1. トップ
  2. 住まい
  3. タワマン23階を買った夫婦→“設計担当の忠告”を聞かずにリノベした結果→壁1枚の“思わぬ金額”に驚愕【一級建築士は見た】

タワマン23階を買った夫婦→“設計担当の忠告”を聞かずにリノベした結果→壁1枚の“思わぬ金額”に驚愕【一級建築士は見た】

  • 2026.10.21
undefined
出典:PIXTA(※画像はイメージです)

「洋室に壁を1枚立てて、書斎とクローゼットに分けるだけのつもりでした。それが、天井のスプリンクラーの工事で40万円も増えると言われて」

そう話すのは、この春に中古のタワマン23階(築17年・3LDK・77㎡、約7,100万円)を買ったAさん(40代女性・会社員、夫と中学生の子ども1人の3人暮らし)です。結婚16年目の共働きで、入居前に約900万円の予算でリノベーション(間取りや内装をつくり替える工事)を計画しました。

Aさんの希望は、リビング横の洋室を壁で2つに分け、在宅勤務用の書斎とウォークインクローゼットにすることです。夫は、リビングに造り付けの本棚を望んでいました。

打ち合わせでは、リノベーション会社の設計担当から、「高層階のお部屋は、天井にスプリンクラーがあります。壁を立てて部屋を分けると、その工事で費用も日数も増えます。金額は専門業者が調べるまで出せませんが、このご予算で壁を立てる案はおすすめしません」と止められました。それでも夫婦は「壁を1枚立てるだけでしょう」と考え、プランを変えませんでした。

11階以上の部屋には、原則スプリンクラーがある

マンションの11階以上の階には、消防法令により、原則としてスプリンクラーの設置が義務づけられています。天井に見える丸い部品が、水の出るヘッドです。

ヘッドは、居室と、一定の広さ以上の収納に設置され、床のすみずみまで水が届くように配置されています。共同住宅向けのスプリンクラー設備の基準(総務省令)では4㎡以上の収納が対象ですが、建物に付いている設備の種類や、管轄の消防本部の条例・運用によって扱いは異なります。そのため、壁を立てて新しい部屋や大きな収納をつくると、そこにもヘッドを増やすことになります。壁の位置によっては、今あるヘッドを動かす場合もあります。

この工事は専門の業者が行い、内容によっては消防署への届出や検査も必要です。スプリンクラーは建物全体の消防設備の一部なので、管理組合への工事申請も必要になります。ほかの内装工事に比べて、費用も日数もかかりやすい工事です。リノベーションを計画する前に、設計担当者を通じて管轄の消防署と管理組合に確認しておきましょう。

壁1枚で、追加40万円と2週間

専門業者が現地を調べ、管轄の消防署にも確かめました。洋室のヘッドは部屋の中央にあり、新しい壁の位置と重なるため、動かす必要があります。クローゼットは約3畳(約5㎡)で、このマンションに適用される4㎡の基準を超えるため、ヘッドを1つ増やすことも分かりました。

見積もりは約40万円の追加で、予算を超えました。消防署と管理組合の手続きを待つため、入居も2週間ほど遅れることになりました。

「壁を1枚立てるだけで40万円。設計担当の方に言われたとおりで、失敗しました」

どこを削るかで、夫婦の意見は割れました。夫は「書斎をやめればいい」と言い、Aさんは「本棚をやめれば収まる」と返して、その晩は話がまとまらなかったそうです。

クローゼットを4㎡未満にして、工事を1か所に

Aさんは設計担当に相談し、プランを見直しました。専門業者に確かめたうえで、クローゼットを約2畳に縮めて4㎡未満にし、ヘッドの増設をなくしています。今あるヘッドは新しい壁に近すぎるため、少し動かす工事だけが残りました。

追加の費用は約20万円まで下がり、この分は夫が造り付けの本棚を既製品に替えて捻出しています。互いに希望を1つずつ譲る形で、話は収まりました。手続きを待った分、入居は予定より2週間遅れ、それまで住んでいた賃貸の家賃が余分にかかりました。

高層階の中古をリノベするなら、天井も確かめる

眺めのよい高層階の中古物件を買い、暮らしに合わせて間取りをつくり替えるのは、理想の住まいに近づける方法の一つです。スプリンクラーも、万一の火事で部屋を守ってくれる設備でしょう。一方で、間取りを変えるときには、この設備が費用と日数に関わってきます。

・内見では天井を見上げ、スプリンクラーのヘッドがどこにあるかを確かめる
・壁を立てる、収納をつくる計画があるなら、リノベーションの工事契約の前に専門業者の調査を頼み、スプリンクラー工事の見積もりを出してもらう
・新しい部屋や一定の広さ以上の収納にはヘッドが必要になる。線引きは建物の設備や管轄の消防本部で異なるので、計画の前にリノベーション会社を通じて消防署と管理組合に確認する
・管理組合への申請と消防署の手続きにかかる日数を、引っ越しの予定に入れておく

間取りを決める前に天井の設備を確かめておくと、予算と入居日の見通しが立てやすくなります。

参考:
タワーマンションのリノベについて教えてください(無印良品の家)
高層マンション工事の注意点(サンリフォーム)
特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(e-Gov法令検索)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


【エピソード募集】ご近所・引っ越し・内見で…「えっ!」と思った体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ