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工務店「もう間に合いません」50万円の塗り替えを先送りに→30代夫婦を襲った“120万円の大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2026.10.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「工務店の方に『北側の板は、中まで傷んでいます。塗り替えでは、もう間に合いません』と言われたんです。3年前に『そろそろ塗り替えを』と言われていたのに」

そう話すのは、6年前に郊外の住宅地に地元の工務店で注文住宅(4LDK・延床約112㎡/土地約190㎡、約4,300万円)を建てたFさん(30代女性・会社員、夫と子ども2人の4人暮らし)です。結婚12年目の共働きで、子どもは小学4年生と1年生です。

Fさんの夢は、外壁を木の板で張った家でした。設計の打ち合わせで、工務店の設計士は「板張りは、数年ごとに塗り替えが要ります。北側は日が当たらず乾きにくいので、特に傷みやすい。塗り替えを続ける自信がなければ、おすすめしません。北側だけでも別の材料にしませんか」と止めています。

帰り道、Fさんが「木の壁って、手入れ大変じゃない?」と聞くと、夫は「塗るだけだよ。自分でできる」と答えました。夫婦は、四方すべてを杉の板張りにして建てたのです。

3年目の点検で、工務店の担当者は「そろそろ塗り替えを。足場を組んで約50万円です」と勧めました。夫は「自分で塗るから」と断りましたが、2階の壁は足場がなければ塗れず、週末は子どもの習い事と仕事で埋まり、塗料を買うところまでも進みません。昨年の秋、Fさんは北側の壁の下のほうが黒ずみ、板の端を指で押すとへこむのに気づきました。

木の外壁は、塗料が薄れたところから傷む

木の外壁は、塗料で日差しと雨から守られています。塗料による保護効果が薄れると、雨水が板に染み込み、乾く前に次の雨が来る場所では木を腐らせる菌が働きます。腐る条件は水分で、濡れても早く乾く壁は長持ちします。

住宅の外装では、北側がほかの面より劣化しやすくなります。日が当たらず、乾きにくいためです。風通しの悪い場所に植え込みが迫っていると、湿った状態が続き、黒ずみや腐りが早まります。

木材保護塗料(木に染み込ませて雨や日差しから守る塗料)を使った外装は、初回の塗り替えを3〜5年のうちに行うと、その後の耐久性が上がります。塗料の種類や環境で、周期は変わります。設計の段階では、軒の出を60cm以上取ると、壁にかかる雨が大幅に減ります。Fさんの家は、北側が隣地に近くて軒を深くできず、植え込みも壁に近い造りでした。

50万円の塗り替えを先送りして、120万円

工務店に見てもらうと、北側は板の下のほうが腐り、張り替えが必要でした。残る3面は塗り替えで済みますが、足場は全体に組みます。見積もりは、張り替えと塗り替えを合わせて約120万円でした。

3年目に塗っていれば、約50万円で済んだ工事です。夫は「自分で塗ると言って、失敗しました」と言います。Fさんは「木の家に住みたいと言ったのは私」と返し、責め合いにはなりませんでした。

北側は張り替え、塗り替えは工務店に

工事では、北側の板を張り替え、腐りの原因になっていた植え込みを壁から離しました。残る3面は塗り替えています。

夫は「自分で塗るなんて言って、ごめん」と謝り、次の塗り替えを工務店に頼む約束をしました。手の届く1階の板は、夫が年に一度、塗料を重ねる係です。Fさんは、数年ごとの塗り替え費用を、毎月の積み立てに組み込みました。

木の外壁は、手入れの計画も含めて選ぶ

板張りの外壁は、木の表情が年ごとに変わり、住む人の手で育てる楽しみがあります。塗り替えのたびに色を選び直せるのも、木ならではです。

一方で、塗り替えを止めると、傷みは静かに進みます。だからこそ、木の外壁を選ぶなら、何年ごとに誰がいくらで塗るかを、設計の段階で決めておくことが欠かせません。

・木の外壁は、塗料が薄れたところから雨が染み込む。初回の塗り替えは3〜5年のうちに行うと、その後が長持ちする
・北側は日が当たらず乾きにくく、ほかの面より劣化しやすい。植え込みを壁から離し、風通しを確かめる
・設計では軒の出を60cm以上取ると、壁にかかる雨が大幅に減る。手入れを続けにくい面は、別の材料にする選択もある
・塗り替えの費用は、足場代を含めて見込み、毎月の積み立てに組み込んでおく

木の外壁の家に住んでいるなら、北側の壁の下のほうを一度さわってみてください。

参考:
木材を利用した官庁施設の適正な保全に資する整備のための留意事項(国土交通省)
資料編(施設の性能に影響を与える木材の経年変化)(国土交通省)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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