1. トップ
  2. 暮らし
  3. 客「今週中に手放したいんです!」急ぎの買取依頼が二転三転…査定員が直面した“意外なキャンセル理由”

客「今週中に手放したいんです!」急ぎの買取依頼が二転三転…査定員が直面した“意外なキャンセル理由”

  • 2026.10.16
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

中古車の買取を担当していたときのことです。車を売りたいというお客様から、こんなご相談がありました。

「今日、車を見てもらえますか?できれば早めに。今週中に手放したいんです」

急いでいると伺い、私は予定を調整して、査定の時間を空けました。ところが、約束の時間が近づいた頃、変更のご連絡が入りました。急に都合が変わることはあります。改めて日程を確認し、別の日に車を見せていただくことにしました。

後日、車を見せていただき、査定を済ませました。この時点では買取契約はまだ結んでおらず、車の引き渡しと契約の日程を調整していました。

「金曜日に渡せます」

と連絡があったものの、次の電話では「来週まで待ってほしい」とのご要望。金曜日に伺う予定を、翌週に組み直しました。ただ、翌週のいつになるかは、まだ分かりません。

車両の引き取り日程が変更になるたび、私は陸送の手配や保管場所の確保など、社内のスケジュールをその都度調整し直さなければなりません。早く手放したいというご希望は変わらないのに、日付だけが定まらないのです。

「今週中」という当初のお話から、近いうちに決まるものと思っていました。早く引き取り日を固めたいのが本音でしたが、お客様もはっきりした日を言えないご様子でした。何か予定どおりに進まない事情があるのかもしれない。そう思い、

「お渡しいただける日が分かったら、またご連絡ください」

とお伝えし、日程の連絡を待つことにしました。

日程の連絡だと思って出た電話

その後、かかってきた電話で、お客様はこうおっしゃいました。

「友人に売ることにしました」

引き渡し日のご連絡だと思っていた私は、少し驚きました。査定を済ませ、何度か日程をご相談してきただけに、買取に至らなかったのは残念です。

「そうでしたか。わざわざご連絡ありがとうございます」

お話を伺ってみると、引き渡し日がなかなか定まらなかった“本当の事情”が見えてきました。

どうやら、私が査定に伺った直後に友人の車が突然故障してしまったそうです。その友人は車で通勤しており、早朝の勤務もあったため、車が使えなくなって困っていました。

そこで、お客様は、売却する予定だったご自身の車を貸していたのです。貸し出す前に、ご自身の自動車保険で友人の運転も補償対象になることを確認していたそうです。

「次の車が決まるまでと思って貸していたんですが、その車を買いたいと言われまして」

お客様はその申し出を受け、友人に売ることを決めたそうです。

早く手放したいという話だけを聞いていた私には、その車を使っている人がほかにいるとは分かりませんでした。お客様と日程を相談していた間にも、友人はその車で仕事へ通っていたのです。引き渡しの予定が変わっていた背景を知り、ようやく話がつながりました。

「そういうことだったんですね」

「何度も予定を変えてしまって、すみません」

お客様からは、日程の変更が続いたことへのおわびもありました。最終的な引き取り日は決まらないまま、買取の相談は終わりました。

電話の終わりに聞いた、車の近況

電話の終わりに、お客様は車の様子も話してくださいました。

「もう、私よりきれいにして乗ってます」

友人は車内まで掃除して使っていたそうで、査定したときよりきれいになっていると、お客様が教えてくださいました。

私がその車を見たのは、査定のときが最後でした。その後の車内を実際に見たわけではありませんが、「私よりきれいに」という言葉から、友人が丁寧に使っている様子は伝わってきました。

結局、私はその車の引き取りには伺いませんでした。お客様が車を手放す先には、すでにその車を丁寧に使っている人がいました。どうやらあの車は、売却先が決まる前から、次の持ち主になじんでいたようでした。


ライター:三枝 雄太
自動車アフターマーケットや自動車流通の分野で長年、販売・買取、店舗運営、接客、スタッフ育成などに携わる。カー用品や車のカスタムにも幅広く関わり、現場で培った経験をもとに、クルマに詳しくない人にも伝わりやすい言葉で、カーライフや懐かしい車文化を紹介している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ