1. トップ
  2. 住まい
  3. 妻「確認しようって言ったのに」10万円を惜しんだ30代夫婦…新築マイホーム契約後に発覚した“痛恨のミス”【一級建築士は見た】

妻「確認しようって言ったのに」10万円を惜しんだ30代夫婦…新築マイホーム契約後に発覚した“痛恨のミス”【一級建築士は見た】

  • 2026.11.4
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

「土地を買ったあとの地盤調査で、ハウスメーカーの担当者に『深さ2mから下がやわらかく、改良が要ります。約90万円です』と言われて。周りには普通に家が建っているのに、どうしてうちの区画だけ…?と思いました」

そう話すのは、昨年、郊外の住宅地に大手ハウスメーカーで注文住宅(4LDK・延床約112㎡/土地約150㎡、約5,100万円)を建てたKさん(30代女性・会社員、夫と子ども1人の3人暮らし)です。結婚5年目の共働きで、子どもは2歳です。

土地は、20年ほど前に田んぼを埋めて造られた平らな分譲地の一区画でした。仲介会社の担当者は「ここは田んぼを埋めた土地です。契約の前に、売主の承諾を取って目安の地盤調査をしておくか、できなければ改良費を予算に見込んでください。何も見込まずに契約するのは、おすすめしません。調査は10万円ほどですが、改良が要ると100万円近くになることがあります」と忠告しました。

ハウスメーカーの営業担当の見積もりには、地盤改良の費用が入っていません。「周辺で建てたお宅の調査では、改良なしの例が多いです。正式には、契約のあとの調査で決まります」との説明でした。

帰り道、Kさんが「地盤調査、先にしなくていいの?」と聞くと、夫は「周りの家も普通に建ってるよ。10万円かけて調べるほどじゃない」と答えます。夫婦は調査をせずに土地を契約し、ハウスメーカーとも契約しました。

契約のあと、敷地の4か所で地盤調査が行われます。結果は、深さ2mから5mにかけてやわらかい層があり、柱状改良(地中にセメントの柱を造って建物を支える工事)が必要というものでした。費用は約90万円です。あとで古い空中写真を見ると、Kさんの区画は田んぼの間を流れていた水路の上でした。

地盤の強さは、隣の家からは分からない

地盤の強さは、見た目では分かりません。田んぼや沼を埋めた土地、斜面を盛土で平らにした土地は、地中にやわらかい層が残りやすく、建物の重さで沈むことがあります。同じ分譲地でも、埋めた深さや昔の水路の位置で、区画ごとに違います。

住宅の地盤調査は、スクリューウエイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験。先端がらせん状の棒を回しながら地中に入れ、深さごとの硬さを測る試験)が一般的です。新築住宅の多くが加入する瑕疵保険(引き渡し後に見つかった欠陥を直す費用を補う保険)の基準では、基礎の設計の前に地盤調査を行い、必要なら改良することになっています。多くの家で、調査は土地の契約のあとに行われるのです。

改良の方法は、浅い層を固める表層改良、地中に柱を造る柱状改良、鋼管の杭を打つ鋼管杭工法があり、費用は数十万円から100万円を超えることもあります。やわらかい層が深いほど、費用は上がります。

契約の前に地盤を調べるには、売主の承諾が要ります。ただ、建物の配置が決まっていない段階では調べる位置が定まらず、基礎の4隅で測る本来の調査にはなりません。契約前の調査は、やわらかい層の有無と深さをつかむ目安と考え、改良費は概算で予算に見込んでおくのが現実的です。

承諾が得られない場合や配置が決まっていない場合は、国土地理院の土地条件図を確認してみましょう。低地や盛土・埋立地の場所が色で示されています。古い空中写真も同じ国土地理院のサイトで見られます。仲介会社に、周辺の区画で改良が要った例を聞くのも手がかりになります。

重要事項説明で義務づけられているのは、宅地造成の規制区域など法令上の制限で、地盤の強さそのものは説明項目に含まれていません。仲介会社が土地の以前の使われ方を伝えるのが望ましく、Kさんの担当者も田んぼの跡であることや、調査を勧める旨を伝えていました。それでも、営業担当の「改良なしの例が多い」という言葉のほうが、夫婦には大きく聞こえたのです。

改良費90万円で、カーポートが消えた

約90万円は、予算に入っていませんでした。住宅ローンの額は決まっていたため、夫婦は外構の予算から出すことにします。約40万円のカーポートと庭の目隠しフェンスを取りやめ、駐車場は砂利のままになりました。

夫は「周りの家を見て大丈夫だと思い込んで、失敗しました」と言いました。Kさんは「10万円を惜しんだのは私も同じ」と返し、言い合いにはなりませんでした。

改良して着工、カーポートは1年遅れで

改良工事を終えて、予定どおり着工しました。ハウスメーカーの地盤保証が付きましたが、保証の内容や期間は会社によって異なります。

夫は「聞かれたのに、周りの家だけ見て決めてごめん」と謝り、カーポートの費用を自分のボーナスから出すと決めました。この春、カーポートは1年遅れで付きました。

地盤の費用は、契約の前に見ておく

田んぼを埋めた平らな分譲地は、区画が整い、道路や上下水道も新しく、建てやすい土地です。周りに家が並んでいれば、暮らしの様子も見えて安心できるでしょう。

一方で、造成前の土地の使われ方は、地上からは見えません。だからこそ、地盤改良の費用は、契約の前に見ておくことが欠かせません。

・田んぼや沼を埋めた土地、盛土の造成地は改良が要りやすい。土地の成り立ちは国土地理院の土地条件図や古い空中写真で見る
・地盤調査は基礎の設計の前に行う決まりで、改良の要否は土地の契約のあとに決まることが多い。契約前の調査は売主の承諾が要り、建物の配置が決まる前は目安にとどまる。調べられないときは改良費を予算に見込む
・改良費は表層改良で数十万円、柱状改良や鋼管杭で100万円前後になることもある。概算に入っていなければ、予算に見込んでおく
・重要事項説明に地盤の強さは含まれない。仲介会社に以前の土地の使われ方と、周辺の改良の実績を聞く

土地の候補が決まったら、国土地理院のサイトで土地の成り立ちを一度見てみてください。

参考:
住宅瑕疵担保責任保険 設計施工基準(国土交通省)
土地条件図(国土地理院)
空中写真(国土地理院)
地盤改良工事とは?知っておきたい方法と費用、必要なタイミング(アットホーム)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


【エピソード募集】ご近所・引っ越し・内見で…「えっ!」と思った体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ