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夫「失敗しました…」2泊3日旅行から帰宅後、寝室に入ったら…30代夫婦が目撃した“異様な光景”【一級建築士は見た】

  • 2026.10.19
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「2泊3日の旅行から帰って寝室に入ったら、窓の上の壁紙に茶色いしみが広がっていて。床には水たまりができていました」

そう話すのは、3年前に郊外の分譲地に地元の工務店で注文住宅(3LDK・延床約94㎡/土地約122㎡、約4,350万円)を建てたSさん(30代女性・デザイナー、夫と二人暮らし)です。結婚3年目の共働きです。

Sさんが望んだのは、軒(屋根の外壁から外に出た部分)のない箱型の外観でした。設計の打ち合わせで、設計担当は「軒のない家は、おすすめしません。外壁と窓まわりが雨に直接ぬれ、風を伴う雨は窓の上から回りやすく、雨漏りのリスクが高まります。軒を出すか、窓の上に小さな庇(ひさし)を付けましょう」と止めました。

軒を出すと費用は約25万円増え、箱型の輪郭が崩れます。Sさんは「外壁の防水はきちんとしてもらえば大丈夫」と押し切り、夫も「シンプルな方がいい」と賛成しました。

この秋、二人は2泊3日の旅行に出ました。留守の間は風の強い雨が続きました。帰宅して2階の寝室に入ると、窓の上の壁紙に茶色いしみが広がり、窓枠から床へ水が伝い落ち、床には水たまりができていました。3日間、誰も気づかずに水が垂れ続けていたのです。

軒は、壁と窓を雨から守る「傘」

軒は、壁と窓まわりに当たる雨を減らし、夏の日ざしを遮る役目があります。軒のない家では、外壁と窓まわりの全面が雨にぬれ、風を伴う雨では窓の上枠にも水が当たり続けます。

住宅の雨漏り事故は、屋根だけでなく、外壁と窓まわりの取り合い(部材と部材のつなぎ目)でも多く起きています。国土交通省の研究委員会の報告書でも、軒の出が10cm未満の箇所がある住宅は、雨漏り事故のリスク要因として挙げられています。つなぎ目を埋めるシーリング(ゴム状の防水材)の切れ目は軒のある家でも生じうるものですが、軒があれば当たる水の量が少なく、漏れにくいのです。軒のない家では、ミリ単位の切れ目も水の入り口になりやすくなります。

もっとも、軒のない家が必ず雨漏りするわけではありません。雨に直接ぬれるぶん、綿密な防水の設計と施工、そして住んでからの定期的な点検が求められる造りです。

新築の住宅には、制度による守りもあります。品確法で、構造の主要な部分と雨水の浸入を防ぐ部分の欠陥は、引き渡しから10年間、建てた会社が無償で直す責任を負います。会社が倒産しても、住宅瑕疵担保履行法による保険か供託(保証金を国に預けること)で補修費が確保されています。ただし保険の対象は主に補修費で、ぬれた家具などは別に話し合うことになります。火災保険は、強風で壊れた箇所からの雨漏りなら風災として対象になることがありますが、施工不良や経年劣化による雨漏りは対象外となるのが一般的で、条件は商品で異なります。

直すのは無償。でも、窓はあと6か所

工務店がすぐに調べたところ、原因は寝室の窓の上枠と外壁のつなぎ目のシーリングに入った小さな切れ目でした。施工の不具合によるものですが、軒がないためその隙間に直接雨が当たり続けてしまったのです。10年の保証の範囲で、シーリングのやり直しと壁の下地の点検、壁紙の張り替えは無償でした。

ただ、水を吸った無垢の床板のしみは消えず、窓の下に置いていたベッドのマットレスは買い替えに約8万円かかりました。同じ造りの窓は、あと6か所あります。夫は「見た目を優先して、軒をなくして失敗しました」と言い、Sさんは「箱型にこだわったのは私。設計担当の言った『窓の上から回る』が、そのまま起きた」と肩を落としました。

庇を、外観の一部として後付けする

Sさん夫婦は、7か所の窓すべてに、奥行きの浅いアルミの庇を後付けしました。庇の追加は設計変更にあたるため無償保証の対象外で、費用は約35万円。軒を出すのを惜しんだ25万円より、高くつきました。

デザイナーのSさんは、庇の色と薄さを外壁に合わせて選び、箱型の輪郭を崩さない形に収めました。

軒をなくすなら、窓の上に「傘」を

箱型の家は、無駄のない外観で人気があり、建設費用を抑えやすく、狭い敷地でも広さを取りやすい造りです。防水の施工と点検がきちんとしていれば、長く住める家です。

一方で、壁と窓に雨が直接当たるため、わずかな切れ目が雨漏りにつながりやすく、点検と手入れを続ける責任は住む人にあります。だからこそ、軒をなくすなら、窓の上の庇など、雨を受け流す工夫を最初から設計に入れておくことが欠かせません。

・軒のない家は外観がすっきりし、費用も抑えやすい。必ず雨漏りするわけではないが、外壁と窓まわりが雨に直接ぬれるぶんリスクは高まる
・新築から10年は、雨漏りの欠陥の補修は建てた会社の責任(品確法)。保険や供託で補修費が確保されるが、ぬれた家具は対象外
・軒をなくすなら、窓の上に庇を付けるなど雨を受け流す設計を最初から入れる
・シーリングは10年ほどで劣化する。点検と、保証が切れたあとの打ち替えは住む人の責任。強い雨の翌日は窓の上の壁紙を見て、しみがあれば建てた会社へ

軒のない家を建てるなら、設計の打ち合わせで「窓の上に、雨を受け流す工夫はありますか」と一度聞いてみてください。

参考:
住宅瑕疵担保履行制度の新たな展開に向けた研究委員会 保険事故情報等の収集・分析・活用WG 報告書(国土交通省)
住宅瑕疵担保履行制度の新たな展開に向けた研究委員会(第1回)説明資料(国土交通省)
木造住宅の耐久性を向上させる家造りガイドライン(国土技術政策総合研究所)
木造住宅の長期使用に向けた屋根、外壁、床下のメンテナンスガイドライン(国土技術政策総合研究所)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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