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「七夕に使うから笹を切らせてくれ」七夕の笹を切りに来た隣人。だが、20年の悩みを打ち明けた結果

  • 2026.9.29

境界を越えて広がった笹

隣の家の男性が、うちとの境界ぎわに笹を植えたのは、もう20年以上前のことです。

笹は年を追うごとに地下で根を伸ばし、気づけば、うちの庭の半分近くまで青い葉が広がっていました。

僕も何度かスコップで根を抜きましたが、翌年の春になると、また別の場所から細い芽が顔を出します。

そんなある年の6月、出かける支度をしていると玄関のチャイムが鳴りました。ドアを開けると、隣の男性が剪定ばさみを手に立っています。

「孫が七夕をやるんでね。お宅に伸びてる笹、切らせてくれ」

「ああ、はい。どうぞ」

僕は車の鍵を探しながら答えました。

ところが、顔を上げないまま返事をしたせいか、男性の声が急に大きくなりました。

「だから、七夕に使うから笹を切らせてくれって言ってるんだ。聞いてるのか」

怒鳴られて、僕もイラッとしてしまった。

「聞いてますよ。ただ、うちも20年、この笹には困っていたんです」

そう返すと、男性の表情が変わりました。

「だったら、もっと前に言ってくれないと分からんだろう」

庭に広がった笹を指して伝えたこと

男性の後ろには、小学生くらいの男の子が立っていました。両手には色紙の束を抱えています。

僕は玄関から庭へ出ると、境界からこちら側へ広がっている笹を手で示しました。

「これは、お宅のほうから入ってきた笹ですよね。七夕の分は、どうぞ切ってください。ただ、できれば根のほうも何とかしてもらえると助かります」

男性が何か言おうとしたとき、男の子が笹と男性の顔を交互に見ました。

「おじいちゃん、この笹、うちのなの?」

男性はすぐには答えませんでした。しばらく庭の笹を見つめたあと、小さな声で言いました。

「…七夕の分だけ、もらっていきます」

そして背の高い笹を選び、黙って切っていきました。

向かいの家の奥さんもこちらの様子に気づいたようで、小さく会釈していました。

数日後の朝、境界ぎわから土を掘る音が聞こえました。

庭へ出てみると、隣の息子さんが隣家側から笹の根を掘り起こしていました。

「長いあいだ、ご迷惑をおかけしました。父には私から話しました」

「ありがとうございます。これで少し安心できます」

その夜、妻に一部始終を話しました。

「最初は、なんて言われたの?」

「七夕に使うから笹を切らせてくれって」

七夕の夜、隣の庭には、うちの庭から切っていった笹が立っていました。色とりどりの短冊が揺れ、男の子の声が垣根ごしに聞こえてきます。

男性はこちらに気づくと、一度目をそらしたあと、小さく頭を下げました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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