1. トップ
  2. 暮らし
  3. 実家へ帰省して墓参りに向かったら「跡形もなく消えている…」幼い頃、親の車でよく通った“場所”の思わぬ変化

実家へ帰省して墓参りに向かったら「跡形もなく消えている…」幼い頃、親の車でよく通った“場所”の思わぬ変化

  • 2026.10.3
undefined
出典:PIXTA(※画像はイメージです)

最近「いつの間にかガソリンスタンドが減った」と感じたことはないでしょうか。1994年度に約60,000カ所あった店舗は現在半減しており、その理由は電気自動車の普及だけではありません。

設備の老朽化や人手不足など、給油所は複雑な課題に直面しています。その中で生き残る店舗は洗車や車検などガソリン以外のサービスへシフトしているようです。単なる給油所から地域の生活拠点へ変わりつつある現状を紐解きます。

お盆の帰省で気づいたガソリンスタンドの減少

先日のことですが、お盆休みに実家へ帰省してお墓参りをした際、学生時代によく利用していたガソリンスタンドが跡形もなく消えていることに気がつきました。私の実家は関東の端に位置する小さな田舎町にあり、かつては親の車を借りては、頻繁に給油へ通っていたなじみ深い場所でした。長く親しまれていた地域の風景が変わってしまったことに、少し寂しさを覚えたものです。

実はこのような出来事は、私の地元に限った珍しい話ではありません。資源エネルギー庁のデータによると、1994年度に全国で約60,000カ所あったサービスステーションは、現在では半分以下の水準にまで減少しているとのことです。私たちが日常的に利用している道路沿いから、少しずつ確実に姿を消していることがわかります。

さらに深刻なのは、単なる店舗数の減少にとどまらない点にあります。資源エネルギー庁が公表している資料を確かめてみますと、市町村内に給油所が3カ所以下しかない地域は381市町村にのぼり、最寄りの給油所まで15km以上も離れている地域を抱える市町村も291に達しているようです。地方では車が生活の足として欠かせないため、給油できる場所がなくなることは生活インフラの維持に関わる大きな問題になりつつあるといえます。

電気自動車の普及だけではない、見えない設備の重荷

このように店舗が減少し続けている背景について、電気自動車が増えたからではないかと想像する方も多いかもしれません。もちろんその影響もありますが、人口の減少や自動車の燃費性能が飛躍的に向上したことによる燃料需要の低下も、大きな要因の一つといえます。

しかし、減少の理由は需要の変化だけにとどまりません。関係者から話を聞くと、ガソリンスタンド業界が抱えている深刻な問題として、慢性的な人手不足や経営者の高齢化、そして後継者不足が挙げられます。地域密着で運営してきた店舗などでは、次の世代へお店を引き継ぐことが難しくなっているようです。

それに加えて重くのしかかっているのが、地下タンクの老朽化という物理的なハードルです。ガソリンという危険物を扱う性質上、消防法などの規制により、設置から年月が経過した古い地下タンクは漏洩を防ぐための改修や厳格な点検が求められます。燃料需要が徐々に減っていく中で、多額の費用を投じてまで設備を更新して事業を継続すべきかという苦渋の決断を迫られ、最終的に廃業を選択するケースが少なくないと考えられます。

生き残る店はガソリン以外に力を入れている

では、こうした厳しい環境の中で多額の維持費をかけながらも生き残っている店舗は、どのようにして利益を確保しているのでしょうか。

その答えの鍵となるのが、ガソリン以外のサービスです。最近の店舗を見渡すと、給油機の横に大規模な洗車機が並んでいたり、ボディコーティングや車検整備などをアピールする看板を目にしたりすることが増えたのではないでしょうか。

実際に私が普段利用している近隣の店舗でも、燃料の販売だけでなく自動車関連のメンテナンスにとても力を入れています。特に冬場にスタッドレスタイヤへ交換しようとすると、2週間から3週間前には予約を入れないと対応してもらえないほど混雑しているようです。以前のように給油のついでに少し点検してもらうという感覚ではなく、メンテナンスの専門店として利用されていることが実感できます。給油をするだけの場所から、車を総合的に維持し管理する場所へと役割を広げることが、店舗を維持するための生命線になっているといえそうです。

将来は郵便局と合体して地域の何でも屋へ

車の総合サービス拠点へと進化することで生き残りを図る店舗がある一方で、人口が減り続けている地方では、自動車関連のサービスだけでは拠点を維持することが難しいケースも出てきているようです。

そこで、地域に必要な燃料供給インフラを維持するために、国も新たな仕組みの検討を始めています。資源エネルギー庁の「新たな地域燃料流通に関する研究会」などでは、燃料販売だけで事業を成立させることが困難な地域において、生活用品の販売やLPガス事業といった他の需要と組み合わせる案が議論されています。

さらには、郵便局など地域に欠かせない他のエッセンシャルサービスと連携し、店舗や人員を共有するという方向性も示されているとのことです。それぞれの事業単体では採算が合わなくても、拠点を一つにまとめることで効率化を図るという合理的な考え方です。将来の地方のガソリンスタンドは、単に給油や車の整備をする場所ではなく、地域住民の生活を支える何でも屋のような存在へと姿を変えていくのかもしれません。

給油所から暮らしを支えるインフラへの転換

普段ドライバーとして利用する際、私たちはついどこが一番安いかという価格に目が行きがちです。しかし、地域からガソリンスタンドがなくなってしまうと、自家用車の給油ができなくなるだけでなく、農業用の機械や物流トラック、さらには冬場の暖房に欠かせない灯油の配送など、地域経済のあらゆる場面に大きな影響が及ぶことになります。

さらに、災害が発生した際には、燃料を供給する最後の砦として非常に重要な役割を担うことになります。緊急車両の稼働や避難所の電力確保など、いざという時の備えとしてもガソリンスタンドの存在は欠かせません。

このように考えていくと、店舗の減少は単なる一業界の経営問題ではなく、私たちの暮らしの基盤をどのように維持していくかという社会全体の課題であることが見えてきます。これからのガソリンスタンドは、ガソリンを売るだけの場所から、車と地域の暮らしを共に支える総合拠点へと静かに変わっていくのかもしれません。


参考:
市町村別に見るSS過疎の状況(資源エネルギー庁)
自治体向け過疎地におけるガソリンスタンドの維持に関するガイドライン(資源エネルギー庁)
事務局説明資料(資源エネルギー庁 燃料流通政策室)



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ