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真昼なのに怪奇現象が多発する街? 怪奇現象をマッピングしていくジュブナイル・ホラー『町の地図には、恐怖がいっぱい』【書評】

  • 2026.9.5
町の地図には、恐怖がいっぱい 七倉イルカ/竹書房
町の地図には、恐怖がいっぱい 七倉イルカ/竹書房

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『町の地図には、恐怖がいっぱい』(七倉イルカ/竹書房)は、小学5年生の主人公が、近隣で起こる不気味な出来事を地図に描き込んでいく夏休みを描いた作品だ。章ごとに異なる怪異に出会える連作短編集である。

主人公のタケルは、夏休みに自分が住む町の地図作りを始める。不思議なことが起こった場所に「怪」のマークをつけていくことにしたのだが、次々と怪奇現象に見舞われることで、予想以上に「怪」のマークは増えていく。

■身近な町だからこそ、怖くてもっと知りたくなる

本作の魅力は、冒険のようなワクワク感と、次々に立ち現れる怪奇現象のゾクゾク感を、両方楽しめることにある。

登場するのは、身近な場所ばかりだ。キャッチボールをする河川敷。虫取りのために訪れた森。最寄りのコンビニエンスストア。しかも登場人物は小学生が中心で、タケルたちが町を歩き回るのは主に日中である。そのため怪奇現象の多くは、明るい時間帯に起こる。ホラーとは縁遠い場面に、突如として恐怖が立ち上がるところが見どころだ。

味わえる恐怖体験も多彩である。長年蓄積した恨みが怪異として表出するものもあれば、もともとその地に棲み着いていた物の怪が登場するものもある。中には、いわゆる「人怖(ヒトコワ)」に分類されるような、人間の本性が恐怖を生み出すパターンもあった。

歴史に紐づくエピソードもあり、「怪」のマークを書き込んだ地図を作ることが、その土地への理解を深めることにつながっているところも面白い。知らないことを知りたい気持ちも、怖いもの見たさも、もとを辿れば知的好奇心から生まれる衝動なのかもしれない。そんな高揚感と共に、不思議がいっぱいの小学生の夏休みを追体験できる作品である。

■怪異を「悪い」「怖い」で終わらせないから、大人も読み応えがある

どの物語にも身をすくませるシーンはあるのだが、その背景にはそれなりの理由があるものが多い。特に好きだったのは「第五章 奇妙な夏祭り」である。具体的に何が起こるかは本編を読んで確かめてほしいが、怖い思いをさせられることに納得がいく理由があり、どこか爽快な気分すらあった。人ならざるものが巻き起こす怪奇現象も、その発端を辿れば人の欲が潜んでいるのかもしれない。最後に収録された「外伝 人柱の娘」は、逆サイド、つまり怪異側の視点で描かれた異色作だ。ホラーというジャンルを超えた余韻が残る、非常に良い物語だった。読者が持つ怪異のイメージや捉え方を変えるきっかけとなる作品なので、ぜひ読んでほしい。

ジュブナイル・ホラーに分類されていることもあり、小学生でも読めるくらい読みやすい。一方で描かれるホラーの質は高く、その裏に込められたメッセージにも奥行きを感じるため、大人でも十分楽しめる。年齢を問わず、ホラーに興味がある方なら誰にでも勧めたい。もしも自分が小学生を持つ親ならば、夏休みの自由研究として一緒に地図を作ろうと誘ったかもしれない。……いや、それがきっかけで身近な怪異に出会ってしまったら大変だ。そんな想像をさせてくれるくらい、本作はホラーとして、そして冒険譚として魅力にあふれる一冊である。

文=宿木雪樹

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