1. トップ
  2. 住まい
  3. 夫「こんないい話はないよ」相場の半分以下の家賃…口約束で空き家を借りた40代夫婦5人家族の“末路”

夫「こんないい話はないよ」相場の半分以下の家賃…口約束で空き家を借りた40代夫婦5人家族の“末路”

  • 2026.11.6
undefined
出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。地方の不動産会社で売買仲介の営業をしている平田です。移住や住み替えの相談を受けるなかで「不動産会社を通さず、知り合いから空き家を借りている」という話を聞くことがあります。

当事者間だけの貸し借りは手軽な反面、契約の中身があいまいなままになりやすく、トラブルが起きたときにどう対応すればいいかわからないこともあります。今回は、知人の紹介で格安の空き家を借りたものの、所有者の息子が戻ってくることになり、突然退去を求められた家族の事例を紹介します。

家賃は相場の半分以下、口約束で借りた空き家

私の知人であるAさん(40代・自営業)は、妻と子ども3人の5人家族です。あるとき知人の紹介で、空き家になっていた一軒家の所有者(70代)と知り合いました。所有者は「使っていないから、住んでくれると助かる」と話し、相場の半分以下の家賃で貸してくれることになりました。元々住んでいた賃貸物件が手狭になってきたこともあり、この機会に住み替えることになります。

不動産会社を通すと仲介手数料がかかるため、Aさんは所有者と直接やりとりすることにしました。「仲介手数料もかからないし、家賃も安い。こんないい話はないよ」と、当時はAさんも喜んでいたそうです。契約書は交わさず、家賃は毎月手渡しで支払っていました。

所有者から「3か月後までに出ていってほしい」

住み始めて約3年がたったころ、所有者から連絡が入ります。県外に住む息子が実家に戻ることになり「その家に住む予定なので、3か月後までに出ていってほしい」と伝えられました。Aさんの妻は「急に3か月で出ていけなんて…」と戸惑いを隠せなかったといいます。

それでもAさん夫婦は「大家さんとの関係性も壊したくないし、契約書がない以上、言われたら出ていくしかない」と考えていたそうです。間に不動産会社がいないため、相談できる相手もいません。格安で貸してくれた所有者ともめたくない気持ちもあり、Aさん一家は退去を決めました。引っ越し費用や新しい家の初期費用は、すべて自己負担です。

口約束でも、借主は法律で守られている

私がこの話を聞いたのは、Aさん一家が引っ越しを終えたあとのことでした。Aさん夫婦は「契約書がないから仕方ない」と話していましたが、実は、契約書がなくても、家賃を払って借りていれば、口約束でも賃貸借契約は成立します(民法601条)。

期間を決めていない建物の賃貸借では、貸主が解約するには6か月前の申し入れが必要です(借地借家法27条)。さらに、出ていってもらうだけの「正当事由」も求められます(同法28条)。正当事由は、双方がその家を使う必要性や立退料の有無などから総合的に判断され、家族が住む必要があっても必ず認められるとは限りません。

今回の「3か月後まで」という猶予は、法律で求められる6か月より短いものでした。少なくとも、すぐに出ていく必要はなく、退去の時期や立退料について話し合う余地もあった可能性があります。

また、契約書がなく期間も決めていない場合は、「期間の定めのない普通借家契約」として扱われます。貸主または借主から解約を申し入れない限り、契約はそのまま続きます。期間が来たら終わる「定期借家契約」は書面がないと成立しないため、契約書がないことは、むしろ貸主側に不利に働きやすいのです。

借りるときも貸すときも、口約束にしない

今回のAさん一家のように、知識がないために借りる側が損をしてしまうこともあれば、法律上は貸す側が不利になることもあります。とにかく口約束だけは、どちらにとってもリスクになります。

今回のようなケースであれば、貸す側には、将来、家族が戻ってくる可能性があるなら「定期借家契約」を使う方法があります。定期借家契約は、書面で契約し、事前に書面で説明することが必要です(借地借家法38条)。

一方、借りる側は、知り合いであっても、期間や家賃、解約の条件を書面に残しておきましょう。もし退去を求められて困ったときは、すぐに返事をせず、自治体の無料法律相談や法テラスなどに相談してみてください。

契約書は、国土交通省が公開している「賃貸住宅標準契約書」のひな形を使って作ることもできます。また、仲介手数料はかかりますが、不動産会社に仲介を依頼すれば、契約の内容を書面に残せるうえ、トラブルが起きたときの相談先にもなります。リスクを抑える方法の一つとして、検討してみてはいかがでしょうか。

参考:
借地借家法(e-Gov法令検索)
民法(e-Gov法令検索)
定期建物賃貸借Q&A(国土交通省)
『賃貸住宅標準契約書』について(国土交通省)



ライター:平田翔(宅地建物取引士)
大学卒業後、アパレルメーカーとブライダル関連会社でマネジメント業務に従事。その後、福岡のハウスメーカーへ転職し、約3年間、建売住宅の販売や土地の仕入れ・不動産調査業務を担当。現在は地場の不動産会社にて、中古物件・古民家の売買仲介、空き家の利活用サポート、移住相談などを行う。不動産の実務経験を活かし、不動産ライターとしても活動中。


【エピソード募集】ご近所・引っ越し・内見で…「えっ!」と思った体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ