1. トップ
  2. ビジネス・マネー
  3. 「長く預けておけば安心」300万円を“10年定期預金”に入れた60代男性→久しぶりに通帳を記帳して「おや?」“手が止まったワケ”

「長く預けておけば安心」300万円を“10年定期預金”に入れた60代男性→久しぶりに通帳を記帳して「おや?」“手が止まったワケ”

  • 2026.10.13
undefined
出典元:PIXTA(※画像はイメージです)

こんにちは。FPで預金や老後資金の相談を数多く受けてきた柴田です。

金利が上がってきたことで、「昔預けた定期預金はどうなっているのだろう」という相談が増えた印象を受けます。

今回は、低金利の時代に10年ものの定期預金を組んだ60代のAさんのお話です。

「10年預ければ安心」だったはずの300万円

Aさん(60代男性)は7〜8年前、退職金の一部300万円を10年ものの定期預金に預けました。金利は年0.01%です。「どこに預けても同じような金利だし、長く預けておけば安心だろう」と考えたそうです。

今年の秋、久しぶりに通帳を記帳したAさんは、2つの数字を見比べて「おや?」と手が止まったそうです。

定期預金300万円の利息として記帳されていたのは、1年分で税引後わずか168円。一方、生活費として50万円ほど置いている普通預金には、半年分でそれを上回る利息が付いていたのです。

「残高が6分の1しかない普通預金のほうが、利息が多いんです」。Aさんはそう言って、通帳を見せてくれました。

定期預金の金利は「預けたとき」で決まる

理由は単純です。一般的な定期預金は固定金利型で、預け入れたときの金利が満期まで適用されます。世の中の金利がどれだけ上がっても、Aさんの定期預金は7年前に約束した年0.01%のままです。

なお、預入期間が2年以上の定期預金では、満期を待たずに毎年「中間利払い」として利息の一部が支払われます。中間利払いの利率を約束した金利の7割とし、残りの3割を満期にまとめて支払う銀行が多くあります。Aさんの場合、300万円×年0.01%=年300円(税引前)の7割にあたる210円から、税金(20.315%)を差し引いた168円が、通帳に記帳された金額でした。

この7年の間に、金利の環境は大きく変わりました。日本銀行は2026年9月、政策金利を1.25%程度に引き上げています。メガバンクの普通預金の金利は年0.4%で、11月からは年0.5%になる予定です。いつでも出し入れできる普通預金の金利が、10年しばられる定期預金の40倍という逆転が起きているのです。

私が計算してみると、300万円に年0.01%で付く利息は税引前で年300円。同じ300万円を年0.4%の普通預金に置けば、年1万2,000円になります。

「中途解約は損」という思い込み

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「でも、定期預金を途中で解約したら損をするんでしょう?」。Aさんが動けずにいた理由は、この思い込みでした。

たしかに、定期預金を満期前に解約すると、約束した金利より低い「中途解約利率」で利息が計算し直されます。ただし、減るのは利息です。すでに受け取った利息との差額が解約時に差し引かれることはありますが、受け取った利息と合わせれば、預けたお金を下回ることはありません。

そこで、Aさんの定期預金で計算してみました。約束どおりの金利で計算しても、7年分の利息は税引前で合計2,100円です。中途解約でこの利息が減ったとしても、失うのは最大で2,100円ほど。一方、解約して普通預金に移すだけで、満期までの残り3年間に受け取れる利息は、金利が今のままでも税引前で3万6,000円(税引後で約2万8,700円)になります。

補足ですが、比べている相手の「7年分の利息2,100円」も税引前なので、税引前どうしの比較として成り立っています。また、11月以降は年0.5%に上がるため、「金利が今のまま」という前提の3万6,000円は控えめな試算です。必要であれば「11月以降の年0.5%で計算すれば、さらに増えます」と一文加えることもできます。

「解約したほうが得だったんですね」。Aさんは拍子抜けした様子でした。中途解約が損になるかどうかは、約束した金利の高さで決まります。金利がほとんど付いていない定期預金なら、失うものもほとんどありません。

これから預けるなら「はしご」をかける

金利のある世界では、お金を借りる側は固定金利、貸す側は変動金利が有利になりやすい、というのが一般的な考え方です。銀行に預金することは、銀行にお金を貸すことにほかなりません。

ですから、金利が上がっていく局面で預ける側に有利なのは、世の中の金利に合わせて預金金利も上がっていく変動型です。固定金利で長く預けてしまうと、世の中の金利が上がっても自分の預金金利は上がらず、Aさんのように取り残されてしまいます。

いつでも出し入れできる普通預金は、金利が変動するので、金利が上がる局面ではまさに変動型の預け先です。「普通預金は金利が低いから損」というのも、金利が動かなかった時代の思い込みといえます。

注意したいのは、これから定期預金を組む場合です。今の金利で10年固定すれば、この先さらに金利が上がったとき、Aさんと同じ状況になります。しかも今度は約束した金利が高い分、中途解約で失う利息も大きくなります。

とはいえ、金利がこの先も上がり続けるとは限りません。そこで一つの選択肢として考えられるのが、預ける期間を分ける方法です。「ラダー(はしご)運用」と呼ばれることもあります。

たとえば300万円を、1年、3年、5年の定期預金に100万円ずつ分けます。満期が来たものから順に、そのときの金利で預け直していくわけです。満期の時期がはしごのように並ぶので、金利が上がっても下がっても、極端な損を避けられます。

まとめ

Aさんは定期預金を解約し、期間の違う定期預金に分けて預け直しました。「長く預けるほど安心、というのは金利が動かない時代の話だったんですね」と話していました。

低金利の時代に組んだ長期の定期預金がある方は、一度通帳を記帳して、金利を確かめてみてください。そのうえで、解約で失う利息と、預け直して得られる利息を比べてみること。数字を並べてみれば、答えはすぐに出ます。そして、これから預けるなら、金利が上がれば預金金利も上がる預け方を軸に、固定するなら期間を分けることをおすすめします。


参考:
定期預金(一般社団法人全国銀行協会)
知っておきたい、金利表示の見方と注意点(一般社団法人全国銀行協会)
金融政策に関する決定事項等 2026年(日本銀行)

執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,500記事以上の執筆実績あり。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ