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朝ドラ脚本家が描いた娘を動画のネタにする“父の危うさ” ホームコメディに見え隠れする“ホラー”要素【秋ドラマ】

  • 2026.10.29
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原菜乃華 (C)SANKEI

秋クールのテレビドラマは、野木亜紀子の『ポリティカルパン』や奥寺佐渡子の『LOST10』といった人気脚本家が手掛ける話題作が多い。中でも注目したいのが、吉田恵里香が脚本を手掛ける動画配信者の父と娘の関係を描いたホームコメディ『もうパパ!』である。

※以下本文には放送内容が含まれます。

大学1年生の多良山紀子(原菜乃華)は、「怒りんぼ紀子ちゃん」としてネット上で知られていた。小学生の時に不登校になった紀子を笑顔にするため、父親の多良山良詫(堤真一)は動画配信サイトで家族系チャンネル『タラちゃんねる』を開設し、そこで紀子が「もうパパ!」と怒る動画がバズってネットミームとなったことで、紀子はネット上の有名人となる。

その後、家族で『タラちゃんねる』を盛り上げ、チャンネル登録者数100万人を目指して頑張ってきた。しかし、紀子の気持ちは複雑で、パパの顔色を窺って思っていることが言えなくなっていることに悩んでいた。

そんなある日、紀子は大学で吉良陽日(岩瀬洋志)という爽やかな先輩と知り合う。友達の協力で吉良と仲良くなった紀子は休日にデートをすることになるのだが、良詫は彼女の初デートの様子を盗み撮りして動画サイトで配信しようと目論み、裏で吉良に35万円を渡していたことが明らかとなる。

動画配信者の日常を描いたテレビドラマ

紀子の初デートを父親が動画コンテンツとして配信しようとする場面は、第1話のもっともショッキングなシーンだが、実は紀子の大学の友人たちがパパの良詫と繋がっていて、吉良との関係を報告させていたことにも、恐ろしいものを感じた。

幼少期から『タラちゃんねる』に出演している紀子は、周囲にプライベートがダダ漏れで、アイドルやタレントに近い存在なのだが、パパが配信する動画チャンネルの出演者だというのが、とても現代的である。良詫がやっていることは娘の成長を記録したホームビデオを、動画配信サイトでずっと公開している行為に近いもので、紀子にとっては日常の一部となっている。

だから彼女にとって撮られることは自然なことだ。それは同世代の友人たちも同様だ。劇中には紀子たち以外の動画配信者が多数登場するのだが、動画を撮って配信するやりとりが、自然な行為として違和感なく描かれている。そのことに一番衝撃を受けたのだが、今の大学生は生まれた時からインターネットが存在してスマホで動画や写真を撮ることが日常生活の中に当たり前のこととして存在している世代なのだろう。それは頭では理解していたのだが、テレビドラマの中でスマホを用いて動画を撮影することが、ここまで自然なものとして描かれているのを観ると、今はこういう時代だったのかと、改めて実感する。

劇中では、紀子に恋愛リアリティーショーの出演依頼が来るのだが、そもそも『タラちゃんねる』自体が、パパが撮影している紀子のリアリティーショーのようなものだと言える。その撮影が、本当にありのままの姿だけを撮影しているのであれば問題はないのだが、再生回数を稼ぐために父親の良詫が周囲の人間に指示を出して演出をするようになると、やはりそれは逸脱した行為で、パパが作った世界に娘を閉じ込めようとしているようなおぞましさを感じた。その意味で、楽しいコメディでありながら、ホラーの要素が見え隠れする不穏なドラマである。

現代の父娘関係を吉田恵里香はどう描くのか?

脚本を担当する吉田恵里香は、2024年度前期のNHK連続テレビ小説『虎に翼』の脚本家として広く知られており、社会性のある現代的なテーマに切り込んでいくコメディテイストのドラマを得意としている。今回の『もうパパ!』も、動画配信という最先端のモチーフを、パパと娘のホームコメディとして描いており、動画配信者の世界と現代の父娘関係を切り取る吉田の筆致は実に見事である。

紀子と良詫は仲が良く、周囲からは理想の親子に見える。紀子はパパの良詫のことが大好きだし、良詫も娘の紀子の気持ちをいつも一番に考えており、彼女が嫌なら『タラちゃんねる』をいつでも卒業していいと言っている。ただ、口ではそう言っているのだが、何かと理由をつけて配信を続けさせようとしているようにも見える。

良詫を演じる堤真一の芝居は常に飄々としているため本心が見えない。そのため、何か裏があるのではないか疑ってしまい、動画配信者として成功するために娘を利用している邪悪なパパではないかと、当初は思った。

だが話が進む中で、良詫は本当に紀子を愛していて、彼女のことを一番に考えていることがわかってくる。裏表がないという意味では、良詫の愛情は本物だ。しかし、愛情があれば全てが許されるというわけではない。

第3話、良詫は紀子の『タラちゃんねる』を卒業したいという気持ちを尊重し、この10年間の紀子の映像を編集したメモリアルムービーを紀子に見せる。良詫としては紀子の気持ちを優先しての行為だったが、紀子が望んでいたのは二人で話し合って今後のことを決めることだった。こちらの意見を聞かずに一方的に物事を進めてしまう良詫の自分本位な振る舞いに失望した紀子は、良詫から距離を取ろうとする。

紀子と良詫の関係はとても濃密かつ複雑で、まるで恋愛ドラマの恋人同士のようだが、令和の現在において、このような濃密な愛憎は親子の間にしか生まれないのかもしれない。

恋人でも友人でもなく、父娘の関係を通して濃密な人間ドラマを描こうとしているのが本作最大の魅力だろう。愛しているからこそすれ違ってしまう父娘のドラマがどこに向かうのか、最後まで見届けたい。


出典:ABCテレビ・テレビ朝日系『もうパパ!』公式サイトより

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