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車検専門店「交換しておいた方が…」プロの助言をスルーした結果…旅行帰りの50代夫婦を襲った“悲劇”

  • 2026.9.28
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

車のエンジンが問題なくかかっていると、「バッテリーはまだ大丈夫」と思ってしまう人も少なくありません。しかし、バッテリーは劣化が進んでいても、限界を迎える直前まで普通にエンジンを始動できるケースがあります。

今回は、筆者の知人である50代男性のKさんから聞いた、旅行帰りに起きたトラブルを紹介します。

「遠出するなら交換を」と言われていたものの

Kさんがあるとき車検専門店で点検を受けたところ、バッテリーの性能が低下していることを指摘されたそうです。

「すぐにエンジンがかからなくなるとは限りませんが、遠出する予定があるなら交換しておいたほうがいいですよ」

そう説明されたものの、Kさんは交換費用を考えて、その場では見送ることにしました。

「最近も普通にかかってるし、まだ大丈夫だろう」

その後も毎日のように車を使っていましたが、特に問題はありませんでした。そんななか、Kさんは妻と1泊旅行へ出かけました。旅行中も車の調子に変化はなく、「やっぱり交換しなくても大丈夫だった」と思っていたといいます。

ところが、帰宅途中に思わぬトラブルが起きました。

日没直後、休憩後の再始動でセルが弱々しく

旅行からの帰り道、秋になって日没が早くなったこともあり、まだそれほど遅い時間ではないものの、ヘッドライトを点灯する時間帯になっていました。

さらに道路は渋滞。ライトに加えてエアコンやナビなども使用していたため、多くの電装品を使う状態が続いていました。しばらく進んだところで休憩のために停車し、再び出発しようとしたときのことです。Kさんがエンジンをかけようとすると、セルモーターの回り方が明らかに弱くなっていました。

「ん?なんかセルが弱いな」

もう一度キーを回してみても、エンジンは始動しません。何度か試すうちに、セルモーターはほとんど回らなくなりました。

助手席にいた妻からは、

「前にバッテリー交換したほうがいいって言われてなかった?」

と一言。Kさんは「そうだった」と答えるしかありませんでした。結局、自力での再始動はできず、ロードサービスを利用して車を搬送することになりました。

その後、Kさんから相談を受けた筆者のところへ車が入庫しました。点検してみると、バッテリーの性能は大幅に低下していました。念のため充電系統も確認しましたが、発電側に大きな異常は見つからず、今回の始動不能はバッテリーの劣化が主な原因と判断しました。

「普通にかかるから大丈夫」が危険な理由

今回のようなトラブルで注意したいのは、「エンジンがかかっていた=バッテリーが健康」というわけではないことです。バッテリーは劣化が進んでも、ある程度までは普通にエンジンを始動できます。そして限界に近づいたところで、突然始動性能が落ちることがあります。特に近年主流となっている高性能バッテリーは、寿命直前まで比較的高い電圧を維持するため、劣化の進行を体感しにくい場合があります。

そのため、「昨日も普通にエンジンがかかった」「今朝も問題なかった」という状態から、突然始動不能になる、いわゆる“突然死”につながるケースもあります。

また、近年主流のLEDやHIDヘッドライトは、電圧が少し低下した程度では従来の電球のように分かりやすく暗くならず、限界を下回ると突然消灯する仕組みです。つまり、ライトの明るさだけを見てバッテリーの状態を判断するのも難しくなっています。バッテリーについては、セルモーターの回り方が以前より弱いと感じる、長期間交換していないなど、少しでも気になる点があれば一度点検を受けることをおすすめします。

不安がある場合は早めに整備を

特に旅行や帰省などで長距離を走る予定がある場合は、普段の近距離走行で問題がないかだけではなく、「これから長時間走る」という条件も含めて判断することが大切です。秋冬は日没が早く、ライトを使用する時間も長くなります。渋滞などで電装品を使用する時間が増えたところにバッテリーの劣化が重なると、今回のKさんのように帰宅途中で立ち往生してしまう可能性もあります。

他店で「遠出するなら交換したほうがいい」と指摘された場合も、「まだエンジンがかかるから」とだけ考えるのは禁物です。バッテリー交換には費用がかかりますが、出先で始動不能になれば、ロードサービスの手配や搬送など、時間も手間も余計にかかってしまいます。

「まだ使える」と「安心して遠出できる」は、必ずしも同じではありません。旅行や長距離ドライブを予定しているなら、出発前にバッテリーの状態を確認し、不安がある場合は早めに整備しておくことが、トラブル回避につながります。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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