1. トップ
  2. 住まい
  3. 電力会社「工事に入れません」夫「失敗しました…」電柱があるのに駐車場を…忠告を無視した結果【一級建築士は見た】

電力会社「工事に入れません」夫「失敗しました…」電柱があるのに駐車場を…忠告を無視した結果【一級建築士は見た】

  • 2026.10.29
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

「駐車場の前の電柱を動かしてほしいと電力会社に頼んだら、『移す先が決まらないと、工事に入れません』と言われて。隣の家の前には動かせず、結局うちの庭の角に移したんです」

そう話すのは、一昨年、郊外の分譲地に地元の工務店で注文住宅(4LDK・延床約105㎡/土地約150㎡、約5,200万円)を建てたEさん(30代女性・会社員、夫と子ども1人の3人暮らし)です。結婚4年目の共働きで、子どもは2歳です。

土地は南側が道路に面し、道路との境に電柱が1本立っていました。配置の打ち合わせで、Eさん夫婦は玄関に近い西側に駐車場を取りたいと伝えます。電柱は、その駐車場の出入り口のすぐ横でした。

工務店の設計担当は「この位置だと、車の出し入れのたびに電柱をよけて切り返すことになります。電柱の移設は電力会社の判断で、時間も費用もかかることがあります。この位置に駐車場を取るのは、おすすめしません」と、東側に駐車場を置く案を出しました。

帰り道、Eさんが「あの電柱、車を出すとき邪魔にならない?」と聞くと、夫は「頼めば動かしてもらえるよ。玄関の近くのほうが、子どもを乗せるのに楽だし」と答えます。土地を買うとき、仲介会社からも「前の電柱は、移設できないこともあります」と聞いていましたが、夫婦は西側の案で進めました。

入居して始まった暮らしは、毎朝の切り返しからでした。子どもを乗せた車を出すのに、電柱をよけて前後に何度も動かします。秋には、ドアミラーを電柱にこすりました。

電柱を動かすには、移す先が要る

電柱は、電力会社か通信会社の持ち物です。どちらの柱かは、柱に付いた名前の札で分かります。移設は持ち主に申し込み、現地で動かせるかを確かめてもらいます。

動かすには、移す先が要ります。道路の上なら道路の管理者、ほかの人の土地なら持ち主との交渉が必要で、申し込みから工事まで半年以上かかることもあります。申し込んだ人の都合で動かす場合は、費用の負担を求められることもあります。

移す先の候補が、自分の敷地しかないこともあります。敷地の中に電柱を立てると、電力会社から土地の使用料(電柱敷地料)が支払われます。金額や支払いの周期は、会社によって異なります。

電柱の位置は、重要事項説明で義務づけられた項目には入っていません。それでも車の出し入れに直結するため、仲介会社が現地で一言添えるのが望ましく、Eさんの仲介会社はそうしていました。家の配置は、電柱を動かす前提ではなく、今ある位置で考えるのが設計の基本です。

電柱1本に、8か月と25万円

申し込むと、電力会社の担当者が現地を見に来ました。移す先の候補は、道路沿いに西へ2mずらした隣家の前か、東へずらした玄関の正面か、Eさんの敷地内の東の角でした。

隣家に相談すると、「うちの前に来るのは」と難色を示されます。玄関の正面は夫婦が避けたいと考え、敷地内の庭の角に電柱を受け入れることにしました。工事までは8か月かかり、その間も毎朝の切り返しは続きます。約25万円の費用を、夫婦が負担しました。

夫は「頼めば動くと思い込んで、失敗しました」と話し、Eさんは「玄関の近さを優先したのは私も同じ」と返します。設計担当の東側の案なら、費用も待つ時間もかかりませんでした。

庭の角に電柱、駐車場はそのまま

移設のあと、駐車場の出入りは切り返しなしで済むようになりました。

夫は「聞かれたのに、確かめずにごめん」と謝り、電力会社とのやりとりと隣家への説明を引き受け、費用は自分の貯金から出しました。Eさんは、土地の使用料を受け取る手続きを済ませています。

土地を見るときは、電柱の位置も測る

電柱は敷地を買った人の都合では簡単に動かせません。だからこそ、土地を見るときは電柱の位置を測り、動かす前提で配置を決めないことが欠かせません。

・電柱の持ち主は、柱の名前の札で分かる。移設は持ち主に申し込み、動かせるかは現地で確かめてもらう
・移す先の交渉や設計に時間がかかり、工事まで半年以上かかることもある。申し込んだ人が費用を負担することもある
・電柱の位置は、重要事項説明で義務づけられた項目ではない。土地を見るときに、駐車場の出入り口との位置関係を自分で確かめる
・敷地内に電柱を受け入れると、土地の使用料(電柱敷地料)が支払われる。金額や周期は会社で異なる

気になる土地があれば、駐車場にしたい場所と電柱の距離を一度測ってみてください。

参考:
電柱等の円滑な移設に向けたご協力のお願いについて
(東京電力パワーグリッド)
電柱・電線等(中国電力ネットワーク)
電柱敷地料(関西電力送配電)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


【エピソード募集】ご近所・引っ越し・内見で…「えっ!」と思った体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ