロン クライアントサービス 0120-230-441

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