1. トップ
  2. 暮らし
  3. 「500万円級の車がなぜ」上半期の販売ランキング、ファミリーカーが並ぶ中「ランクル」の“順位”に驚き

「500万円級の車がなぜ」上半期の販売ランキング、ファミリーカーが並ぶ中「ランクル」の“順位”に驚き

  • 2026.10.14
undefined
出典:PIXTA(※画像はイメージです)

2026年4〜9月の登録乗用車ランキングで、高額な本格SUVのランドクルーザーが7位となり、ホンダの販売トップである定番の量販車フリードを上回る異例の事態が起きています。

500万円級の車がなぜこれほど選ばれるのでしょうか。高くても納得できる新たな価値観と、その驚きの背景を紐解きます。

驚きの事実。高額SUVが量販ファミリーカーを超えた日

車を購入しようと考えたとき、多くの方がまず意識されるのは、家計に無理のない価格や、毎日の生活における使い勝手の良さではないでしょうか。 そうした背景があるからこそ、街中でよく見かけるファミリー向けの車が、毎月の販売台数ランキングで上位を占めるのが長年の傾向となっていました。

しかし、日本自動車販売協会連合会が公表した2026年4月から9月までの新車販売台数順位のデータを見ると、私たちのそうした常識を覆すような結果が示されています。 軽自動車を含まない登録乗用車のランキングにおいて、トヨタのランドクルーザーが4万2725台を販売し、全体の7位に入りました。

ここで特に注目していただきたいのは、単にランキングの上位に入ったということではありません。 ホンダの登録車トップとして幅広い層に支持されているフリードの4万1396台を上回り、順位でも一つ上のポジションを獲得しているという事実です。 さらに、日産のセレナが記録した3万557台と比較すると約1.4倍の規模となり、台数にして1万2000台以上もの差をつけています。 また、トヨタの主力ミニバンであるヴォクシーやノアの単独の数字をも超えている状況です。

なお、この集計はブランド通称名別となっているため、ランドクルーザーという名称がつくシリーズ全体を合算した数値となります。 とはいえ、高額な本格SUVが量販ファミリーカーの実績を堂々と上回ったという結果は、現代の市場の変化を如実に表していると言えるのではないでしょうか。

価格差は歴然。それでも生まれる販売台数逆転の謎

先ほどの販売台数のデータをご覧になって、車のタイプも価格帯も全く違うのにどうして逆転現象が起きるのだろうかと、不思議に思われた方もいらっしゃるかもしれません。 ここからはその理由を順を追って整理していきます。

まず、フリードやセレナは、日常の移動手段として無理なく選びやすい価格設定と、広く快適な室内空間などの実用性が最大の魅力です。 それに対してランドクルーザーシリーズは、メーカーの公式価格を確認してみても、一般的なファミリーカーとは大きく異なる価格帯に位置しています。

たとえば、現在の中核モデルであるランドクルーザー250は、500万円台からのグレードが中心となっています。 また、質実剛健な造りが特徴的なランドクルーザー70であっても、400万円台後半からの価格設定です。 一般的な感覚からすれば、決して気軽に購入を決断できる金額ではないと思われます。

これほどまでに絶対的な価格差がある車が、なぜ手の届きやすいファミリーカーと同等、あるいはそれ以上の規模で選ばれているのでしょうか。 普通に考えれば、安くて便利な車の方がたくさん売れるはずです。 しかし現実には、価格の高い車がそれ以上に売れているという事実が存在しています。 そこには、単なる一時的な流行という言葉では片付けられない、現代の自動車ユーザーならではの新しいクルマ選びの基準が隠されていると考えられます。

「高価でも買える」を後押しする、圧倒的なブランドと新しい買い方

高額な車両がこれほどまでに多くの人に支持される大きな背景の一つとして、ランドクルーザーという車が長年にわたって築き上げてきた絶対的なブランド力と、それに伴う資産価値への高い期待が挙げられます。

ランドクルーザーは半世紀以上の長い歴史の中で、過酷な環境下でも走り続ける悪路走破性と耐久性を世界中で証明してきました。 現在では、そうした本格的なクロスカントリー用の車という枠組みを超えて、高級SUVとしての側面も持ち合わせています。 そのため、単なる移動の道具としてではなく、所有すること自体に大きな満足感や喜びを見出す方が増えているようです。

そして、購入を後押しするさらに現実的な理由が、将来的な売却価値に対する期待です。 ランドクルーザーは国内だけでなく海外でも需要が高く、中古車市場において価値が落ちにくい傾向があると広く認知されています。 もちろん、中古車の相場は市場環境によって常に変動するため、必ず高く売れると約束されているわけではありません。 しかし、初期費用が500万円以上かかったとしても、数年後に手放す際にある程度のまとまった金額が手元に戻ってくると見込めるのであれば、実質的な負担は大きく減ることになります。

さらに近年では、残価設定クレジットという支払い方法が広く普及してきたことも後押しとなっています。 あらかじめ設定された将来の下取り価格(残価)を差し引いた分だけを分割して払う仕組みにより、月々の支払いを手頃に抑えられるようになりました。

こうした資産価値と新しい購入方法を組み合わせて賢く選択するユーザーが増えており、その結果として、高額であっても十分に現実的な購入候補になり得ていると考えられます。

待望のFJも登場。多彩なラインアップとSUVの日常化という追い風

圧倒的なブランド力や買いやすさの工夫に加えて、商品ラインアップの幅広さもシリーズ全体の販売台数を大きく押し上げている要因と言えます。

先ほども記載した通り、現在のランドクルーザーは単一のモデルで構成されているわけではありません。 実用性と原点回帰を極めた70、生活を支える実質的な中核モデルの250、そして最上級の快適性を提供するフラッグシップである300といった、性格の異なる複数の車種を用意しています。 さらに2026年5月には、扱いやすいコンパクトなボディサイズに本格的な悪路走破性を詰め込んだ、待望の新型車ランクルFJも発売されました。 これにより、本格的な四輪駆動車を求める方から、ファミリー用途で扱いやすさを重視する方、あるいは高級感を求める方まで、多様なニーズを一つのブランドでしっかりと受け止めることができているのです。

また、自動車市場全体を見渡したとき、SUVというカテゴリー自体が特殊なものではなくなり、日常のレジャーや家族の移動手段としてすっかり定着したことも大きな追い風となっています。 かつてはミニバンを中心としていたファミリー層の選択肢に、SUVが自然に組み込まれる時代になりました。

ちなみに今回の販売台数データで、ランドクルーザーは前年同期比193.8%という驚異的な伸びを示しています。ただし、これは純粋な人気が1年で急に2倍になったと単純化できるものではありません。 車の販売実績は、ランクルFJのような新しいモデルの投入タイミングや、生産状況の改善など、供給側の事情にも大きく左右されるからです。 それでも、旺盛な需要に対して供給体制が整ってきたことが、この劇的な台数増加の背景にあることは間違いないと思われます。

安さだけが基準ではない。高くても欲しい理由がある車の強さ

これまで順を追って見てきたように、ランドクルーザーがフリードやセレナといった定番の量販車を上回る販売規模にまで成長した背景には、価格のギャップを埋めるだけの複数の要素が複雑に絡み合っています。

かつては一部の四輪駆動車好きが憧れる特別な車というイメージが強かったランドクルーザーですが、今や日本の新車市場において一大ボリューム商品としての地位を確立しました。 この事実は、現代のクルマ選びにおいて、車両価格の安さだけが販売台数を決める決定打になるわけではないということを明確に教えてくれます。

長年培われてきたブランドに対する厚い信頼や、多様なライフスタイルに応えるラインアップの広がり、そして将来的な価値への冷静な期待。 そうした高くても欲しいと思わせる明確な理由さえあれば、500万円級の車であっても多くの人に選ばれるということです。

車は単なる移動の道具ではなく、人生を豊かにしてくれる頼もしいパートナーでもあります。 今回の販売台数ランキングが示したランドクルーザーの快進撃は、目先の価格だけでは測りきれない、車が持つ本質的な魅力や新しい価値観を私たちに提示してくれているのかもしれません。


参考:乗用車ブランド通称名別順位 2026年4月~2026年9月分(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ