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実家を売却しようとした50代娘→不動産会社「相場より500万円高く売れます」専任契約を結ぶが…半年後に起きた“予想外の悲劇”

  • 2026.10.21
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPで不動産と相続の相談を数多く受けてきた柴田です。

相続した実家を売るとき、多くの方が「できるだけ高く売りたい」と考えます。ただ、その気持ちにつけ込むような営業があることは、あまり知られていません。

今回は、相続した実家の売却で遠回りをした50代のAさんのお話です。

一番高い査定額の会社に売却を任せた

Aさん(50代女性)は、2024年3月にお父さんを亡くしました。

お母さんはすでに他界しており、一人娘のAさんが実家を相続しました。実家は1970年代に建てられた木造の一戸建てで、お父さんが亡くなるまで一人で暮らしていた家です。

Aさんは昨年の秋、不動産会社3社に査定を依頼しました。2社の査定額は3,000万円前後でしたが、1社だけが「うちなら3,500万円で売れます。相場より500万円高く売れますよ」と提案。Aさんはその会社と、ほかの会社には依頼しない「専任媒介契約」を結びました。

しかし、半年たっても買い手は見つかりません。担当者からは「価格を2,800万円まで下げましょう」と提案され、Aさんは青ざめた様子で相談に来られました。

高い査定額は「売れる価格」ではない

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

私はAさんに、不動産仲介の仕組みを説明しました。

不動産会社は、仲介手数料を売主と買主のそれぞれから受け取れます。1社が売主と買主の両方を担当する「両手仲介」なら、手数料は2倍です。私が計算してみると、2,800万円で売れた場合、売主が払う仲介手数料の上限は約99万円(税込)。両手仲介なら、会社は約198万円を受け取れます。

つまり不動産会社にとっては、3,500万円で売れて売主側だけの手数料約122万円を受け取るより、2,800万円に下げてでも両手で約198万円を受け取るほうが、利益は大きいのです。値下げで700万円を失うのは売主のAさんだけで、会社の取り分はむしろ増えます。

売却を1社に任せる専任媒介は、この両手仲介を狙いやすい契約です。そのため、相場より高い査定額を示して専任契約を取り、売れなければ値下げを提案する手法があり、業界では「高預かり」と呼ばれることもあります。査定額はあくまで会社の見込みで、その価格で売れることを約束するものではありません。

専任媒介の弱点は「売主から見えない」こと

さらに注意したいのが「囲い込み」です。ほかの不動産会社から買い手の紹介があっても「商談中です」などと断り、自社で買い手を見つけて両手仲介にしようとする行為を指します。

専任媒介や専属専任媒介を結ぶと、不動産会社には物件を不動産流通の情報網「レインズ」に登録する義務があります。ただし、ほかの会社から問い合わせがあったかどうか、その問い合わせを断っていないかまでは、売主の側から確かめる手立てがほとんどありません。情報を1社に預ける専任媒介は、登録や報告の義務がある反面、この「見えなさ」が大きなデメリットなのです。

売主の利益より自社の利益を優先する会社に当たると、売却価格が下がったり、売却期間が延びたりします。損をするのは売主自身です。だからこそ、どの会社に任せるかが何より大切になります。

それでも、売主にできる確認はあります。2025年1月からは、レインズへの取引状況の登録が義務になり、事実と異なる登録は行政の指示処分の対象とされました。売主自身も、登録証明書の二次元コードから専用画面に入り、「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のどれになっているかを確認できます。

Aさんが確認したところ、状況は「公開中」でした。それでも内覧の希望がほとんどなかったのは、価格が相場から離れすぎていたため、と考えられます。

期限のある特例にも追われる

Aさんのケースでもう一つ心配だったのが、税金の特例です。

相続した実家が1981年5月31日以前に建てられた一戸建てで、亡くなった親が一人で住んでいたなどの条件を満たすと、売却益から最高3,000万円を差し引ける「空き家の特例」が使えます(相続人が3人以上なら2,000万円)。

ただし、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件で、Aさんの場合は2027年12月31日が期限です。耐震リフォームや取り壊しも必要ですが、2024年以降の売却では、売った年の翌年2月15日までに買主が行う場合も対象になります。

私が計算してみると、2,800万円で売れたとして、取得費がわからないため売却価格の5%とし、仲介手数料を差し引くと、売却益は約2,560万円です。特例が使えれば税金はかかりませんが、使えなければ約520万円の税金がかかります。値下げを重ねて売れない期間が長引けば、この期限にも追われることになるのです。

まとめ

Aさんは2回目の契約期間が終わるタイミングで専任媒介を更新せず、相場に近い査定を出した2社と、複数の会社に同時に依頼できる一般媒介契約を結び直しました。価格を2,980万円に設定し直したところ、2か月ほどで買い手が見つかったそうです。「高い数字を言ってくれた会社が、一番いい会社だと思い込んでいました」と話していました。

査定額の高さだけで選ばず、価格の根拠をきちんと説明してくれる、信頼できる不動産会社を見つけてください。そして専任で任せたら、レインズの画面で販売状況を自分の目で確かめましょう。


執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,500記事以上の執筆実績あり。

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