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夫「失敗しました」築8年の家で“工務店の忠告”を無視した30代夫婦→床が沈み…“見積もり”に青ざめたワケ【一級建築士は見た】

  • 2026.10.20
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「工務店の人に『床下の土台が食われています。シロアリです』と言われたんです。シロアリなんて、一度も見たことがなかったのに」

そう話すのは、8年前に郊外の住宅地に地元の工務店で注文住宅(4LDK・延床約110㎡/土地約170㎡、約4,100万円)を建てたUさん(30代女性・会社員、夫と子ども1人の3人暮らし)です。結婚11年目の共働きで、子どもは小学3年生です。

引き渡しのとき、工務店から「シロアリを防ぐ薬剤の効果は5年ほどです。5年を過ぎたら再処理をしてください」と説明を受けていました。3年前の5年点検でも、担当者は「保証が切れます。再処理をしないまま放っておくのは、おすすめしません」と、約15万円の見積もりを出しました。

夫は「シロアリなんて見たことがないし、近所でも聞かない」と言い、Uさんも「点検のついでの営業だろう」と受け止めました。見積もりは引き出しにしまったままでした。

この秋、長雨のあとに洗面所の床が沈む感じがし、工務店に見てもらいました。床下に入った担当者が見つけたのは、基礎の内側を這い上がる何本もの土の筋。シロアリの通り道(蟻道)です。洗面所と浴室の下の土台と、床を支える横木の一部が、内側から食われていました。

シロアリは、光の当たらない場所で静かに進む

日本で被害の多いヤマトシロアリは、湿った木を好み、光を避けて土の中や木の内側で暮らします。基礎を伝って上がるときは、体をさらさないように土で蟻道を作ります。床下一面がコンクリートのベタ基礎でも、ひびや配管まわりの隙間から入り込みます。木の表面はきれいなまま内側だけが空洞になり、床が沈んで初めて気づく家が多いのです。

姿を見せるのは、4〜5月の雨上がりに飛び出す羽アリくらいです。その数日を見逃せば、家にいても「見たことがない」ままです。

木造住宅では、地面から1m以内の柱や土台に腐れを防ぐ措置と、必要に応じてシロアリを防ぐ措置が求められます(建築基準法施行令第49条)。そのため、多くの家では床下の土台や土に薬剤を処理し、土から上がってくるシロアリが土台に届く前に食い止めます。

この防蟻(シロアリを防ぐ)処理の効果は、一般的な薬剤で5年です。長く効く薬剤は環境への負担が大きいため、公益社団法人日本しろあり対策協会の認定薬剤の有効期間は5年とされており、工務店や防除業者の保証もこれに合わせるのが一般的です。5年を過ぎてすぐ被害が出るわけではありませんが、守りはなくなります。

火災保険は、虫食いによる損害を対象外とする商品が一般的です。補償の範囲は商品によって異なります。新築から10年の瑕疵(欠陥)の保証も、施工の欠陥が原因でなければ、シロアリの食害は対象になりません。

15万円の再処理が、90万円の工事に

工務店の見積もりは、駆除と家全体の予防処理、土台と横木の補強、洗面所の床の解体と復旧で合計約90万円でした。3年前の見積もりの6倍です。保証は切れ、火災保険も虫食いは対象外で、全額が自己負担になります。被害は洗面所と浴室の下だけで、他の場所に蟻道はありませんでした。

洗面所の床下は配管が集まり、湿気がこもりやすい場所です。担当者は「食われ方からみて、2〜3年は食べ続けていたと思います」と話しました。再処理を見送った時期と重なります。

夫は「15万円を惜しんで、失敗しました」と言い、Uさんは「工務店の勧めを営業だと思ったのは私も同じ」と、引き出しの奥から見積書を取り出しました。

再処理を、「5年ごとの行事」にする

Uさん夫婦は、見積もりどおりの工事を工務店に依頼しました。工事は床下と洗面所に限られ、洗面所が使えない数日を除いて、普段通りに住みながら進められました。

床下点検口は、年に一度、梅雨の前に夫がのぞくようにしています。庭の木のプランター台は、基礎から離しました。

見えない虫には、「期限」で向き合う

木造の家は、肌ざわりと価格で選ばれ続けています。防蟻処理を続ければ、長く住める家です。

一方で、シロアリは光の当たらない場所で静かに進み、気づいたときには土台まで届いていることもあります。だからこそ、薬剤の期限で動くことが欠かせません。

・一般的な薬剤処理の効果は5年。保証書の期間を確かめ、切れる前に再処理の見積もりを取る
・床下点検口を年に一度開け、基礎の内側に土の筋(蟻道)がないかを見る。床が沈むときは早めに相談する
・火災保険は虫食いを対象外とする商品が一般的。補償の範囲は証券や約款で確かめる
・基礎のそばに木を直接置かず、床下の湿気を減らす

築5年を過ぎた木造の家に住んでいるなら、防蟻処理の保証書の日付を一度確かめてみてください。

参考:
シロアリ(東京都保健医療局)
5年間の保証がついていますが、5年経ったら必ず再施工しなければならないのでしょうか。
(公益社団法人日本しろあり対策協会)
保証は5年となっていますが、なぜなのですか。(公益社団法人日本しろあり対策協会)
建築基準法施行令(e-Gov法令検索)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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