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「直接言ってくれればよかったのに」水やりで洗濯物を濡らす上階の女性。後日、エレベーターで交わした会話

  • 2026.9.27

朝の洗濯物に落ちてくる水

今の部屋に越してきてひと月ほどのころ、ベランダに干した洗濯物が、朝になると濡れていることが続いた。

雨の予報もないのに、シャツの肩やタオルの一部だけが冷たく湿っている。

何度目かの朝、早起きしてベランダに出てみた。すると頭上で、水の落ちる音がした。

見上げると、上の階のベランダの縁から水が流れ落ち、干したばかりのタオルにかかっていた。どうやら植木鉢への水やりであふれた水らしい。

その夜、夕飯を食べながら妻に話した。

「やっぱり上からだった。朝の水やりみたいだ」

妻は少し困った顔をした。

「どうする?直接言いに行く?」

「いや、管理会社に相談するよ。入るとき、そうしてほしいって言われてたし」

契約の日、管理会社の担当者から、住人同士で困ったことがあれば、まず会社へ連絡してほしいと説明されていた。

翌朝、電話で事情を伝えると、担当者は「こちらからお伝えします」と対応してくれた。

エレベーターで言われた「直接言って」

次の朝、出勤のためエレベーターに乗ると、50代くらいの女性が先に乗っていた。何度か見かけたことのある人だった。奥には、同じ建物に住む年配の男性も立っていた。

扉が閉まると、女性が前を向いたまま口を開いた。

「管理会社から聞いたわよ。直接言ってくれればよかったのに」

その言葉で、上の階の住人だと分かった。

僕が返事をする前に、女性は小さく息を吐いた。

「わざわざ管理会社を通さなくても、直接言ってくれればよかったのに」

僕は少し間を置いてから答えた。

「すみません。でも、入居するときに、住人同士のことはまず管理会社を通してくださいって言われていたんです」

女性がこちらを見た。

「そうなの?」

「はい。直接だと、言い方によっては気まずくなるかもしれないと思って」

すると奥にいた男性も、静かに言った。

「私も入居するとき、同じ説明を受けましたよ」

女性は少し黙り、やがて階数表示へ視線を戻した。

「……そう。じゃあ、水のことは気をつけるわね」

僕も「ありがとうございます」とだけ返した。

その夜、妻に「何か言われた?」と聞かれた。

「直接言ってくれればよかったのに、って2度言われたよ」

「そうだったんだ」

「でも、水は気をつけるって」

次の朝から、ベランダの縁を伝って水が落ちてくることはなくなった。洗濯物も、それから一度も濡れていない。

しばらくたったある朝、エレベーターの扉が開くと、あの女性が乗っていた。

僕が会釈すると、女性もこちらを見て笑った。

「おはようございます。今日もよく乾きそうね」

一階に着くまで、女性は新しく受け皿を選んだ園芸店の話をしてくれた。

あの日は少し気まずかったけれど、直接ぶつかり合わずに済んだことで、その後も顔を合わせれば普通に挨拶できている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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