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「夫も亡くなったし」“貸金庫”の中身を取り出した60代女性→しかし、銀行員から告げられた“思わぬ問題”に「知りませんでした…」

  • 2026.10.20
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

元金融機関OLでFPのかきまりです。

今回ご紹介するのは、夫名義の貸金庫を妻が日常的に管理していたことで、夫の死亡後に思わぬ問題が生じたケースです。

Sさん(60代女性)は夫が亡くなり、相続手続きを進めることになりました。

遺産分割協議書は司法書士に依頼して作成してもらうことにしたため、Sさんは遺産分割協議書を作成するために必要な夫名義の通帳を取り出そうと、自分で貸金庫を開けました。

そして、通帳を取り出すついでに、「もう夫も亡くなったし、この機会に」と、貸金庫の中身をすべて取り出してしまったそうです。

Sさんにとっては、必要なものを取り出して貸金庫を空にしただけ。もう使わない貸金庫なのだから、契約を残しておく必要もないと思っていました。

「使っていないのに手数料を払うのはもったいない」

貸金庫の中身をすべて取り出したSさん。あとは鍵を銀行へ返して、解約すればいいと思っていました。

「中には何も入っていないのに、手数料を払い続けるのはもったいないから、もう使わないし早く返してしまおう」

そんな、ごく自然な感覚だったそうです。

そこで後日、Sさんは貸金庫の鍵を返すため、銀行の窓口を訪れました。Sさんにとっては預金等の相続手続きをしに行ったつもりではありません。ただ、使わなくなった貸金庫を解約して、余計な手数料がかからないようにしたかったのです。

ところが、窓口で夫が亡くなったことを伝え、貸金庫の鍵を返そうとしたところ、担当者から貸金庫を開けた経緯について確認されました。

そこでSさんが、「夫が亡くなったので、通帳を取り出すために開けたんです。そのときに中のものも全部出しました」と話したことで、思わぬ問題が発覚します。

夫婦でも自由に開けられるとは限らない

担当者からは、夫が亡くなった後にSさんが単独で貸金庫を開け、中身をすべて取り出していたことについて、相続手続き上トラブルにつながる可能性があると説明されました。

貸金庫は、金融機関と契約者との間で結ばれる契約です。夫婦であっても、貸金庫の契約者が夫であれば、妻が当然に自由に開閉できるとは限りません。金融機関によって取扱いは異なりますが、契約者本人以外が利用する場合には、あらかじめ代理人としての届出など、所定の手続きが必要になることがあります。

Sさんの場合、夫の貸金庫を日常的に管理していたものの、妻を代理人として届け出る手続きをしていなかったそうです。そのため、夫が亡くなった後も、それまでと同じ感覚で自分で貸金庫を開けてしまいました。

しかし、契約者が亡くなった後の貸金庫には、相続財産が保管されている可能性があります。「通帳を取り出すだけだから」「中身を整理するだけだから」と自己判断せず、まず金融機関に相談することが大切です。

「主人、古いお金を集めるのが好きでね」

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

貸金庫の中身について話を聞かれたSさんは、夫のことを懐かしむように、こんな話を始めました。

「主人、昔から古いお金を集めるのが好きでね。銀行の窓口に行ったときなんかも、古い紙幣や硬貨があると『これ、取っておいて』って言ってたんですよ」

「諭吉から新しいお札に代わるときもね。諭吉の新札を束で確保して、貸金庫に入れてたんです」

Sさんにとっては、夫が長年楽しんでいた趣味の一つ。貸金庫の中にそうしたお金が保管されていることも知っていました。

「主人、そういうのが好きだったんですよ」

夫との思い出を振り返るように話していたSさんでしたが、具体的に金額を確認すると、思わぬ金額になることが分かりました。

旧紙幣や旧硬貨、単純計算でも約1,000万円

貸金庫に保管されていた旧紙幣や旧硬貨は、プレミアなどを考慮せず、額面を単純に計算しただけでも、およそ1,000万円。夫が所有していたものであれば、これらも相続財産として扱う必要があります。また、相続税の申告が必要となる場合には、こうした財産も含めて相続財産全体を把握し、適切に評価する必要があります。

なお、貸金庫は本来、現金などの保管を目的としたものではなく、金融機関の規定によって現金の保管を禁止している場合があります。保管できるものについては、金融機関ごとの規定を確認する必要があります。

それでも、実際に貸金庫の中から多額の現金や旧紙幣、硬貨などが見つかるケースがあります。Sさんにとっては、夫が趣味で集めていた「古いお金」。何気ない思い出話のつもりでした。しかし、それが相続手続きを進めるうえで、決して見過ごすことのできない財産だったのです。

「そんな大切なものだったとは、知りませんでした…」とSさんは話します。

「早く解約したい」が思わぬ問題に

今回のSさんは、財産を隠そうとしたわけでも、誰かに知られないように持ち出したわけでもありません。

「通帳を取り出したい」
「もう使わないから貸金庫を解約したい」
「使っていないのに手数料を払うのはもったいない」

そんな、ごく身近な理由から貸金庫を開け、中身を取り出してしまったのです。

今回は、すでに司法書士に相続手続きを依頼していたこともあり、窓口職員から、貸金庫から持ち出したものをすべて報告するようSさんに促しました。

その結果、持ち出した財産についても確認・整理することができ、大きなトラブルにはならずに解決することができました。

しかし、相続人同士の関係性によっては、「なぜ勝手に貸金庫を開けたのか」「ほかにも何か持ち出していないのか」と疑われるなど、本来なら必要のなかったトラブルに発展する可能性もあります。

貸金庫を利用している家族が亡くなった場合は、「通帳を取り出すだけだから」「今まで自分が使っていたから」「もう使わないから解約したい」と自己判断せず、まず金融機関や相続手続きを依頼している専門家に相談することが大切です。

何気ない行動が、相続人同士の疑念やトラブルにつながらないようにするためにも、亡くなった後の貸金庫は、通常の預金口座以上に慎重に扱いたいものです。


執筆:かきまり|元金融OL・現役FP
金融機関で14年間勤務した後、Webライターに転身。銀行業務、保険業務では、預金や資産運用、保険商品の提案をはじめ、相続対策や資産形成、ライフプランに関するアドバイスなど、多くのお客様の相談に携わってきた。専門的な内容も読者目線でかみ砕いて伝え、「読んで終わり」ではなく、実際の行動につながる実用的なコンテンツを目指している。FP2級/AFP資格保有。


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