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急遽入院することになった70代父→“合計2,500万円の金融資産”を保有しているが…入院後、家族を待っていた“想定外の落とし穴”

  • 2026.10.18
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは!元証券会社勤務の斎藤義行です。

親が長年築いてきた資産があっても、突然の入院や認知機能の低下によって、家族が必要な医療費や介護費用すら引き出せなくなるケースが近年増えています。高齢期における資産管理では、本人の意思確認が行えない状態になると、口座の出金や保有銘柄の売却に強い制限がかかるためです。

本記事では、70代の父親が急遽入院した事例をもとに、家族が直面する資産管理の課題と、事前・事後に講じるべき具体的な対策を解説します。

家族が直面する「資産状況の不透明さ」

72歳の父が急遽入院した際、長男が実家を整理すると、合計2,500万円にのぼる複数の株式や投資信託の取引報告書が発見されました。男性は定年退職後、年金と預貯金で暮らしながら、日経新聞やインターネットで情報を集めて自ら成長株や高配当株などの運用を続けていました。

しかし、自身で管理できるうちは家族に明かす必要はないという考えから、資産の具体的な内訳や運用方針を家族に伝えていませんでした。その結果、残された家族は以下の判断に頭を悩ませることになりました。

まず、約300万円あるMRF(マネー・リザーブ・ファンド)残高と、数十種類の銘柄。書類を見ただけでは、現金の使途はわかりませんでした。また、どの銘柄を長期保有し、どれを緊急時の換金対象と想定していたのか意図が掴めず、保有銘柄の売却優先度も判断できません。さらに、高額な医療費や介護費用に対応するため、どの資産から優先的に換金すべきか判断できず、手元の資金繰りが停滞して家族が身動きを取れなくなったのです。

認知機能低下と口座凍結のリスク

証券会社などの金融機関では、顧客の権利保護を目的として、出金や取引の際に本人の明確な意思確認を義務付けています。そのため、病状の悪化や認知機能の低下により本人の意思疎通が困難になると、家族であっても口座からの出金や売却手続きが制限されます。

また、医療費や施設入居費用の工面を優先するあまり、相場の急落時や底値付近で、含み損を抱えた銘柄を不本意なタイミングで機械的に売却せざるを得ず、資産の損失を確定させてしまうケースも少なくありません。

事前のリスク回避策と「代理人制度」の活用

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こうした口座凍結や予期せぬ損失を防ぐ手段として、金融機関が提供する「代理人制度」や「法的な仕組みの活用」が挙げられます。

一つ目は証券会社の代理人制度(例:予約型代理人)です。これは本人の判断能力が十分なうちに家族などを代理人として登録しておく制度であり、本人の判断能力が低下した際、所定の手続きを経ることで代理人が売却や出金を行えるようになります(購入取引は対象外など、利用条件は金融機関によって異なります)。

二つ目は成年後見制度です。成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。

法定後見は、本人の判断能力が不十分になった後に、家族などが家庭裁判所へ申し立て、後見人等を選任してもらう制度です。すでに認知症が進んで口座が凍結された場合でも利用でき、後見人が本人に代わって出金や売却などの財産管理を行います。ただし、後見人は家庭裁判所が選ぶため、家族が選ばれるとは限りません。また、原則として本人が亡くなるまで続き、専門職が選ばれた場合は継続的に報酬がかかります。

一方、任意後見は、本人の判断能力が十分なうちに、将来の後見人と支援内容を自分で決めて公正証書で契約しておく制度です。

証券会社の代理人制度と任意後見は、いずれも本人の判断能力が十分なうちでなければ手続きできません。家族の負担を軽くするためには、元気なうちに確認・手続きを進めておくことが大切です。

事故を防ぐための「情報共有」と注意点

高齢期の金融資産を守り、家族間でのトラブルや資金の停滞を防ぐためには、本人が健全なうちに重要な情報を整理して共有しておくことが推奨されます。

具体的には、利用中の証券会社や銀行の支店名・連絡先といった金融機関の口座情報、株式・投資信託・預貯金などの保有資産の概要、当面動かせる資金として生活費や医療費に充てる予定の現金、そして万が一の際に優先して売却する資産などの今後の運用・換金方針をあらかじめ家族間で共有しておくことが大切です。

なお、家族であってもIDやパスワードを用いて本人になりすまして取引を行う行為は、金融機関の規約違反となります。トラブルを避け、本人が築いた大切な財産を適切に守るためにも、事前の情報共有と正規の手続き準備が重要です。

まとめ

本人の意思能力が明確であれば、急な入院時であっても代理人制度の手続きを完了させることで、将来の認知機能低下に伴う口座凍結リスクに対応可能です。すでに判断能力が低下している場合は、法定後見制度の利用を家庭裁判所に申し立てる方法があります。

高齢期における資産管理は、本人だけの問題ではなく家族全体の課題となります。万が一の事態に備え、本人が元気なうちに金融機関の制度を確認し、口座情報や運用方針を家族間で共有しておくことが大切です。


執筆:斎藤義行(元証券会社勤務)


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