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同僚の机を黙って直し続けた私は、「余計なお世話」の一言が怖くて理由を言えずにいました

  • 2026.9.27
ハウコレ

謝罪だけを口にしたその日、退社後にあの机で何が起きるかは分かっていました。分かっていて、私は机の上には触れずに帰宅しました。

それを知ったのは、3か月ほど前のことです。人の減ったフロアに、台車の車輪の音だけが残っていました。残業を終えて振り返ると、隣の席のペン立てが横になり、ペンが床に転がっています。清掃の人はもう次の列へ進んでいました。それが、私が隣の机を直すようになったきっかけでした。

拾って立て直すだけのつもりでした

隣の席は私より遅く出社する同僚で、机の右の角が通路に少しだけ出ています。清掃の台車はその角をかすめて曲がるので、翌日には書類がずれ、ペン立てが倒れているのが決まりでした。

最初はペンを拾って立て直すだけでした。ただ、拾っているうちに書類の角も揃えたくなり、ペン立ては右の角から机の中央へ寄せ、カップが倒れたら困ると思って左の奥へ移すようになりました。

自分の机を付箋の向きまで揃えているのは、以前1枚の書類を失くして取引先に頭を下げた経験があるからです。その基準を、頼まれてもいない隣の机にまで持ち込んでいる自覚はありました。それでも、毎回お礼を言ってもらえるので、迷惑にはなっていないと思い込んでいました。

「ごめんなさい。もうしません」

取引先の書類を束の下に回したのは私です。付箋が外れかけていたので、剥がれないよう一番下に挟んでおいたつもりでした。それが原因で同僚が外出の時間をずらしたのは、戻ってきた顔で分かりました。

「私のデスク、勝手に触らないでもらえますか」

周りの席が私たちを見ています。私は同僚の机を一度見てから答えました。

「ごめんなさい。もうしません」

台車のことを話す機会は、そこにしかありませんでした。それなのに口から出たのは謝罪だけで、理由を言えば言い訳に聞こえる気がして、画面に顔を戻しました。本当は、言い訳だと思われることより、余計なお世話だと切り捨てられることのほうが怖かったのです。

直さないと決めた4日間

翌日、その机がどうなっているかは分かっていました。倒れたペン立てを視界の端に入れたまま、私は自分の席で仕事を始めました。同僚が黙って拾うのを、隣で聞いているだけの日が続きました。手を出せば約束を破ることになり、理由を言えば今さら何をと思われる。どちらも選べずに、ペンが床に当たる音を数えていました。4日目、同僚のほうから聞かれました。

「どうして毎回、ペン立てが倒れているんでしょうか」

私は手を止め、机の右の角を指さしました。「退社後の清掃で、台車がそこの角に当たるんです」それから、あなたが来る前に戻していただけだと付け足しました。

「どうして言ってくれなかったんですか」

「言ったら、余計なお世話だと思われる気がして」

それが、3か月の間ずっと言えなかった全部でした。

そして...

翌週、その机のカップは左の奥に置かれ、ペン立ては中央に寄っていました。右の角には見覚えのない小さなカゴが置かれ、出社するたび少しだけ角度が変わっています。直したくなる手を、私は毎回膝の上に戻しています。それを戻すのが誰の役目か、もう決まっているからです。

(30代女性・経理)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに、相手側の視点を編集部で再構成したものです。個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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