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“好青年”のイメージを覆した“激重ヤンキー”「本作でしか見られない」「別人じゃん」NHKドラマで見せた若手俳優の活躍

  • 2026.10.14
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夜ドラ『税金で買った本』第6週目(C)NHK

NHK夜ドラ『税金で買った本』に、何やら目が離せない人物がいる。主人公・石平紀一(奥平大兼)のヤンキー友だちの一人である灰坂坑太だ。彼を演じるのは俳優の新原泰佑なのだが、SNS上でも「本作でしか見られない新原さん」「別人じゃん」との声があがっているように、これまでの役柄とは一味違った姿を見せてくれている。学ラン姿で気だるそうに振る舞う姿、紀一を恫喝する様子などは、『25時、赤坂で』の白崎由岐や『ちょっとだけエスパー』の紫苑とも、まるで違う。

※以下本文には放送内容が含まれます。

新原泰佑が演じる“インテリヤンキー”

NHK夜ドラ『税金で買った本』は、喧嘩っ早い金髪のヤンキー高校生・紀一が、とある一件から図書館の魅力に触れ、ついには図書館でアルバイトまでするようになってしまう話。

図書館には、レファレンスが大好きな早瀬丸小夜香(西野七瀬)、筋トレと本の修繕を愛する白井里雪(青木マッチョ)など、本を愛するがあまり実に個性的な面々が集っていた。紀一は彼らとともに働きながら、蔵書点検や本の修繕といった知られざる図書館業務、そして“知らないことを知ること”のおもしろさに気づいていく。

まるで子どものころに戻ったように、知らないことやわからないことにぶち当たると「なんで?」と繰り返す紀一が微笑ましい。この子って、もともと勉強が嫌いじゃないんだろうな、なんて思える。

そんな紀一の友人の一人である灰坂も、おそらくは勉強そのものが嫌いなわけではなさそうだ。

灰坂は髪こそ黒いけれど、学ランは着崩していてどこか気だるそうで、ヤンキー漫画に出てきてもおかしくなさそうなインテリ系のヤンキーだ。図書館でアルバイトするようになった紀一に並々ならぬ思いを抱えており、彼に向かって怒鳴る様は少々幼稚にも見える。けれど、会話の端々から地頭の良さがうかがえる。

灰坂を演じている俳優の新原泰佑は、これまでどちらかというと人の良い好青年を演じているイメージが強かった。ところが今回の灰坂は、どうも様子が違う。

“激重ヤンキー”の奥にある、言葉にならない寂しさ

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夜ドラ『税金で買った本』第6週目(C)NHK

図書館と出会った紀一は、これまでの喧嘩続きの毎日や、変わり映えしない交友関係から距離をとっていく。新しい仕事仲間、本との出会い。知的好奇心を思う存分、爆発させるような紀一は生き生きとしている……けれど、対するように灰坂はどんどん暗く、重くなっていく。

紀一には良い出会いがあったけれど、灰坂にはそれがない。受験に失敗したという過去をまだ拭い去れず、軽やかに新しい世界を拡張させていく紀一を間近で見ていることに耐えられない。

自分はもう変われない、ここから違う領域に行くことはできない、と懸命に諦めようとしている灰坂にとって、紀一はどんどん我慢ならない存在に映っていったのだろう。自分たちだけのものだった場所が失われていくような寂しさ。知らない世界へ進んでいく友人への憧れ。そして、その憧れと表裏一体になった嫉妬。視聴者から“激重ヤンキー”と称されるのも納得してしまう。

だからこそ紀一と灰坂が、小説『放浪する青』をめぐり、思い出の場所で互いの気持ちを通わせる場面からも、灰坂が石平に抱いている感情の複雑さが伝わってくるのだろう。

新原が表出させた灰坂の繊細さは、どこかドラマ『25時、赤坂で』で演じた白崎由岐にも通じる。白崎もまた、内心の葛藤やどうにもならないやりきれなさを抱えた人物だった。新原は、胸の内にあるものをすべてセリフにしない人物を演じるとき、とりわけ強い。

寂しさ、憧れ、そこから滲み出る嫉妬心。わかりやすくドロドロした負の感情を、そのまま単純にパッケージングして提示しない。強い感情ほど、内に潜り込むように秘めさせ、そこに“言葉にならない何か”があると思わせる。

何もしていないように見える瞬間ほど、何かを感じさせる。そんな“余白”を持った芝居ができるのが、新原の持ち味だ。

身体ごと没入する俳優

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夜ドラ『税金で買った本』第6週目(C)NHK

さらに興味深いのが、『税金で買った本』の少し前に出演していた『ちょっとだけエスパー』である。大泉洋が主演を務めた、野木亜紀子作品『ちょっとだけエスパー』で、新原はディーン・フジオカ演じる桜介の息子・紫苑役として登場した。

高校生らしい天真爛漫さを漂わせながら、ときおり覗かせる謎めいた冷徹さ。ヴィラングループとの関わりなど、その存在は物語を大きく揺るがしていった。

灰坂も紫苑も同じ高校生だ。それなのに、二人を見比べるとまるで別人に見える。紫苑には軽やかさがあり、灰坂には地面に沈み込むような重さがある。役の性格だけでなく、その人物がまとっている空気まで違うのだ。

そこには、新原が幼少期から磨いてきたダンスの経験も生きているのではないだろうか。

その身体表現力は、舞台の現場でも高く評価されている。2024年には池田亮が作・演出・美術を手がけた『球体の球体』で舞台初主演を務め、その活躍などが評価され、第32回読売演劇大賞の杉村春子賞を受賞した。

ダンス、舞台、映像。それぞれの場所で培ったものが、役によって立ち姿すら変えてしまう芝居につながっているのだろう。作品に入るたびに本人の輪郭が薄れ、その代わりキャラクターの輪郭が濃くなっていく。作品を重ねるたびに、こんな顔もできるのかと驚かされる。

荒っぽさと知性、寂しさと嫉妬、そして友人への強い思い。相反する感情を身体の内側に抱え込んだ灰坂坑太は、新原泰佑という俳優の底知れなさを、またひとつ鮮やかに見せてくれる役になっている。


NHK 夜ドラ『税金で買った本』毎週(月)〜(木)夜10:45~11:00
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信・過去回はNHKオンデマンドで配信

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