1. トップ
  2. ビジネス・マネー
  3. 父「大事なものは貸金庫に入れてある」→死後、50代息子が開けようとするが…銀行で告げられた思わぬ条件に“肩を落としたワケ”

父「大事なものは貸金庫に入れてある」→死後、50代息子が開けようとするが…銀行で告げられた思わぬ条件に“肩を落としたワケ”

  • 2026.10.13
undefined
出典元:PIXTA(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関でマネージャーを務めながら、家計のご相談に日々向き合っている中川です。

今回ご紹介するのは、亡くなった父の貸金庫を開けようとした50代男性のAさんの体験談です。

「鍵を預かっているのだから、すぐに開けられるはず」

そう思っていたAさんでしたが、銀行の窓口で思わぬ条件を告げられます。貸金庫を利用している家族が知っておきたい手続きをご紹介します。

800万円の定期預金の証書も貸金庫に

Aさん(50代)の父は、この夏に亡くなりました。

父は生前、「大事なものは貸金庫に入れてある」と話していました。几帳面な性格で、通帳や保険の書類もまとめて預けていたようです。貸金庫の鍵は、Aさんが預かっていました。

中には、自宅の権利証や、800万円の定期預金の証書が入っているはずです。

相続人は、Aさんと兄の2人です。自宅と預金を合わせた父の財産は約6,000万円。葬儀費用などを差し引いても、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×2人=4,200万円)を超えるため、相続税の申告が必要です。

申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

父の家は、Aさんの家から車で1時間ほどの場所にあります。

「まずは貸金庫の中身を確かめないと」

Aさんは鍵を持って、銀行へ向かいました。

「相続人全員の同意が必要です」

undefined
出典元:PIXTA(※画像はイメージです)

窓口で事情を話すと、担当者はこう説明しました。

「契約者の方がお亡くなりになった場合、貸金庫を開けるには、原則として相続人全員の同意が必要です。所定の書類に、相続人の皆さまの署名と実印をお願いします」

さらに、父の出生から亡くなるまでの戸籍謄本や、相続人全員の印鑑証明書もそろえるよう言われました。

Aさんは途方に暮れました。鍵さえあれば、家族ならすぐに開けられると思っていたからです。

兄は遠方に住んでおり、ここ数年はほとんど連絡を取っていません。

「鍵があっても、私だけでは開けられないのですね」

電話で事情を伝えると、兄は最初、「忙しいから後にしてくれ」と言いました。Aさんは何度か連絡を重ねましたが、必要な書類がそろうまでに2か月かかりました。

貸金庫から出てきた手書きの遺言書

ようやく開けた貸金庫には、権利証と定期預金の証書のほかに、父が手書きした遺言書が入っていました。

手書きの遺言書は、家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。封がされた遺言書は、家庭裁判所で相続人などが立ち会って開けることになっています。

検認は、遺言書の内容を相続人に知らせ、偽造や変造を防ぐための手続きです。

Aさんの場合、検認の日が決まるまでに1か月ほどかかりました。検認を終えるまで、遺言書を使った名義変更などは進められません。その間にも、申告期限の10か月が刻々と迫っていきます。

「最初から分かっていれば、もっと早く動けたのに」

父が元気なうちに、兄とも一度話しておけばよかったと、Aさんは肩を落とします。

元気なうちに家族で共有しておく

貸金庫を利用している場合は、次の点を家族で話しておきましょう。

・貸金庫に何を入れているか
・相続人が誰で、連絡が取れるか
・遺言書をどこに保管しているか
・貸金庫を契約している銀行と支店、鍵の置き場所

手書きの遺言書は、法務局に預ける「自筆証書遺言書保管制度」を使うと、検認がいりません。

貸金庫を開けるための手続きは、銀行や、遺言執行者がいるかどうかによっても変わります。通帳のコピーや財産の一覧を自宅にも置いておくと、家族が慌てずに済みます。

大事なものほど、置き場所だけでなく、必要なときにどうやって開けるのかまで家族と共有しておくことが大切です。


執筆・監修:中川 佳人

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ