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新築建築前、12万円をケチった夫「失敗しました…」30代夫婦が地震保険で直面した“約77万円の誤算”【一級建築士は見た】

  • 2026.10.14
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「耐震等級の評価書は12万円の別料金と聞いて、地震保険の割引なんて年に数千円だろうと見送ったんです。差額が年2万2,000円と知ったのは、保険を申し込んだときでした」

そう話すのは、2年前に郊外の分譲地に地元の工務店で注文住宅(4LDK・延床約108㎡/土地約150㎡、約4,500万円)を建てたJさん(30代女性・パート勤務、夫と子ども2人の4人暮らし)です。結婚8年目で、子どもは小学2年生と4歳です。

契約前の打ち合わせで、工務店の営業担当は「当社の家は全棟、耐震等級3相当の強さです」と説明しました。住宅性能評価書(国の制度で第三者機関が性能を評価した書類)は別料金で約12万円かかるとのこと。「評価書があれば地震保険の耐震等級割引が受けられます。ただ、構造の強さは評価書がなくても同じですから、安心です」という説明でした。

同席した設計担当は「評価書は建てるときに取るのが安く済みます。あとからだと検査が増えて高くなります」と勧めました。それでも夫婦は「保険の割引なんて年に数千円だろう」と考え、金額を確かめずに評価書を見送りました。

引き渡しの前に地震保険を申し込むと、代理店からは「評価書などの確認書類がないと、耐震等級割引は使えません。等級3なら保険料は半額です」と言われました。新築の評価書は着工前の申請と工事中の検査が前提で、完成間近では間に合いません。夫は「あとから取る方法を探せばいい」と、割引なしで契約しました。

地震保険は2年契約で、満期は11月です。9月に届いた更新案内で割引なしの金額を見て、差額が改めて気になりました。

「等級3」と「等級3相当」は、制度の上では別物

耐震等級は、住宅性能表示制度(住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく制度)の等級です。等級1は建築基準法と同じ強さ、等級2はその1.25倍、等級3は1.5倍の地震力に対して倒壊や崩壊をしない強さを示します。

ただし、制度の上で「等級3」と認められるのは、登録住宅性能評価機関(国に登録された第三者機関)が評価し、住宅性能評価書を交付した住宅です。「等級3相当」は、会社が自社の計算で等級3と同じ強さだと説明している状態で、制度の上では等級のない家と同じ扱いです。評価を受けるかどうかは任意で、費用もかかります。そのため「相当」は、不誠実な説明というわけではなく、評価の費用を抑えるための選択肢でもあります。

地震保険の耐震等級割引は、等級3なら50%、等級2なら30%、等級1なら10%です。割引には住宅性能評価書などの確認書類が必要で、会社独自の基準による「相当」は対象外です。必要な書類は保険会社によって異なります。

年2万2,000円、35年で約77万円

Jさんの家の地震保険は、建物1,500万円の補償で、保険料は年約4万4,000円です。耐震等級3の割引が使えれば半額の約2万2,000円で、差額は、ローンと同じ35年間で計算すると約77万円になります。

評価書の約12万円を惜しみ、さらに2年放っておいたことで、差額はすでに4万4,000円に積み上がっています。夫は「12万円をけちったうえに先延ばしにして、失敗しました」と言い、Jさんは「割引がいくらになるかを聞かずに決めたのは、私も同じ」と答えました。

計算書と図面を持って、評価機関へ

Jさん夫婦は、工務店から構造の計算書と図面を受け取り、登録住宅性能評価機関に相談しました。完成した住宅にも「既存住宅の住宅性能評価」の仕組みがあり、現況の検査と図面・計算書の審査で、耐震等級だけを評価してもらうこともできます。費用は約15万円で、評価機関によって異なります。

評価の結果、等級3の耐震性能が認められ、この10月、既存住宅の建設住宅性能評価書が交付されました。保険会社に確かめたところ、この評価書でも割引が使えるとのことで、11月の更新から適用される見込みです。15万円の費用は、7年ほどで回収できる計算です。

評価書の12万円は、割引額と並べて決める

等級3相当の家も、構造の強さは等級3と同じ水準で設計されています。

一方で、等級は書類があって初めて制度の上で認められ、保険の割引につながります。だからこそ、評価書を別料金と言われたら、その費用を地震保険の割引額と並べて考えておくことが欠かせません。割引額は地域や保険金額で変わるので、評価書を取るかどうかは、建てる人自身が費用と比べて決めるのがよいでしょう。

・耐震等級3は建築基準法の1.5倍の地震力に耐える強さ。ただし「等級」は登録住宅性能評価機関の評価書があって初めて認められる
・「等級3相当」は会社の自社計算の表現で、評価の費用を抑える選択肢でもある。ただし評価書がなければ地震保険の耐震等級割引(等級3で50%)は受けられない。必要書類は保険会社で異なる
・評価書は建築時で10万円台が目安で、割引額と比べて決める。新築の評価書は着工前の申請が前提
・完成後は既存住宅の性能評価になり、耐震等級だけの評価も選べるが、現況の検査が入り、費用は評価機関で異なる

「評価書は別料金です」と言われたら、見送る前に地震保険の割引額を一度計算してみてください。

参考:
地震などに対する強さ(構造の安定)(一般社団法人住宅性能評価・表示協会)
地震保険の耐震等級割引とは?確認書類や割引条件などを解説(ソニー損保)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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