1. トップ
  2. エピソード
  3. 時間変更を依頼された“指定席4枚”の切符。駅員が座席番号を見て手が止まり…→別の席を提案したワケ

時間変更を依頼された“指定席4枚”の切符。駅員が座席番号を見て手が止まり…→別の席を提案したワケ

  • 2026.9.24
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に体験した「プロだから気づいた違和感」を紹介します。私のような人間が「プロ」を自称するのは憚られる思いですが、ご容赦ください。

2020年、常識がひっくり返った

入社初年度の冬、私はインフルエンザ対策にマスクをつけていました。お客さまが窓口にいらっしゃったときはマスクを外して立ち上がり、「いらっしゃいませ」と案内します。「川里はしっかりマスクを外して丁寧だな」と先輩から褒められたこともあり、「お客さまの前ではマスクは外すものだ」というのが私にとっての常識でした。

おそらく、世間一般の認識からも大きく外れてはいなかったと思います。

ところが2020年を迎えると状況は一変。

新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐ取り組みが次々と試みられるようになります。マスクを外すことが控えられるようになり、休憩室で食事をとる新入社員を見て「なんか窓口にいるときと印象違うなあ」と感じる機会も大幅に増えました。

きっぷの売り方も、駅での対面販売からインターネット予約・券売機受け取りを増やして接触を避けようという方針になりました。

もしも駅員同士でクラスター感染を引き起こせば、駅の営業を一定期間縮小、または停止させざるを得なくなります。マスクだけでなく出勤前の体温確認や勤務中のこまめな手指消毒など、取れる対策は片っ端から取っていました。

対面応対が完全になくなったわけではない

とはいえ、窓口での対面応対が完全になくなったわけではありません。

たとえばインターネット予約のきっぷは「受け取り前なら何度でも変更可能」と謳っていましたが、裏を返せば「受け取り済みのきっぷの変更は駅でなければできない」のです。

しかも難しいことに、会社やきっぷの種類によって異なりますが、ネット割引や早期割引のきっぷは、通常価格のきっぷと変更条件が細かく異なります。

なかには一度受け取ったら変更できないきっぷもあるのですが、変更できないことを駅に来るまで知らなかったというお客さまも。

そういうわけである日、ネット予約のお客さまが指定席の時刻変更のために駅を訪れました。このお客さまのきっぷには割引が適用されていましたが、通常のきっぷと同じように無料で1回まで変更できるものです。ところが、渡されたきっぷを見た私の手は止まりました。

見えた!これが答えだ!

お客さまのご予約は大人4枚。

いずれも今日の同じ列車で、区間も同じです。ということは、ご家族またはグループでのご利用なのでしょう。窓口にいらっしゃったお客さまが1名ということは、代表してきっぷを手配・管理しているのかもしれません。

1時間早い便に、とのご要望だったのですが、私は元々予約されていた座席の番号が気になりました。

すべて2号車で、1-A、1-B、2-A、2-B。この列車は通路の両側に2席ずつ座席が配置されていますが、お客さまは2人×2列で予約しています。これが表す可能性のひとつが、頭に浮かびました。

1時間早い便の指定席がガラ空きなのを確認して、お客さまにこう伝えます。

「ご希望の列車には変更できます。ところで、現在は新型コロナウイルス感染防止のために座席の回転をご遠慮いただいているのですが、2列ずつ前後でお取りしてよろしいですか?それとも、通路を挟みますが横1列でお取りしましょうか?」

推理的中

当時、私の勤務していた鉄道会社では、コロナ禍での列車内の座席回転は、あくまで「お願い」ベースではあったものの、車掌が見つけ次第お声がけするほど強くご遠慮をお願いしていました。

このお客さまはそうとは知らず、列車内で座席を回転してボックス席風にしようとしているのではないかと考えたのです。

この推測は当たっていたようで「えっ、そうなんですか?」と、横1列での座席指定を了承していただけました。なにせ「車内の座席を回転させてはいけない」とまでは、きっぷ予約時の注意事項にも載っていなかったはずです。ニュースリリースまで確認すれば載っていたかもしれませんが、今からきっぷを買おうとしているときに

「まずは鉄道会社のニュースリリースを確認だ」

という方は、そうそういないでしょう。

きっと車内でも…

このお客さまは私が窓口で対応したため気づくことができましたが、券売機できっぷを受け取ったあとに変更しなかった方や、券売機で変更できるきっぷを持っていた方の場合は、座席を回転できないと知る機会がないまま乗車することになります。

当然、そのようなお客さまも多くいたはずです。車内で座席を回転させて気心の知れた仲間や家族とマスク付きとはいえ顔を向き合わせ、さあ楽しい旅行の始まりだというときに、やはりマスクをつけた車掌から

「申し訳ありませんが回転はご遠慮いただいておりまして…」

と言われては、台無しにされた気分にもなるでしょう。

とはいえ、あの頃は感染拡大防止が会社としても優先事項でしたから、どうにかご協力いただけるように乗務員たちも苦心したと聞きます。

「どうしてお前なんかの言うことを客が聞かにゃならんのだ!」と言って聞かない方も、やはり中にはいたようです。車掌は列車の保安要員でもあるので、できる限り車内でトラブルにならないよう駅で解決したいものです。

最後に、ほとんどのお客さまにはご協力いただけていると思いますが、乗務員のお願いはできるだけ聞いてあげてください。場合によっては列車の安全にもかかわります。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客さまそれぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ