1. トップ
  2. ビジネス・マネー
  3. 父の死後、“死亡保険金3,000万円”を受け取った50代長女→「遺産分割とは関係ない」と思いきや…1年後、直面した“予想外の悲劇”

父の死後、“死亡保険金3,000万円”を受け取った50代長女→「遺産分割とは関係ない」と思いきや…1年後、直面した“予想外の悲劇”

  • 2026.10.21
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPで相続の相談を数多く受けてきた柴田です。

「死亡保険金は受取人のもので、遺産分割とは関係ない」。相続の基本としてよく知られた考え方で、原則としては正しい理解です。ただし、この原則には例外があります。

今回は、お父さんの死亡保険金を一人で受け取った50代のAさんのお話です。

保険金は「私のもの」のはずだった

Aさん(50代女性)のお父さんは、昨年亡くなりました。お母さんはすでに他界しており、相続人はAさんと弟さん、妹さんの3人です。

お父さんの財産は、実家が評価額で約1,500万円、預貯金が約1,500万円の合計約3,000万円。このほかに、お父さんが掛けていた生命保険の死亡保険金3,000万円があり、受取人はAさん一人でした。

「保険金は遺産分割とは別」と聞いていたAさんは、遺産の3,000万円を3人で1,000万円ずつ分ける案を示しました。ところが弟さんは「姉さんは保険金で3,000万円もらっている。そのうえ遺産も同じだけ分けるのは不公平だ」と反発。妹さんも同じ意見で、話し合いは止まってしまいました。

原則は「遺産分割の対象外」

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

相談を受けて、私はAさんに保険金の扱いを説明しました。

死亡保険金は、受取人が自分の権利として受け取るお金です。そのため原則として、遺産分割の対象にはなりません。生前に特定の相続人が受けた贈与などを相続分の計算に加える「特別受益」にも、原則として当たらないとされています。

なお、相続税の計算では、死亡保険金は「みなし相続財産」として課税の対象になります。税金の話と遺産分割の話は、分けて考えることが大切です。

不公平が大きすぎると「例外」に

ただし、最高裁判所は2004年の決定で、例外があることを示しています。保険金を受け取った相続人とほかの相続人との不公平が、到底見過ごせないほど著しい「特段の事情」がある場合は、特別受益に準じて相続分の計算に加える(持ち戻す)というものです。

特段の事情があるかどうかは、保険金の額や遺産総額に対する割合、同居の有無、介護への貢献の度合い、各相続人の生活の状況などを総合的に見て判断されます。

Aさんの場合、保険金3,000万円は遺産総額と同じ額です。しかもAさんは結婚して実家を離れており、お父さんの介護は、近くに住む妹さんが中心になって担っていました。こうした事情から、持ち戻しの対象になる可能性は否定できません。

私が計算してみると、保険金が持ち戻しの対象になれば、遺産3,000万円に保険金3,000万円を加えた6,000万円を3人で分けることになり、1人あたりの取り分は2,000万円です。Aさんはすでに保険金で3,000万円を受け取っているため、遺産からは何も受け取れない計算になります。

生命保険で配分を調整するなら生前に

生命保険は受取人を指定できるため、相続の配分を調整する手段として役立ちます。たとえば、実家を継ぐ子に保険金を残し、それをほかのきょうだいに払う代償金に充てる方法は、実務上もよく使われています。

ただし、その意図が家族に伝わっていなければ、今回のように「一人だけ多くもらっている」と受け止められかねません。遺言で遺産全体の分け方を決めておく、保険金の使い道を家族に伝えておくといった、生前の準備が大切です。筆者の経験上、相続のもめごとは、金額の大きさより「知らされていなかった」ことから生まれる場合が多い印象です。

まとめ

Aさんは、遺産は弟さんと妹さんで分け、自分は受け取らない形で合意しました。「保険金は別、という言葉を、自分に都合よく受け取っていました」と話していました。

親の生命保険の受取人になっている方は、保険金の額と遺産全体のバランスを一度確認してみてください。そして、できれば親が元気なうちに、家族で分け方を話し合っておきましょう。


執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,500記事以上の執筆実績あり。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ