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「本当に大丈夫なのかしら…」夫の“保険金2,000万円”を受け取る予定の60代妻、相続について調べて浮き彫りになった“ある不安”

  • 2026.10.23
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの小泉です。

家族に財産を残すため、生命保険に加入している方も多いのではないでしょうか。「自分にもしものことがあっても、保険金が入れば家族は安心」と考えがちです。

しかし、死亡保険金があれば、相続も円満に進むとは限りません。今回は、63歳のAさんの事例をもとに死亡保険金と遺産の違いについて解説します。

夫にもしものことがあっても、2,000万円が入る

「夫にもしものことがあっても、私が2,000万円の死亡保険金を受け取れる。これなら子どもたちも困らないはずです」そう話すのは、63歳のAさんです。

夫婦には35歳と32歳の子どもが2人。夫は、自分が亡くなった場合に妻であるAさんが2,000万円を受け取る生命保険に加入しています。

夫の預貯金や自宅の持分など、相続の対象となる財産は3,500万円ほど。Aさんは、死亡保険金があれば、将来の相続も大きな問題にはならないと考えていました。

ところが、相続の基本的な仕組みを確認するうちに、Aさんは思いがけない事実に気づきます。

「死亡保険金2,000万円と、夫の遺産3,500万円は、同じように分けるものではないのですね」

死亡保険金は「遺産」とは別

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

夫が保険料を負担し、夫が被保険者、妻Aさんが契約上の受取人という一般的なケースでは、死亡保険金は原則としてAさん自身の権利として受け取るものです。

そのため、夫名義の預貯金や夫が所有する不動産の持分などとは区別され、死亡保険金2,000万円そのものを、妻と子ども2人で遺産分割するわけではありません。

一方、夫の相続人が妻と子ども2人であれば、法定相続分は妻が2分の1、子どもはそれぞれ4分の1です。仮に、夫の相続財産3,500万円を法定相続分どおりに分けると、妻は1,750万円、子どもはそれぞれ875万円となります。

もちろん、これは法定相続分に基づく計算例です。相続人全員が合意すれば異なる割合で分けることもできますし、遺言がある場合には、その内容や遺留分なども踏まえて考える必要があります。

Aさんは不安そうに話します。

「私は保険金2,000万円を受け取れるけれど、子どもたちは遺産から875万円ずつという考え方もあるのですね。これで本当に大丈夫なのかしら…」

「保険金があるから安心」とは限らない

死亡保険金は、原則として遺産分割の対象ではありません。

しかし、相続と一切関係がないわけでもありません。

最高裁判所は、死亡保険金について原則として特別受益には当たらないとしながらも、保険金の額や遺産総額に占める割合、被相続人との同居や介護への貢献、各相続人の生活状況などを総合的に考慮し、相続人間の不公平が著しいといえる「特段の事情」がある場合には、特別受益に準じて扱う余地を認めています。

ただし、死亡保険金を受け取ったからといって、必ず遺産分割で調整されるわけではありません。

つまり、「死亡保険金は遺産分割の対象ではない」ことと、「死亡保険金をめぐって相続人間の問題が起こらない」ことは別なのです。

 相続税では「みなし相続財産」に

さらに注意したいのが、税金の扱いです。

夫が保険料を負担し、夫が被保険者、妻が受取人というケースでは、死亡保険金は相続税法上、「みなし相続財産」となり、相続税の課税対象になります。ただし、相続人が受け取る死亡保険金には、「500万円×法定相続人の数」という非課税限度額があります。

今回のように法定相続人が妻と子ども2人の計3人であれば、非課税限度額は1,500万円です。妻が2,000万円を受け取る場合、ほかに死亡保険金を受け取る相続人がいないという前提では、限度額を差し引いた500万円が相続税の課税価格に算入されます。

ただし、この500万円にそのまま税率を掛けて税額を求めるわけではありません。相続税は、死亡保険金だけでなく、ほかの相続財産や一定の生前贈与なども含めて計算します。

実際に相続税が発生するか、申告が必要かどうかは、財産の内容や金額などによって異なります。個別の税額や申告の要否については、税理士に確認することが大切です。

また、保険料を誰が負担し、誰が被保険者で、誰が保険金を受け取るのかによって、所得税・相続税・贈与税のいずれが関係するかも変わります。

保険だけで「相続対策」は完結しない

Aさんが気づいたのは、2,000万円の死亡保険金が役に立たないということではありません。「保険金があれば、相続の問題も自然に解決する」と考えていたことでした。

家族間の行き違いを防ぐためには、保険金だけでなく、遺産全体についても確認しておくことが大切です。

・死亡保険金の受取人は誰になっているか
・預貯金や不動産など、相続の対象となる財産はいくらあるか
・その財産を誰に、どのように残したいのか
・必要に応じて、遺言などで希望を整理できているか

63歳の今なら、元気なうちに家族の将来について考え、準備を進めることができます。

死亡保険金は、残された家族の生活資金などを準備する有効な手段の一つです。しかし、保険金を用意しただけで、家族間の合意まで整ったことにはなりません。

保険と遺産がそれぞれどのように扱われるのかを知り、必要に応じて税理士や弁護士などの専門家にも相談すること。それが、将来の思わぬ行き違いを防ぐ第一歩になるのです。


執筆・監修:小泉@社労士ライター

20年以上の社労士経験を通じて、多くの相談者から「こんな制度があるとは知らなかった」「もっと早く相談しておけばよかった」という声を聞いてきた経験から、専門知識を、必要とする人に、正しく、わかりやすく届けることを大切にしている。社会保険・労働保険、公的年金をはじめ、暮らしや仕事に関わる制度について、専門家としての正確性と、生活者目線のわかりやすさを両立した情報を執筆・発信。保有資格は、社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士など。

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