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銀行「契約できません」家を売る30代夫婦に届いた予想外の連絡…前の持ち主が残した“思わぬ罠”

  • 2026.10.27
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

地方の不動産会社で売買仲介の営業をしている平田です。家を売却するときは、建物の状態だけでなく、登記簿に記載された内容と実際の建物が一致しているかも確認する必要があります。増築した部分が登記されていないと、売却の手続きが進んでから問題が発覚することもあります。

今回は、売却と新居の購入を同じ日に予定していた夫婦の事例です。買主の住宅ローン契約を目前に、銀行から「サンルームの登記がないので契約できない」と連絡を受けたエピソードを紹介します。

売却と新居の購入を同じ日に

Iさん(30代・男性)は、妻と子ども3人の5人家族です。8年前に中古戸建てを住宅ローンを利用して購入しています。一番上のお子さんの進学をきっかけに住み替えを決め、当社に売却をご依頼いただきました。

新居として、Iさんの知人が所有する家を購入することになっていました。知人は「Iさんの家が売れるまで、こっちは待つから大丈夫だよ」と言ってくれていたそうです。Iさんも「せっかく待ってもらっているので、なるべく早く決めたいんです」と話していました。

新居の購入資金には今の家の売却代金を充てるため、売却と新居の購入を同じ日に決済(代金の支払いと物件の引き渡しを行うこと)する段取りを組みました。同じ日に決済できれば、一時的に賃貸住宅へ移る必要もなく、引っ越しも一度で済みます。Iさんの妻も「仮住まいをしなくていいのは助かります」と話していました。

ただ、同じ日にすべてを終わらせる段取りは、どこか一つでも予定がずれると、売却と購入の両方に影響が出てしまいます。そのため、各手続きの日程は慎重に組み立てていきました。ほどなくして、別の不動産会社を通じて買主が見つかり、売買契約を締結。買主は住宅ローンを利用する予定で、本審査も無事に通過しました。

ローン契約の当日、買主の銀行から届いた連絡

ところが、買主が銀行とローンの本契約(金銭消費貸借契約)を結ぶ予定だった日の朝、銀行から連絡が入りました。「物件写真と平面図を確認したところ、サンルームが増築されているようです。登記簿を見る限り、増築部分の登記がされていません。本部の判断として、登記が終わるまで契約はできません」と言われました。

恐れていた「予定のずれ」が、決済の直前になって起きてしまったのです。すぐにIさんに確認すると、「サンルームは、買ったときからあったんですが…」とのこと。サンルームは前の持ち主が造ったもので、増築部分の登記がされないまま売買されていました。8年前にIさんが住宅ローンを組んだときは、金融機関から特に指摘されなかったそうです。

土地家屋調査士の見立ては「登記は不要」

前の持ち主とは連絡がつかなかったため、急いで土地家屋調査士(土地・建物の面積や形状などを調査し、表示に関する登記を行う専門家)に相談しました。ところが、現地を確認した調査士からは意外な見解が示されます。

「これは本当に登記が必要かな。外気分断性や定着性の点から、登記は不要と判断できると思います」

登記の対象となる建物かどうかは、主に以下の3つの要件を踏まえて判断されます(不動産登記規則111条)。

  • 外気分断性:屋根や周壁などによって、外気と仕切られているか
  • 定着性:土地に定着しているか
  • 用途性:住居や物置など、目的の用途に使える状態か

このサンルームは、ウッドデッキの上に簡易的に造られたもので、扉や屋根を簡単に取り外せる仕様でした。調査士に見解を書面にまとめてもらい、銀行に提出したところ、本部も「問題なし」と判断。後日、あらためてローン契約が結ばれました。

その後、Iさんの家の売却も新居の購入も完了し「一時はどうなるかと思いました。予定どおりに引っ越せてほっとしました」と笑顔を見せてくれました。

実は、売主側の当社も買主側の不動産会社も、現地でサンルームの存在は確認していました。ただ、簡易的な造りだったため、問題になるとは考えていませんでした。結果的に売買は無事に完了しましたが、金融機関がどのように判断するかまで想定できていなかったことは、私自身の反省点です。

増築部分は、売る前に登記簿と照らし合わせて

増築部分が登記の対象になるかどうかは、専門的な判断が必要で、不動産会社だけでは判断できません。また、金融機関によって確認の細かさも異なります。

増築部分がある家を売るときは、売り出す前に登記簿と現況を照らし合わせ、気になる部分があれば早めに土地家屋調査士に相談しておきましょう。中古住宅を買うときも、増築部分がないか売主に確認し、平面図と現地の状況に違いがないかを見ておくと安心です。

参考:
不動産登記法(e-Gov法令検索)
不動産登記規則(e-Gov法令検索)
登記の申請は誰がしなければならないのですか?(法務局)



ライター:平田翔(宅地建物取引士)
大学卒業後、アパレルメーカーとブライダル関連会社でマネジメント業務に従事。その後、福岡のハウスメーカーへ転職し、約3年間、建売住宅の販売や土地の仕入れ・不動産調査業務を担当。現在は地場の不動産会社にて、中古物件・古民家の売買仲介、空き家の利活用サポート、移住相談などを行う。不動産の実務経験を活かし、不動産ライターとしても活動中。


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