1. トップ
  2. ビジネス・マネー
  3. 「一体どういうこと?!」夫の年金に“年42万円”上乗せされていた60代妻、年金事務所で告げられた思わぬ事実に“驚愕したワケ”

「一体どういうこと?!」夫の年金に“年42万円”上乗せされていた60代妻、年金事務所で告げられた思わぬ事実に“驚愕したワケ”

  • 2026.10.20
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPで年金と老後のお金の相談を数多く受けてきた柴田です。

「年下の妻がいると、夫の年金に家族手当のようなお金が上乗せされる」。加給年金のことを、そう聞いたことがある方もいるでしょう。ただし、この上乗せは、妻の働き方によって途中で止まることがあります。

今回は、パートで長く働いてきた60代のAさんのお話です。

「あと2年は上乗せがある」と思っていた

Aさん(60代女性)は、3歳年上のご主人と二人暮らしです。会社員だったご主人は昨年65歳になりました。

年金事務所で手続きをしたとき、「奥さまが65歳になるまでは、加給年金として年42万円ほどが上乗せされます」と説明を受けていました。

Aさん自身は、結婚前に会社員として8年働きました。子育てが落ち着いてからはスーパーのパートで働き、厚生年金にも加入しています。

今年63歳になったAさんは、自分の年金を繰上げ請求するか相談するため、年金事務所を訪れました。そこで告げられたのは、「奥さまが年金を受け取る権利を得たので、ご主人の加給年金は止まります」という言葉でした。

「一体どういうこと?!」驚いたAさんは、私の元に相談にこられました。

妻の厚生年金が20年以上だと加給年金は止まる

相談に来られたAさんに、私は加給年金の仕組みを説明しました。

加給年金は、厚生年金に20年以上加入した人が65歳になったとき、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に、年金に加算されるお金です。2026年度の金額は、特別加算を含めて年42万3,700円です。

ただし、配偶者自身が厚生年金に20年以上加入していて、老齢厚生年金を受け取る権利を得ると、加給年金は支給停止になります。

加給年金には、配偶者が自分の年金で暮らせるようになるまでの「家族手当」のような性格があります。そのため、配偶者が長く厚生年金に加入して、自分の老齢厚生年金を受け取れるようになると、上乗せの役目は終わったとみなされるのです。

Aさんは会社員時代の8年とパートの12年を合わせて、厚生年金の加入期間が20年以上になっていました。そのため、63歳で自分の年金(特別支給の老齢厚生年金)を受け取る権利ができた時点で、ご主人の加給年金が止まるのです。

さらに2022年4月からは、配偶者が働いていて自分の年金が全額止まっている場合でも、受け取る権利があれば加給年金は止まる扱いに変わりました。Aさんのように、働きながら特別支給の老齢厚生年金を受け取る場合も同じです。

繰上げ請求で世帯の年金はどう変わるか

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

私が計算してみると、ご主人の加給年金は、Aさんが65歳になるまでの2年間で約85万円を受け取れるはずでした。この停止は、Aさんが特別支給の老齢厚生年金を受け取る権利を得た時点で決まるため、Aさんが繰上げ請求をしてもしなくても変わりません。

次に、Aさんが考えていた繰上げ請求です。Aさんは63歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取れるので、前倒しできるのは65歳から受け取る老齢基礎年金です。ただし繰上げると、年金額は1か月あたり0.4%減り、その減額は一生続きます。63歳0か月で請求すれば、24か月分で9.6%の減額です。

Aさんの老齢基礎年金は、年約80万円の見込みでした。9.6%減ると年約7万7,000円少なくなり、先に受け取れる2年分を差し引いても、84歳ごろに受取総額が逆転して、それより長生きするほど差は広がります。さらに繰上げは一度請求すると取り消せず、65歳になる前にご主人に万一のことがあっても、遺族厚生年金と同時には受け取れないといった制約もあります。

相談の結果、Aさんは繰上げ請求をやめました。63歳からは特別支給の老齢厚生年金だけを受け取り、老齢基礎年金は65歳から本来の額で受け取ることにしたのです。

とはいえ、厚生年金に長く入ることが損というわけではありません。加給年金は配偶者が65歳になれば終わるお金ですが、Aさん自身の老齢厚生年金は一生涯受け取れます。働き続けて加入期間が延びれば、その分だけAさんの年金は増えていきます。

大切なのは、加給年金が止まる時期を知ったうえで、働き方や年金の受け取り方を選ぶことです。配偶者の加入期間が20年に近い方は、ねんきん定期便やねんきんネットで加入期間を確かめ、世帯でいくら受け取れるのかを一度計算してみてください。

まとめ

Aさんは「加給年金が止まるのは仕方ないとして、焦って繰上げ請求をしていたら、もっと損をするところでした」と話していました。パートは、これからも続けるそうです。

加給年金は、受け取る夫も、止まるきっかけになる妻も、仕組みを詳しく知らないことが多い制度です。年金の見込みは夫婦それぞれではなく、世帯で確認しておきましょう。


参考:
加給年金額と振替加算(日本年金機構)
63歳になり働きながら特別支給の老齢厚生年金を受けることになりました。(中略)私が年金を受けることになっても夫の年金に加給年金額が加算されますか。(日本年金機構)

執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,500記事以上の執筆実績あり。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ