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夫「失敗しました」25階の眺めが決め手の中古タワマン、購入から3年後に窓の外に現れた“誤算”【一級建築士は見た】

  • 2026.10.13
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「25階の眺めが気に入って買ったタワマンなのに、この秋から窓の外にゴンドラとネットが…。工事は14か月だそうです」

そう話すのは、3年前に中古のタワーマンション25階(築9年・2LDK・65㎡、約6,400万円)を買ったIさん(30代女性・会社員、夫と二人暮らし)です。結婚5年目の共働きで、二人とも週3日は在宅勤務です。

購入時の重要事項説明では、長期修繕計画(今後の修繕の時期と費用を見通した計画)も示され、「築12年目に1回目の大規模修繕を予定。外壁はゴンドラで施工し、工期は1年以上」と説明を受けていました。ただ、Iさん夫婦は「3年先の話で、上の階には関係が薄いだろう」と受け止めていました。Iさんが「工事の間、眺めはどうなるの?」と聞いても、夫は「25階まで足場は来ないよ」と笑っていたそうです。

この10月、築12年目の大規模修繕が始まりました。掲示された工程表には、工期14か月、バルコニーの使用禁止は面ごとに延べ3か月、外壁作業中は窓の外にゴンドラと落下防止のネット、と書かれています。

タワマンの修繕は、足場が組めないから長い

大規模修繕は、外壁のタイルや塗装、シーリング(外壁のつなぎ目のゴム状の材料)、バルコニーの防水などをまとめて直す工事です。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、12〜15年程度の周期を目安にしています。

低層や中層のマンションなら、建物の周りに枠組足場を組んで工事をします。ところが枠組足場は、高さ45mほどを超えると補強が必要になり、20階を超える建物では一般的に使えません。タワーマンションでは、屋上から吊り下げるゴンドラや、壁面に沿って上下する移動昇降式足場を使います。

ゴンドラは一度に作業できる人数が限られ、強風の日は止まります。そのため工期は1年を超えることが多く、足場の費用も総工事費の3〜5割を占め、工事費は低層のマンションより高くなります。

住む人への影響も、足場の工事とは違います。ゴンドラが自分の面に来ている間は、窓の外に作業員とネットがあり、バルコニーには出られません。塗装やシーリングの日は窓を開けられず、タイルの打診(たたいて浮きを調べる作業)や高圧洗浄の音が室内に届きます。作業員が窓の外に来るため、作業中は窓の施錠と目隠しも求められます。

25階の眺めが、ネットの向こうに

自分の面の作業中は、窓の外にネットが掛かります。25階から見えていた街並みは、網目の向こうにかすみました。在宅勤務の日にオンライン会議をしていると、窓の外にゴンドラが下りてきて、作業員と目が合ったこともあります。

その期間は延べ3か月ですが、ほかの期間も、ゴンドラの移動する音や窓を開けられない日が続きます。バルコニーの使用禁止中は、植木鉢や椅子をすべて室内に入れました。10月の強風で止まった日があり、工程表はすでに1週間ずれています。夫は「窓の外がネットになるなんて、聞いてない」とこぼしました。

Iさんが「それ、買うときに聞いたよ」と重要事項説明の書類を出すと、長期修繕計画には「12年目・工期1年以上・ゴンドラ施工」と、はっきり書かれています。「読んだのに、他人事だと思っていて、失敗しました」とIさんは振り返ります。350戸で工事費は約7億円、1戸あたりに直すと約200万円分ですが、修繕積立金でまかなえ、一時金の徴収はありませんでした。

工程表を読んで、暮らしをずらす

Iさん夫婦は、工程表を写真に撮り、自分の面の作業期間を確かめました。ゴンドラが自分の面に来る週は二人とも出社日に振り替えました。

窓を開けられない日は工程表で前もって分かるため、その週末は実家に泊まることにしています。

中古のタワマンは、次の修繕の「年」を見る

大規模修繕は、外壁や防水を直して建物を長持ちさせる、資産を守るための工事です。タワーマンションも、この工事を重ねて価値を保っています。

一方で、タワーマンションの修繕は足場が組めないぶん工期が長く、暮らしへの影響も長く続きます。だからこそ、中古のタワーマンションを買うときは、長期修繕計画で次の大規模修繕がいつ来るかを見ておくことが欠かせません。

重要事項説明で説明が義務づけられているのは、修繕積立金の額やこれまでの修繕の記録などで、次の大規模修繕の時期や工期は項目に入っていません。暮らしに関わることなので、Iさんのときのように仲介会社が伝えるほうが望ましい内容ですが、説明がないときは、買う側から長期修繕計画を見せてもらってください。

・大規模修繕の周期は12〜15年程度が目安(国土交通省の長期修繕計画作成ガイドライン)。中古なら、次の工事までの年数を長期修繕計画で確かめる
・20階を超える建物は枠組足場が一般に使えず、ゴンドラや移動昇降式足場で工事する。工期は1年を超えることが多く、費用も高くなる
・工事中は窓の外にネットとゴンドラ、バルコニーの使用禁止、窓を開けられない日がある。在宅勤務や外出の段取りを工程表で組み直す
・工事費は修繕積立金でまかなうのが基本。積立金の残高と計画を、購入前に見ておく

中古のタワマンを見るなら、長期修繕計画の「次の大規模修繕の年」を一度確かめてみてください。

参考:
「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の見直しについて(国土交通省)
宅地建物取引業法 法令改正・解釈について(国土交通省)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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