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妻「失敗しました」5400万円の注文住宅、更新料10万円を惜しんだ結果…市から届いた“思わぬ宣告”

  • 2026.10.25
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「家を建てる土地を市が試しに掘ったら、土器のかけらが出てきて。市の方に『調査が終わるまで、工事は待ってください』と言われたんです」

そう話すのは、昨年、郊外の住宅地に大手ハウスメーカーで注文住宅(4LDK・延床約108㎡/土地約155㎡、約5,400万円)を建てたAさん(30代女性・会社員、夫と子ども1人の3人暮らし)です。結婚6年目の共働きで、子どもは4歳です。

買った土地は、埋蔵文化財包蔵地(遺跡が埋まっていると知られている土地)の中にありました。契約の前に、仲介会社から「家を建てるときは、市への届け出が要ります」と説明を受けています。

ハウスメーカーを通じて届け出たあと、市が試掘をすると、土器のかけらと昔の住居の跡が見つかりました。基礎を掘る範囲に発掘調査(工事の前に遺跡を掘り、記録に残す調査)が必要になります。調査は3週間ほどの見込みで、3月に予定していた完成は、4月半ばに延びることになったのです。

住んでいた賃貸マンションは3月末が契約更新の時期で、更新料は家賃1か月分の約10万円でした。調査が始まった12月、更新の案内が届きました。ハウスメーカーの営業担当は「発掘調査は、掘ってみないと期間が読めません。退去を先に決めるのは、おすすめしません」と止めました。

夫が「更新しておかない?」と言うと、Aさんは「調査は3週間でしょ。半月のために更新料を払うの、もったいないよ」と答え、調査が終わるのを待たずに3月末の退去を申し入れました。荷物は引っ越し業者に預け、半月だけ、Aさんの実家に泊まるつもりでした。

包蔵地は、工事の60日前までに届け出る

埋蔵文化財包蔵地は、全国に約46万か所あります。このような土地で家を建てるなど、土を掘る工事をするときは、文化財保護法により、工事を始める60日前までに教育委員会へ届け出なければなりません。

教育委員会は、必要に応じて試掘を行い、工事の進め方を指示します。慎重に工事を進めるだけでよい場合や、職員が工事に立ち会う場合、発掘調査が必要になる場合があります。掘る深さが遺跡に届かない計画なら、立ち会いで済むこともあります。

発掘調査は細かな手作業で、期間は遺跡の種類や密度によって変わります。終わるまで、その場所の工事には入れません。

調査の費用は、工事をする側の負担が原則です。ただ、個人が自分で住む家を建てる場合は、公費で調査する制度があります。対象や条件は、自治体によって異なります。

包蔵地かどうかは、重要事項説明で義務づけられた法令の制限の一覧には入っていません。それでも工事の時期に関わるため、仲介会社が調べて伝えるのが望ましい事柄です。Aさんの仲介会社も事前に調べて伝えており、ハウスメーカーも日程の注意を伝えていました。

更新料10万円を惜しんで、仮住まいに約70万円

発掘調査では、住居の跡が重なって見つかりました。3週間の見込みだった調査は2か月あまりかかり、完成は6月末にずれ込みます。調査の費用は、市の負担でした。

退去の取り消しを管理会社に頼みましたが、次の入居者が決まっていました。実家は職場から遠く、3か月は通えません。一家は家具付きの短期賃貸を借り、家賃と荷物の保管料、余分な引っ越しで約70万円かかりました。更新料を払って住み続けるより、かえって高くつきました。

Aさんは「3週間で終わると決めつけて、失敗しました」と振り返ります。夫は責めることなく、仮住まいの候補を探してきたそうです。

日程を確かめ直し、仮住まいは延ばせる契約に

夫婦は、営業担当を通じて調査の進み具合を市に確かめ、引き渡しの日を決め直しました。仮住まいには、1か月ごとに期間を延長できる契約を選びました。

Aさんは夫に「押し切ってごめん」と謝り、2度の引っ越しの手配を引き受けました。調査の間、夫は子どもを連れて現場を見に行き、市の担当者から、土器が千年以上前のものだと教わったそうです。

土地を買う前に、遺跡地図を見る

包蔵地は珍しい土地ではなく、届け出をして指示に従えば、多くの場合、家は建てられます。足元に昔の暮らしの跡がある土地ともいえます。

一方で、調査が入ると、着工の時期は自分では決められません。だからこそ、退去や入居の日程は、調査が終わる見通しが立ってから決めることが欠かせません。

・包蔵地かどうかは、市区町村の教育委員会の窓口や、公開された遺跡地図で確かめられる
・包蔵地で家を建てるときは、工事の60日前までに届け出る(文化財保護法第93条)。掘る深さで扱いが変わるため、設計の段階で相談する
・試掘や発掘調査が入ると、着工が延びることがある。賃貸の退去は、調査が終わる見通しが立ってから決める
・個人の住宅は調査費が公費になる制度があるが、条件は自治体によって異なる

土地を買う前に、市区町村の遺跡地図で一度調べてみてください。

参考:
埋蔵文化財(文化庁)
埋蔵文化財包蔵地に該当する場合(目黒区)
埋蔵文化財保護のための届出について(世田谷区)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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