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夫を亡くした68歳妻→「夫の年金の4分の3がもらえる」遺族年金を請求するが…後日、年金事務所で告げられた“60万円”の大誤算

  • 2026.10.26
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出典元:PIXTA(※画像はイメージです)

大学卒業後、国内大手生命保険会社に35年間勤務し、営業や営業所長、企画、事務などを経験してきた「あしふみ」です。

「夫に万一のことがあっても、夫の年金の4分の3が遺族年金として受け取れる」

そう聞いて、安心している方も多いのではないでしょうか。ところが、妻自身にも厚生年金がある場合、その4分の3がそのまま上乗せされるとは限りません。

今回は、夫を亡くした68歳女性が、年金事務所で初めて遺族年金の仕組みを知った事例をご紹介します。個人が特定されないよう、内容の一部を変更しています。

※文中の年金額は、仕組みを説明するための例です。

「4分の3」を前提にした保険の見直し

Aさん(仮名・68歳)は、結婚前と子育てが落ち着いてからの約20年、会社員として働いていました。

今は自分の老齢厚生年金を年60万円受け取っています。夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)は年120万円でした。

数年前、夫婦で生命保険を見直したとき、Aさんはこう考えました。

「夫に何かあっても、120万円の4分の3、90万円が私の年金に上乗せされる。子どもも独立したし、保障はそこまでいらない」

保険料の負担も考え、夫の死亡保険金は300万円まで減らしました。

年金事務所で聞いた「30万円」

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

その夫が、72歳で亡くなります。葬儀を終え、Aさんは年金事務所へ手続きに向かいました。

担当者はこう説明します。

「Aさまはご自身の老齢厚生年金をお受け取りですので、まずそちらが全額支給されます。遺族厚生年金は、その額を上回る部分の支給となり、年間でおよそ30万円になります」

「一体なぜ…90万円ではないのですか?4分の3がもらえると聞いていたのですが…」

さらに、夫の老齢基礎年金は支給が止まり、対象となる子(18歳になった年度の末日までの子など)がいないため、遺族基礎年金も受け取れません。世帯の年金収入は、次のように半分になりました(夫婦の老齢基礎年金をそれぞれ年80万円とした場合。税・社会保険料を差し引く前)。

夫婦2人のとき:夫200万円(80万円+120万円)+妻140万円(80万円+60万円)=340万円

夫の死後:老齢基礎年金80万円+老齢厚生年金60万円+遺族厚生年金30万円=170万円

Aさんが思い描いていたのは「80万円+60万円+90万円=230万円」。それより年に60万円少ない計算です。

「働いて年金を納めてきた分、かえって損をしたような気がしました」とAさんは話します。

65歳以降は「自分の年金が先」

65歳以上で、自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金の両方を受け取れる場合、仕組みは次のようになっています。

  1. 自分の老齢厚生年金は全額支給される
  2. 遺族厚生年金の額は、次の①②のうち高いほうになる
  3. 実際に支給されるのは、2の額から自分の老齢厚生年金を差し引いた残り

①亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)×4分の3
②①の額×3分の2+自分の老齢厚生年金(加給年金額を除く)×2分の1

Aさんの場合に当てはめると、次のようになります。

①120万円×4分の3=90万円
②90万円×3分の2+60万円×2分の1=60万円+30万円=90万円

支給額:90万円(①②の高いほう。今回は同額)−60万円=30万円

 今回の例では、自分の老齢厚生年金60万円と遺族厚生年金30万円の合計が90万円。これとは別に、自分の老齢基礎年金を受け取ります。「4分の3」がそのまま上乗せされるわけではなく、自分の厚生年金が多い人ほど、遺族厚生年金として支給される額は少なくなります。

この「自分の老齢厚生年金を先に支給する」仕組みは、平成19年4月から取り入れられたものです。自分が保険料を納めて積み上げた年金を、まず受け取るという考え方に基づいています。なお、それより前に遺族厚生年金を受け取る権利があり、その時点で65歳以上だった方には、以前の仕組みが適用されます。

同じ「妻」でも受け取る額は違う

もしAさんに厚生年金の加入歴がなければ、遺族厚生年金として90万円が支給されていたことになります。

加入歴のあるAさんも、自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金を合わせて90万円。今回の例では、厚生年金に加入していたために、夫を亡くしたあとの厚生年金部分の合計が減ったわけではありません。 

保険を見直す前に、遺族年金の確認を

Aさんはその後、預貯金の取り崩し計画を立て直し、生活費の見直しを進めています。夫が亡くなった月の分までの年金は、未支給年金として請求できることも、手続きの際に知ったそうです。

「保険を減らしたこと自体より、正しい額を知らずに決めたことを後悔しています」とAさんは振り返ります。夫婦で家計や保険を考えるときは、次の点を確認しておきましょう。

  1. 夫婦それぞれの老齢厚生年金の額:受給中の人は、ねんきんネットや年金額改定通知書などで確認できる
  2. 遺族年金の見込み額:自分の年金と合わせて、実際にいくら支給されるか年金事務所で相談する
  3. 世帯収入の変化:どちらかが亡くなったあと、年金収入がいくらになるか

遺族年金の「割合」ではなく、自分の場合の「金額」を知っておくこと。それが、いざというときに「思っていたのと違った」と慌てないための備えになります。


※遺族年金の支給額は、亡くなった方とご自身の年金の加入歴、受給状況、生年月日などによって異なります。詳しくは日本年金機構のホームページをご確認いただくか、年金事務所へお問い合わせください

執筆:あしふみ

大学卒業後、国内大手生命保険会社に35年間勤務。個人・法人営業、営業所長、企画・販売促進、事務部門などを経験。FP2級の知識と保険実務の経験を生かし、保険や家計に関する情報を分かりやすく伝えている。

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