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「父が亡くなって…」“腕時計”を売りにきた30代娘→数ヶ月後、大量の品物を抱えて再来店…買取のプロが見抜いた“異変”とは?

  • 2026.10.31

 

 

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは!リユース業界で買取窓口業務を担当していた、たるみくまおです。

「使う人もいないし、実家の片付け費用に充てよう」

そう思って、亡くなった親の遺品を急いで売却していませんか?実は、故人に借金があった場合、形見の時計や貴金属などの価値ある遺品を勝手に売ったり換金したりすると、法律上の「単純承認」とみなされ、相続放棄が認められなくなる恐れがあります。

良かれと思って行った遺品整理が、知らぬ間に故人の借金を引き継ぐ引き金になりかねないのです。

今回は古物商・査定の現場経験をもつわたしが、遺品売却に潜む相続の落とし穴と正しい対処法をお伝えします。

父の形見の時計を売ったAさん

ある日、30代くらいの女性Aさんが、一本の腕時計を持って来店されました。

「父が亡くなって……使う人もいないので」

Aさんはそう言って、お父様の形見だという腕時計をカウンターに置きました。落ち着いて見えましたが、気を張っている様子でした。

時計はそのまま売却。代金は実家の片付け費用に充てるつもりだと話していました。

ごく当たり前の遺品整理の一場面に見えました。

その後、督促状を持って再来店

相続開始を知ってから3か月以内という期限が迫る中、Aさんが再び来店されました。

前回とは様子がまるで違い、憔悴した表情で、カメラやアクセサリーなど、大量の品物を抱えていました。

事情をうかがうと、お父様宛てに督促状が届いたのだといいます。記載されていた請求額は、約500万円でした。

「少しでもお金を用意しないといけないと思って……」

Aさんは督促状を握ったまま、「今日中に売れますか」と何度も尋ねました。父の借金は自分が返さなければならない。そう思い込んでいるようでした。

時計の売却が「単純承認」にあたる可能性

話を聞くと、Aさんは弁護士にも相談していました。以前に時計を売ったことを伝えると、それが相続放棄の妨げになるかもしれない、と言われたそうです。

相続では、預貯金や不動産だけでなく、借金も一緒に引き継ぎます。借金のほうが多ければ、財産も借金も受け継がない「相続放棄」を選ぶこともできます。

ただ、遺品を売ったり、その代金を使ったりすると、「財産も借金も引き継ぐ意思がある」と見なされ、相続放棄が難しくなることがあるのです。これを法律上「単純承認」といいます(民法921条)。

Aさんは借金を知らないまま時計を売ってしまったことで、法律上は相続を承認した(単純承認にあたる)とみなされ、相続放棄の手続きが極めて難しくなりかねない状況に直面していました。

ただし「売却=放棄できない」ではない

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

とはいえ、時計を一本売っただけで、必ず相続放棄ができなくなるわけではありません。品物の価値や代金の使いみちなどによって、判断は異なります。すぐに判断できないときは、自分だけで決めず、早めに弁護士などへ相談することが大切です。

「もう放棄できないなら、残ったものを売って返すしかないと思ったんです」

そう話すAさんに、私は思わず声をかけました。

「今日は売らずに、持ち帰りませんか。売るかどうかは、弁護士にもう一度確認してからでも遅くないと思います」

ここで遺品を手放せば、状況がさらに不利になりかねません。黙って査定するわけにはいきませんでした。Aさんは少し迷ったあと、「……そうですね」と小さくうなずき、遺品を持ち帰っていきました。

「価値ある遺品の保管」が相続放棄の権利を守る

故人の遺品整理で価値のある貴金属や時計などを売却・換金すると、法律上の「単純承認」とみなされ、後から多額の借金が発覚しても相続放棄が難しくなるリスクがあります。

売却代金を片付け費用に充てるつもりでも、相続を認めたと判断されかねません。故人の負債状況が不明な場合は、信用情報機関への開示請求などで財産と債務の全体像を把握するまで、価値ある遺品を手元に保管しておくことが重要です。

自己判断で慌てて処分せず、売却や処分の判断に迷った段階で速やかに弁護士や司法書士などの専門家へ相談しましょう。


執筆:たるみくまお

リユース業界での買取窓口業務を経て、現在は技術商社に勤務する現役ビジネスマン兼Webライター。古物商許可証を保有し、ブランド品・高級時計の査定現場で数多くのお客様と向き合ってきた経験を持つ。現職では技術商社の最前線に身を置き、ITをはじめとする幅広い分野の知見を日々積み重ねている。また、過去に借金を抱えた経験から、マネーリテラシーの重要性を痛感し、現在も金融知識の習得を続けている。現場経験と公表資料をもとに、二次流通市場の裏側からお金のリアルな話まで、等身大の言葉で発信中。

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