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60代売主「そんな金額では売りたくない」実家の査定額を拒否した結果…半年間で痛感した“痛すぎる代償”

  • 2026.10.27
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。地方の不動産会社で売買仲介の営業をしている平田です。不動産の売却では、近隣で売り出されている物件の価格や成約事例を参考に、売り出し価格を考えることが多いです。しかし、周辺の物件と条件が違えば適正な価格も変わるため、ネットの価格をそのまま当てはめても思うように売れるとは限りません。

今回は、不動産会社が提案した価格に対し「ネットではこの倍の値段で出ている」と希望額を譲らず、そのまま売り出すことになった事例を紹介します。

市内を一望できる、相続した実家

Nさん(60代・女性)は、住み替えの資金をつくるため、相続した実家を売却することにしました。以前、当社の代表がNさんの現在の住まいの購入を仲介した縁で、今回も売却のご依頼をいただきました。

物件は築50年を超える木造2階建てです。近くには高級住宅地があり、市内を一望できる見晴らしのよい場所に建っています。一方で、対象地と前面道路の間には、高さ5mを超える谷積擁壁(石を斜めに積み上げてつくった土留めの壁)が設けられており、建て替えなどを行う際には、その扱いが課題となる可能性がありました。

建築指導課(建築確認などを担当する役所の部署)に確認したところ、「当該自治体では、建築確認(建物を建てる前に、法令に合っているか審査を受ける手続き)が必要な工事を行う場合には、5mを超える部分を撤去したうえで擁壁を補修するか、内側に新たな擁壁を設ける必要がある」とのことでした。

この物件では、建て替えにあたって多額の費用がかかる可能性があります。そこで、擁壁を撤去して更地にするのではなく、中古戸建てとして売り出すことにしました。

「ネットではこの倍の値段で出ている」

当社は、周辺の成約事例や売り出し中の物件の価格を参考に、擁壁の状況も踏まえて、相場より低めの売り出し価格を提案しました。将来、擁壁の補修や建て替えなどに費用がかかる可能性があり、買主がその負担も考慮する必要があるためです。

しかし、Nさんは納得しませんでした。

「そんな金額では売りたくない。ここは私が住んできた思い入れのある場所だし、少し先には高級住宅も建っている。そういう人たちなら価値をわかってくれるはず。ネットで調べると、この倍の値段で出ている。同じくらいの金額でないと出せない」

代表は、周辺の相場や価格を査定した根拠、擁壁の状態、建て替えに多額の費用がかかる可能性などを丁寧に説明しました。そのうえで、希望額では問い合わせが入りにくい可能性が高いと伝えました。

不動産会社が売却価格について意見を述べる際には、その根拠を明らかにすることが宅地建物取引業法で定められています(同法第34条の2第2項)。代表は、ほかの不動産会社にも査定を依頼し、提案内容を比較してみることも勧めましたが、Nさんの考えは変わりませんでした。

売り出し価格を最終的に決めるのは売主です。これまでのお付き合いもあったことから、まずは相場より高めの「チャレンジ価格」で、Nさんの希望額で販売を始めることになりました。

半年たっても問い合わせは“ゼロ”

しかし、売り出しから半年がたっても、問い合わせは1件もありませんでした。売却代金を住み替えの資金に充てる予定だったNさんは、新しい住まいへの転居も進められずにいます。

Nさんが参考にしていた不動産サイトの価格は、売主の希望が加味された「売り出し価格」です。実際に売買が成立した「成約価格」とは異なり、売れずに掲載が続いている物件の価格も含まれています。

また、築年数の古い木造住宅では、建物の状態によっては買主がリフォームや建て替えの費用を見込むこともあります。価格が周辺の物件と比べて高い場合、購入候補から外される可能性があります。特に住み替えなどで、売却を急ぐ事情がある場合は、価格設定を慎重に検討することが大切です。

思い入れと「売れる価格」は分けて考える

思い入れのある家を、できるだけ高く売りたいと考えるのは自然なことです。ただし、売却価格を考える際には、所有者の思い入れと、買主が購入を検討する価格を分けて考える必要があります。実際の成約価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」などで調べられます。

査定額に納得できない場合は、価格の根拠を詳しく聞き、複数の不動産会社に査定を依頼して比較する方法もあります。相場より高めの価格で売り出す場合は、一定期間たっても問い合わせがなければ価格を見直すなど、販売開始前に方針を決めておくとよいでしょう。

参考:
宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)
価格査定マニュアルの改訂経緯(一部抜粋)(国土交通省)
不動産情報ライブラリ(国土交通省)



ライター:平田翔(宅地建物取引士)
大学卒業後、アパレルメーカーとブライダル関連会社でマネジメント業務に従事。その後、福岡のハウスメーカーへ転職し、約3年間、建売住宅の販売や土地の仕入れ・不動産調査業務を担当。現在は地場の不動産会社にて、中古物件・古民家の売買仲介、空き家の利活用サポート、移住相談などを行う。不動産の実務経験を活かし、不動産ライターとしても活動中。


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