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彼「新築なのに…欠陥じゃないの?」入居半年の新築賃貸、押し入れの壁に白い点々…管理会社の回答は?【一級建築士は見た】

  • 2026.10.9
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「10月の冷え込んだ朝、押し入れの奥の段ボールを動かしたら、壁に白い点々があって…。この春に入居した、新築の部屋なのに」

そう話すのは、この春、新築の賃貸マンション2階(1LDK・45㎡、家賃11万円)に入居したFさん(20代女性・会社員、同棲中の彼と二人暮らし)です。彼とは同棲2年目で、二人とも会社勤めです。

入居時には、管理会社から「新築のマンションは、完成から1〜2年はコンクリートの水分が抜けきらず、湿気がこもりやすい。押し入れや家具の裏は、特に風を通してください」と案内を受けていました。ただ、引っ越しの片づけに追われ、その言葉はすぐに忘れてしまったのです。

寝室は北側で、押し入れは北側の外壁に沿って作られています。二人は布団を敷いて寝ており、朝は布団をそのまま押し入れにしまっていました。また、奥には引っ越しの段ボール2箱を半年間置いたままでした。

壁が12℃まで冷えると、空気の水分が水滴になる

結露は、暖かく湿った空気が冷たい面に触れて、水分が水滴に変わる現象です。室温20℃・湿度60%の空気なら、約12℃の面に触れると結露が始まります。この温度を露点(水滴ができ始める温度)といいます。

10月後半になると、朝の外気が10℃前後まで下がる日も出てきます。北側の外壁に接した押し入れの壁は、部屋の中でも冷えやすい場所です。扉を閉め切った押し入れは空気が動かず、壁の表面温度が露点を下回りやすくなります。

そこに湿気の元があると、結露は加速します。布団は寝ている間の汗を吸い、朝はまだ湿っています。それをすぐに押し入れへ入れれば、湿気は押し入れの中に閉じ込められます。新築のコンクリートから出る水分や、壁にぴったり寄せた段ボールも湿気をため込み、風通しを悪くする原因になります。

結露が続いた壁や布団には、カビが生えます。最初は白い点々で、放っておくと黒く広がります。

「新築なのに」と彼は言ったけれど

白い点々を見つけたFさんが布団を裏返すと、布団の裏側にも同じ点々が出ていました。壁に手を当てると、ひんやりと湿っています。夏の間は壁が冷えないため、結露は起きていませんでした。24時間換気は動かしていましたが、閉め切った押し入れの中までは風が届きません。

彼は「新築なのにカビが生えるなんて、建物の欠陥じゃないの」と言い、管理会社に連絡しました。管理会社の答えは「構造の欠陥ではなく、新築1年目の結露です。入居時にご案内したとおり、押し入れの中に風を通してください」というものでした。

さらに、結露に気づいたのに放置してカビを広げると、退去時に借主の負担になることがあると分かりました。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、結露を賃貸人に知らせず、拭き取りなどの手入れも怠って壁を傷めた場合は、通常の使用を超えた損耗と判断される場合が多いとしています。

これは、借主が負う善管注意義務(借りた部屋を、一般に求められる程度の注意を払って使う義務)に反したと考えられるためです。その場合、借主は原状回復(借主の責任で傷めた部分を直すこと)の費用の一部を負担することになります。負担する額は、壁紙などの価値が年数とともに下がることを踏まえ、経過年数に応じて軽くするのが、ガイドラインの考え方です。

Fさんは「段ボールを入れっぱなしにして、失敗しました」と振り返ります。ただ、今回のように白い点々が出始めた初期の段階なら、管理会社に知らせ、拭き取りなどの手入れを続けることで、責任を問われにくいと考えられます。

布団は1時間立てかけてからしまう

まず、壁の白い点々の写真を撮ってから消毒用エタノールで拭き取り、その写真を管理会社に送りました。点々は、拭き取ると消えていました。気づいた時点で知らせたことが、記録として残ります。布団は裏のカビが取れず、2万円で買い替えました。

押し入れからは段ボールを出し、床にすのこを敷いて、布団は朝1時間立てかけてからしまうことにしました。北側の壁からは荷物を5cm離し、扉は日中少し開けておきます。すのこと除湿剤で、費用は3,000円ほどでした。

朝の布団は彼の係、除湿剤の交換はFさんの係と決めました。その後は、冷え込んだ朝に壁を触っても、湿り気は出ていません。

押し入れの奥の壁は、10月に一度触ってみる

押し入れは、布団を収納して部屋を広く使え、来客用の寝具も置けます。扉を閉めれば、見た目もすっきりします。

一方で、閉め切った押し入れの奥の壁は、家の中でも冷えやすく、風の通らない場所です。だからこそ、冷え込みが始まる10月に、結露の初期サインを見つけておくことが欠かせません。

・室温20℃・湿度60%なら、約12℃の面で結露が始まる。北側の外壁に接した押し入れの壁は、10月後半から冷えやすい
・湿った布団をすぐにしまわない。段ボールや荷物を壁に寄せず、扉を少し開けて風を通す
・新築の建物は、完成から1〜2年はコンクリートの水分で湿気がこもりやすい。落ち着いたあとも、湿った布団と閉め切りが続けば結露は起きる
・結露に気づいたら拭き取り、賃貸なら管理会社に知らせる。初期のうちに知らせて手入れを続ければ、責任は問われにくい。放置してカビを広げると、退去時に借主の負担になることがある

冷え込んだ朝、押し入れの奥の壁を、一度手で触ってみてください。

参考:
結露防止性(YKK AP)
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について(国土交通省)
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のQ&A(国土交通省)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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