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父から相続した畑を放置した結果→新築が並ぶ好立地なのに…60代男性を襲った“想定外の落とし穴”

  • 2026.10.22
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。地方の不動産会社で売買仲介の営業をしている平田です。私は中古住宅や空き家、農地などの売買に携わることが多くあります。

まわりに新築の家が建ち並び、前の道路も広い。そんな土地なら、家を建てたい人がすぐに見つかりそうだと思いませんか?

ところが土地の価値は、見た目やまわりの環境だけでは決まりません。目に見えない「決まり」によって、価格が大きく変わることがあります。今回は、相続した畑を売ろうとしたところ、思わぬ理由で売り出し価格が大きく下がった事例を紹介します。

向かいは新築が建ち並ぶ、相続した畑

Aさん(60歳・男性)は、父から畑を相続したものの、耕作をするわけでもなく放置していました。「このまま子どもに相続させても困るだろう。今のうちに手放したい」と考えるようになり、以前から付き合いのある当社に相談に来られました。

畑の前の道路は幅員(道路の幅)が6m近くあり、向かい側には新築住宅が建ち並んでいます。土地は正方形で、高低差もありません。Aさんは「向かいに家が建ってるんだから、うちだって建てられるはず。需要もあるだろう」と期待していました。

実は、私も同じ考えでした。新築が増え、土地の相場も上がってきているエリアです。農地転用(農地を住宅用地など農地以外の用途に転用すること。原則として許可が必要)さえできれば、宅地として売り出せると考えていました。

農地転用はクリア、しかし上水道で事態が一変

最初の懸念だった農地転用について、まず農業委員会(農地の売買や転用を審査する市町村の機関)で確認しました。この畑は第2種農地(市街地化が見込まれる区域にあるなどの理由で、条件を満たせば転用が認められる場合がある農地)にあたり、住宅用地への転用は許可の見込みがあるとのことです。

ひと安心した私は、次に上水道課で水道の引き込み状況を調べました。前の道路には、水道の本管(道路の下を通る太い水道管)が通っていることを確認。ところが、担当者から返ってきたのは思いもよらない答えでした。

「この土地は給水区域の外なので、給水管を引き込めません」

給水区域とは、水道事業者が水を供給する範囲のことです。今回の土地では、道路を境に給水区域が分かれており、向かい側は区域内、畑の側は区域外でした。なぜ道路を境に分かれているのか、上水道課でも当時の経緯ははっきりしません。担当者の見立てでは「区域を決めた当時、道路の向こう側はすでに住宅地だったが、こちら側は農地や森ばかりで家が建つ予定がなく、区域に入らなかったのでは」とのことでした。

区域を変えられないか尋ねてみたものの、「給水区域は、国や県から水道事業の認可を受けて決めている区域なので、個別の土地に合わせて変えることはできません」との答えでした。水道法では、給水区域内からの申し込みは正当な理由がなければ断れないとされていますが、区域の外にはその義務がありません。

宅地の3分の1の価格で売り出すことに

井戸を掘る方法も考えましたが、工事費がかかるうえ、飲用に適した水が出るとは限りません。Aさんとも相談し、今の状態のまま売り出すことにしました。

住宅用地としては売り出せないため、畑として査定することになります。この周辺の相場は、宅地で坪20万〜30万円、畑で坪5万〜10万円ほど。売り出し価格は、宅地の3分の1ほどです。

結果をお伝えすると、Aさんは「向かいには家が建ってるのに、どうして…」と肩を落とされました。それでも最後には、「子どもが相続したあとに給水区域外という事実を知っていたら、もっと困らせていたかもしれない。今わかってよかった」とおっしゃっています。

相続した土地は、売る前に調べておく

水道・電気・ガスなどの供給設備や排水設備の状況は、重要事項説明(契約前に、宅地建物取引士が買主に物件に関する重要な情報を説明する手続き)で説明が義務づけられています。今回のように、売り出す前の物件調査で確認しておくのが本来の流れです。

前の道路に本管があっても、向かいに家が建っていても、自分の土地が給水区域内とは限りません。給水区域は、水道局(上水道課)の窓口で確認できます。また区域外でも、自治体によっては給水を個別に相談できる場合があります。資材置き場や駐車場、近くの農家への売却など、宅地以外の売り方も含めて、早めに不動産会社に相談してみてください。

参考:水道法(e-Gov 法令検索)



ライター:平田翔(宅地建物取引士)

大学卒業後、アパレルメーカーとブライダル関連会社でマネジメント業務に従事。その後、福岡のハウスメーカーへ転職し、約3年間、新築建売住宅の販売や土地の仕入れ・不動産調査業務を担当。現在は地場の不動産会社にて、中古物件・古民家の売買仲介、空き家の利活用サポート、移住相談などを行う。不動産の実務経験を活かし、不動産ライターとしても活動中。


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