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60代男性「自分に過失はない!」祝日の立体駐車場で鉢合わせ…修理代30万円の事故で“ドラレコに映っていたもの”

  • 2026.10.17
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「駐車場ではお互い気をつけなきゃいけないですし、お互い様ではないでしょうか」

商業施設などの駐車場では、複数の車がさまざまな方向から行き交います。そのため、車同士の事故では「お互い様」と考える方もいるかもしれません。

では、実際に駐車場で車同士がぶつかった場合、過失割合はどのように考えるのでしょうか。今回は、立体駐車場で起きた出会い頭の事故を紹介します。

祝日の立体駐車場で起きた鉢合わせ

事故が起きたのは、祝日のお昼前。場所は、とある商業施設の立体駐車場です。契約者のAさん(50代・女性)の車と、相手のBさん(60代・男性)の車は、同じ列に2台分の駐車区画を挟んで止まっていました。

2台はそれぞれの区画からほぼ同時に発進。Aさんは右へ、Bさんは左へ曲がったところで鉢合わせになり、フロントバンパー同士がぶつかったそうです。

お互いに低速だったため双方にケガはありませんでしたが、バンパーやフロントフェンダーなどが損傷。センサー類の交換や調整も必要になり、損害額は双方ともに概算30万円になりました。

「自分に過失はない」と話す相手

今回の事故についてAさんは「駐車場内だしお互いの車は動いていましたから、私も相手も過失があるように思います」と話しており、双方に過失がある事故だという認識です。

一方、Bさんは「自分に過失はない」と主張。Aさんの保険会社で事故対応を担当することになった私は、Bさんに、「ご自身の保険会社へ連絡してもらえないか」と伝えましたが、応じてもらえません。Bさんが自分の保険会社に連絡しない以上、私が直接Bさん本人と話し合うことになりました。

そこで私は、事故状況を確認するため、双方のドライブレコーダーの映像を見せてもらえないかお願いしました。Bさんからは断られたため、まずはAさんの車の映像を確認することにしました。

そこにはある「差を生む」証拠が映っていたのです。

ドライブレコーダーに映っていたもの

Aさんのドライブレコーダーには、事故の様子だけでなく、通路の床に描かれた矢印も映っていました。立体駐車場の中を走る順路を示す矢印です。

映像と矢印の向きを照らし合わせると、Aさんが曲がった方向は順路どおり。一方、Bさんが曲がった方向は、順路とは逆です。

同じように駐車区画から出た車同士の事故でも、この違いは過失割合を考えるうえで重要な意味を持っていました。

床の矢印で変わった過失割合

駐車場内の事故にも、「通路を進む車同士」「区画から出る車と通路を進む車」など、事故の形ごとに基本となる過失割合が存在します。

今回のように、駐車区画から出た車同士が接触した事故では、過去の判例をもとに出された基本の過失割合は50:50とされています。どちらも区画から出る立場にあり、周囲の安全を確認する注意が同じように求められるためです。

私はAさんに、今回の事故は50:50が基本になることを説明しました。

「意外でした。駐車場の中でも基本の過失割合って決まっているんですね」

Aさんはそう言いました。ただし、50:50はあくまで基本です。事故ごとの事情によって、基本の過失割合から修正されることがあります。

今回、Aさんのドライブレコーダーから確認できたのは、Bさんが駐車場内で指定された進行方向とは逆に進んでいたことです。このような順路に反した走行は過失割合の修正要素となり、本件ではBさん側に10%程度の過失を加算する形となります。

結果的に、私はBさんに過失割合40:60(Aさん:Bさん)を提示しました。

話し合いの行方

しかし、Bさんは40:60という過失割合に「認められない」と答えました。Bさんは当初から、「自分に過失はない」と主張しています。これに対し、私が提示したのはBさん60%。双方の考えには大きな開きがある状態であり、Bさんの反応は当然のものといえます。

そこで私は、Bさんにこうお伝えしました。

「まずは自分の保険会社に相談されてみてはいかがでしょうか」

あわせて、弁護士への無料相談もできることを伝え、保険を使うかどうかは別として、第三者の見解を聞いてみることをおすすめしました。

Bさんからすれば、私はいわば「Aさん側」です。その私の言葉よりも、第三者やBさんの保険会社の見解を聞いた方が、Bさんとしても判断しやすいのではないかと考えたのです。

「確かに、このままでは話が進まない」

Bさんはそう話し、自分の保険会社へ相談して再度連絡してくれることになりました。

しばらくしてから、Bさんから、双方に過失がある事故だと認める旨の連絡をもらいました。その後は私とBさんの保険会社で話し合いを進め、最終的な過失割合は、40:60(Aさん:Bさん)で解決しています。

仮に基本過失割合の50:50で解決した場合、AさんがBさんへ支払う賠償額と、Bさんから受け取る賠償額はそれぞれ15万円です。一方、40:60では、Aさんが支払う賠償額は12万円、受け取る賠償額は18万円になります。

つまり、過失割合が10%変わったことで、Aさんにとっては6万円の差が生まれていました。一般的には、「お互い様」といえるような事故でも、ひとつの過失の修正要素がこの差を生んだのです。

そしてその差を立証できたのは、Aさんのドライブレコーダーのおかげでした。

床の矢印が示していたもの

Aさんは順路どおりに進んでいましたが、それでも過失がなくなるわけではありません。Aさんも駐車区画から出る際には、周囲の安全を確認する注意が求められるためです。

ドライブレコーダーに映っていた床の矢印によって、過失割合は変わりました。これは一見、ルールがないように思える駐車場内でも一定の規則があり、車の動きにも責任が求められるということでもあります。

しかし、床の矢印や案内表示に沿って走っていたかどうかは、事故後に口頭で説明するだけでは立証が難しい場合もあります。万が一のときのためにも、ドライブレコーダーや写真などで現場を保存しておくことも覚えておきたいところです。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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