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夫「詰んだ…失敗しました」EV購入で絶望したタワマン30代夫婦→納車日に告げられた“残酷な現実”【一級建築士は見た】

  • 2026.10.15
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「『マンションでも充電コンセントは付けられますよ』と営業に言われて、すぐ付くものと思って電気自動車を買ったんです。納車の日に管理員さんから『総会の決議がないと付けられません』と言われてしまって…」

そう話すのは、5年前に新築のタワーマンション18階(2LDK・61㎡、約6,100万円)を買ったMさん(30代女性・会社員、夫と二人暮らし)です。結婚3年目の共働きで、いま妊娠6か月です。

この夏、妊娠を機に、通院と里帰りのために車を電気自動車に買い替えることにしました。マンション購入時の設備説明に充電設備はなく、駐車場は敷地内の平置き区画を1台借りています。

販売店の営業担当は「マンションでも、駐車場に充電用のコンセントを付ければ大丈夫ですよ。戸建てなら工事は半日です。マンションは、管理組合に申請してください」と説明しました。夫婦は、申請すれば自分たちの駐車場にも半日で付くものと思い込み、管理組合に聞かずに契約しました。

10月の納車の日、二人で管理員室に充電コンセントの工事を相談すると、「駐車場は共用部分なので、工事には総会の決議が要ります。次の定時総会は来年5月です」と言われました。半年以上、家で充電できないと分かり、夫は「詰んだ…」とつぶやきました。

「自分の家」の工事ではない

電気自動車は、夜のうちに自宅で充電しておく使い方が基本で、外の充電器は遠出のときの補助的なものです。戸建てなら、自分の敷地の中の工事なので、コンセントを付ける工事そのものは半日ほどで終わります。

マンションの駐車場は、区画を借りている人が使っていても、共用部分です。コンセントや配線、受変電設備(建物に電気を受け入れる設備)の工事は、個人ではなく管理組合の工事になります。国土交通省のマンション標準管理規約のコメントでは、充電器や配管の設置のように建物への加工が小さい工事や受変電設備の変更は、普通決議(出席者の過半数の賛成)で実施できる工事に当たります。

ただし普通決議でも総会は必要です。定時総会(年1回の総会)を待たず臨時総会を開く道もありますが、工事費と維持費の負担や電気代の精算をあらかじめ総会で決めておくのが望ましいため、理事会は電気容量の調査や見積もり、住民アンケートを重ねてから議案にします。検討から設置まで、半年から1年ほどかかることもあります。

国の充電インフラの補助金には、管理組合が申請者になる既存の分譲マンション向けの枠があり、自治体の補助もありますが、年度や自治体によって条件や上限が異なります。共用部分のコンセントは電気代を管理費で払っているため、無断で車の充電に使うことはできません。

「工事は半日」が、半年以上先に

充電場所は、片道15分の商業施設にある急速充電器になりました。週に1回ほど、30分間充電が終わるのを待ちます。妊娠中のMさんには、充電のためだけに出かけて待つ時間が体にこたえました。

「工事は半日」と聞いていた充電コンセントは、半年以上先になりました。営業担当の言葉自体は嘘ではありませんでしたが、マンションの手続きにかかる期間について説明が不足していました。「半日」は戸建ての一般的な目安であり、マンションでは、工事の前に管理組合の手続きが要るという前提が違っていたのです。

夫は「営業の言葉を信じて、マンションに聞かずに契約して、失敗しました」と言い、Mさんは「充電できる場所を確かめなかったのは、私も同じ」と応じました。駐車場の隅の共用コンセントも使えません。理事会に相談すると、「ほかにも希望者がいれば、議案として検討します」という返事でした。

希望者を集めて、総会の議案へ

Mさん夫婦は、理事会に要望書を出しました。工事費は使う人が負担し、電気代は充電カード(充電器を使うための会員カード)で使った分だけを払う形を提案しました。掲示板で希望者を募ると、ほかに2戸が手を挙げ、理事会は電気容量の調査と見積もりを始めました。来年5月の定時総会に、議案として出される見込みです。

国の補助金も、理事会が年度の条件を確かめたうえで申請を検討しています。

それまでは、夫が休日に充電を済ませ、Mさんが平日の通院で残量を気にせずに済むようにしました。管理組合に確かめなかったのは二人とも同じなので、どちらも責めていません。

電気自動車は、「充電できる場所」から選ぶ

電気自動車は静かで燃料代も抑えられ、妊娠中や子育て中の移動には心強い車です。マンションでも、管理組合の手続きを踏めば充電設備は付けられます。

一方で、駐車場は共用部分で、工事には総会の決議が必要です。だからこそ、電気自動車を選ぶなら、車を買う前に充電できる場所を確かめておくことが欠かせません。

・電気自動車は自宅での充電が基本。契約する前に、管理組合に充電設備の有無と設置の予定を確かめる
・「工事は半日」は戸建ての目安。マンションの駐車場は共用部分で、充電設備の工事には総会の決議が必要。費用と電気代の負担も総会で決める
・共用部分のコンセントを無断で充電に使うことはできない
・国の補助金は管理組合が申請者になる枠があり、自治体の補助もあるが、条件や上限は年度や自治体で異なる

電気自動車を選ぶ前に、管理員室で「充電設備の予定はありますか」と一度聞いてみてください。

参考:
「マンション標準管理規約」の改正について~所在等不明区分所有者への対策や管理情報の見える化等に向けた改正を行います~(国土交通省)
令和7年度 クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金(マンション向け案内)(一般社団法人次世代自動車振興センター)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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