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夫「失敗しました…」3,500万円のマイホーム購入→雨が3日続いた朝、裏庭で目撃した絶句する事態【一級建築士は見た】

  • 2026.10.16
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「雨が3日続いた朝、裏の擁壁の水抜き穴から茶色い水が流れ出していて。壁の真ん中あたりがふくらんで、隅のブロックが崩れていたんです」

そう話すのは、2年前に坂の多い住宅地で中古の一戸建て(築18年・4LDK・延床約99㎡/土地約145㎡、約3,500万円)を買ったPさん(30代女性・会社員、夫と子ども1人の3人暮らし)です。結婚6年目の共働きで、子どもは4歳です。

家の北側は、一段高い隣地を支える高さ約3mの古い擁壁(高低差のある土を支える壁)に接しており、所有者は上の家です。重要事項説明では「隣地所有者の所有で、築年と検査済証は不明」とありました。

購入前に水回りの手直しの見積もりを頼んだ工務店の担当者は、擁壁を見上げて「水抜き穴が土でふさがって、壁の真ん中あたりが外にふくらんでいます。崩れたら土砂を受けるのは、この家ですよ。買うなら、上の家と擁壁の話をしてからのほうがいい」と顔を曇らせました。それでも価格は相場より約300万円安く、夫は「隣の壁の話で、うちは関係ない」と言い、Pさんも日当たりの良さを優先し、上の家と擁壁の話はしないまま契約したのです。

この秋、雨が3日降り続いた朝、水抜き穴から茶色い水が流れ出し、隅のブロックが崩れて土砂が裏庭の物置の足元まで流れ込んでいました。

擁壁は、水の抜け道をふさがれると崩れる

擁壁は、土と、しみ込んだ水の重さを受けています。水抜き穴は水の圧力を抜く役割があり、国土交通省の「宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル」では壁面3㎡に1か所以上が目安です。穴がふさがると水の圧力が壁を押し、崩壊の原因になります。

危険のサインは、横や隅のひび割れ、ふくらみ、上の地面の沈みや亀裂です。大雨で水抜き穴から濁った水が出るのは裏の土が流れ出している合図で、壁から離れて市区町村に連絡しましょう。

擁壁の所有者は通常、支えている側の土地の所有者ですが、造成の経緯によって変わるため、登記簿で確かめる必要があります。維持管理は所有者の責任で、2023年5月施行の盛土規制法では、規制区域内の所有者などに常時安全に維持する責務が定められ、危険があれば知事などが是正を命令できます。従わなければ、行政が代わりに工事して費用を請求する代執行もあります。区域の指定は自治体によって異なります。

下の家に被害が出た場合、設置や保存に欠陥があれば所有者などの賠償責任が問題になります(民法第717条)。ただし話し合いや手続きには時間がかかるため、下の家の備えとなるのは、火災保険の水災補償(洪水や土砂崩れの被害を補う補償)です。

もっとも、古い擁壁には、いまの技術基準に合わないものが全国に多くあります。宅地が造成されたときに造られたものも多く、所有者にとっても作り直しは重い負担です。

「隣の壁の話」ではなかった

裏庭の物置は土砂で傾き、撤去費用に約5万円かかりました。擁壁に面した北側は子どもの寝室でしたが、その夜から子どもは南側の部屋で寝ています。

市に連絡すると職員が現地を確かめ、この地域は盛土規制法の規制区域に該当するため、上の家に応急措置と改善を求めました。上の家は70代の夫婦で、擁壁は土地を買ったときからあったものです。知らせを受けた日に訪ねてきて「ご心配をかけて申し訳ない」と頭を下げ、「作り直しは500万円近くかかり、すぐには出せない」と話しています。300万円安く買った家の裏で、500万円の壁が崩れかけているのです。

夫は「安いのには理由があると分かっていたのに、押し切って失敗しました」と言い、Pさんは「日当たりで決めたのは私も同じ」と、小さくうなずきました。擁壁の話をせずに買ったのは自分たちだと、二人は受け止めています。

応急措置と、雨の日の避難先

上の家はすぐに業者を手配し、市の立ち会いのもと、崩れた隅をシートで覆い、土のうを積みました。作り直しは、市の助成(有無や条件は自治体によって異なる)を使って来年の着工を検討中です。

住み替えも考えましたが、作り直しはすぐには進まないため、まずは見通しが立つのを待つことにしました。上の家とは連絡先を交換し、助成の申請の進み具合を知らせてもらっています。子どもの寝室は南側の部屋に移したまま、大雨の警報が出た日は実家に泊まり、擁壁の写真を月に一度撮っています。火災保険の水災補償は、物置の撤去費用だけでは支払いの基準額に届かず、自己負担となりました。

隣の擁壁は、自分では直せない

高低差のある住宅地は日当たりと眺めがよく、価格も手ごろな物件が多いです。

一方で、隣地の擁壁は自分では直せず、崩れたときに被害を受けるのは下の家です。だからこそ、裏に擁壁がある家を選ぶなら、水抜き穴とふくらみを見て、所有者と管理状況を確かめておくことが欠かせません。買う前に上の家と話しておけば、擁壁の状態を一緒に確かめ、点検や工事の時期を相談できます。

・擁壁の所有者は通常は支えている側の土地の所有者だが、登記簿で確かめる。維持管理の責任は所有者にあるので、買う前に所有者と話しておく
・水抜き穴の詰まり、ひび、ふくらみ、上の地面の亀裂は危険のサイン。大雨で濁った水が出たら壁から離れて市区町村に連絡する
・盛土規制法では規制区域内の所有者に安全に維持する責務があり、行政は是正を命令できる。区域指定や助成は自治体によって異なる
・下の家の備えは火災保険の水災補償。土砂崩れを補償する商品が多いが、条件は商品によって異なる

裏に擁壁がある家を見るなら、雨の日に水抜き穴を一度見てみてください。

参考:
宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル(国土交通省)
宅地造成等規制法の一部を改正する法律(盛土規制法)の概要(国土交通省)
擁壁の維持管理について(西宮市)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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