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500万円で“高配当株”を購入→3年で評価額が800万円に。「値上がりしたうちに売ろう」売却するが…60代女性を襲った“思わぬ誤算”

  • 2026.10.20
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPで資産運用と老後資金の相談を数多く受けてきた柴田です。

「株は値上がりしたら売って、利益を得るもの」。投資の世界でよく聞く言葉で、そのようなイメージを持つ方もいるでしょう。ただ、その考え方が、投資の目的と合っていないことがあります。

今回は、配当を目当てに高配当株を買った60代のAさんのお話です。

配当で年金の不足を補う計画

Aさん(60代女性)は、ご主人の退職をきっかけに、老後の家計を見直しました。

夫婦の年金だけでは、毎月3万円ほど足りません。そこで2022年、退職金のうち500万円を使い、特定口座で配当利回りが平均4.5%ほどの高配当株を数銘柄買いました。業績が安定していて、長く配当を出し続けている会社を中心に選んだそうです。

年間の配当は税引前で約22万5,000円。税金を引いても約18万円が入り、毎月の不足分の半分ほどを補える計算でした。

その後、株価は順調に上がり、3年後には評価額が約800万円に。「値上がりしたうちに売るのが正解」と考えたAさんは、すべて売却して利益を確定しました。

「取り崩せば足りる」はずだった

Aさんは、売れば配当が入らなくなることは承知のうえでした。800万円を年30万円ずつ取り崩せば25年以上はもつ計算で、配当の約18万円より多く使えると考えたのです。

ところが売却から半年ほどたつと、Aさんは落ち着かなくなりました。取り崩すたびに残高が減っていき、「このお金が尽きたらどうするのか」と不安になったのです(人間心理として、資産がどんどん減っていくと不安になるものです)。配当なら元本を減らさずに受け取れていたことに気づき、同じ銘柄の株価を調べると、売ったときよりさらに上がっていました。どうすればよいのかわからなくなったAさんは、相談に来られました。

高配当株は「持ち続けて受け取る」投資

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

私はAさんに、高配当株投資の目的を確認しました。

高配当株投資は、株を持ち続けて、毎年の配当(インカム)を受け取ることが目的の投資です。値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う投資とは、考え方が違います。値上がりしたら売るという判断は、値上がり益を狙う投資なら合理的ですが、配当で家計を補う目的とはかみ合っていませんでした。

高配当株を売るのは、配当が大きく減りそうなときや、まとまったお金が必要になったときなど、目的に合った理由がある場合に限って考えるとよいでしょう。

しかも、株価が上がったあとに買い直すと、配当利回りは下がります。配当利回りは「1株あたりの配当÷株価」で計算するため、配当が同じでも、株価が上がるほど利回りは低くなるからです。

売却益の税金で「株数」が減る

私が計算してみると、Aさんの売却益は約300万円で、約61万円の税金が引かれていました。手元に残ったのは約739万円です。

配当額が当時のままで、売ったときと同じ株価で買い直せたとしても、持てる株数は約8%減ります。受け取れる配当も、税引前で約20万8,000円に減る計算です。実際には株価がさらに上がっていたため、買い戻せる株数はもっと少なくなります。

さらに、売却から買い直すまでの間、配当はゼロで、取り崩した分だけ元本が減っていきます。毎年18万円をあてにしていた家計にとって、この空白は小さくありません。

もし売らずに持ち続けていれば、株価が上がっても下がっても、配当が続く限り毎年約18万円を受け取れていました。もちろん、業績が悪化すれば配当が減るリスクはあります。それでも、配当で家計を補うという目的に照らせば、見るべきは株価より配当が続くかどうかだったのです。

まとめ

Aさんは、売ったお金の一部で高配当株を少しずつ買い直し、残りは家計の不足分に充てる預金として置いておくことにしました。「取り崩せば足りると思っていましたが、減っていく残高を見るのは想像以上に不安でした」と話していました。

投資を始めるときは、「何のために投資するのか」を決めておくことが大切です。配当で家計を補う目的なら、株価の上げ下げに一喜一憂せず、配当がきちんと続いているかどうかを見ていきましょう。


参考:
No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)(国税庁)
No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度(国税庁)
NISAを知る(金融庁)

執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,500記事以上の執筆実績あり。

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