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夫「軽なら平気だよ」忠告を押し切り、3mスロープを造った注文住宅…納車日に直面した“代償”【一級建築士は見た】

  • 2026.11.2
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「新車の納車の日、駐車場のスロープを上ったらガリッと音がして。販売店の方に『この勾配では、車体の前の下をこすります』と言われたんです」

そう話すのは、3年前に郊外の造成地に大手ハウスメーカーで注文住宅(4LDK・延床約110㎡/土地約165㎡、約5,600万円)を建てたIさん(30代女性・会社員、夫と子ども1人の3人暮らし)です。結婚8年目の共働きで、子どもは6歳です。

土地は、道路より60cm高いひな壇の区画でした。配置の打ち合わせで、設計担当は駐車場の案を2つ出します。駐車場にする部分だけ60cm掘り下げて床を道路と同じ高さにし、スロープをなくす案(掘った周りに土留めが要ります)と、家の横に沿って道路から5mほどかけてゆるやかに上るスロープを造り、その先の平らな場所に車を止める案(スロープが長いぶん庭が削られます)です。

夫婦が望んだのは、どちらでもありませんでした。掘り下げは約80万円の追加費用がかかり、長いスロープは庭が狭くなります。夫は「スロープは3mで十分でしょ」と言い、設計担当は「3mだと勾配が20%で、駐車場の指針の上限を超えます。車の前の下をこすったり、雨の日に滑ったりします。おすすめしません」と止めました。

帰り道、Iさんが「スロープ、急すぎない?」と聞くと、夫は「軽なら平気だよ。うちの車は背が高いし」と答えます。夫婦は3mのスロープで進め、当時乗っていた軽自動車は、たしかに何の問題もなく上り下りしました。

この春、子どもの成長に合わせて車を買い替えました。車高の低いステーションワゴンだったため、納車の日にスロープの下でガリッと音がしたのです。

急なスロープは、車の前と後ろが当たる

駐車場の車路の勾配は、国の指針で12%以下が望ましいとされ、普通乗用車以下でやむを得ない場合でも17%までです。店舗や時間貸しなど、だれでも利用できる駐車場向けの指針ですが、住宅の駐車場でも目安になります。勾配が変わる場所では、必要に応じて角を取るすり付けを行うとされています。17%は、1mの長さで17cm上がる傾きです。

車は、タイヤより前と後ろに車体が張り出しています。スロープの始まりと終わりで地面の角度が急に変わると、この張り出しの下が地面に当たります。背の高い車では当たらなくても、車高の低い車は同じスロープでこすります。

雨の日や凍った朝は、急なスロープほどタイヤが空転しやすくなります。子どもを乗せて毎日上り下りする場所なので、勾配は車より先に決めておくべき寸法です。

道路との高低差は、重要事項説明で義務づけられた項目ではありません。造成地では設計担当が配置の打ち合わせで示すことが多く、Iさんも聞いていました。それでも、車を買い替える前提までは考えていなかったのです。

高低差60cmに、やり直し45万円

販売店で見てもらうと、前のバンパーの下に傷があり、修理は約6万円でした。スロープは幅が車1台分しかなく、斜めに入って角度をゆるめる余地もありません。工事までの間は近くの月極駐車場を借り、荷物だけ道路で下ろす日が続きました。

外構会社は「始まりの角を削るだけでは、20%の勾配は変わりません」と言い、見積もりはスロープを5mに延ばす工事で約45万円でした。花壇を撤去して庭を削り、勾配は12%になります。家を建てるときにスロープを長く取っていれば、追加費用はほとんどかかりませんでした。

夫は「軽なら平気だと思い込んで、失敗しました」とこぼしました。

この秋、スロープは5mに延び、始まりと終わりの角にはすり付けが入りました。花壇は玄関脇のプランターに替わり、車は音を立てずに上り下りしています。

駐車場の勾配は、車より先に決める

ひな壇の造成地は、日当たりと眺めがよく、道路からの視線も入りにくい土地です。高低差を生かした庭は、平らな土地にはない魅力でしょう。

一方で、高低差のぶん、駐車場には掘り下げるかスロープを取るかの判断が要ります。だからこそ、スロープの勾配は今の車ではなく、この先乗るかもしれない車で考えることが欠かせません。

・駐車場の車路の勾配は、国の指針で12%以下が望ましく、普通乗用車でも17%まで。高低差60cmなら、スロープは5m前後が目安
・スロープの始まりと終わりには、角を取るすり付けを設ける。車高の低い車は、張り出した前後の下をこすりやすい
・高低差のある土地は、掘り下げるか長いスロープにするかで費用と庭の広さが変わる。配置の打ち合わせで決める
・道路との高低差は重要事項説明の項目ではない。土地を見るときに、道路との段差を自分で測る

ひな壇の土地を見るなら、道路から敷地までの高さを一度測ってみてください。

参考:
駐車場設計・施工指針について(国土交通省)
路外駐車場設置における注意事項(さいたま市)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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