1. トップ
  2. 「医師と看護師のロマンスはない(笑)」"天才女医"マンガの作者が踏み込む、リアルな現場への想い

「医師と看護師のロマンスはない(笑)」"天才女医"マンガの作者が踏み込む、リアルな現場への想い

  • 2026.8.31
undefined
出典:『おつかれさまです、榛原さん』【7話】人間らしい生活(pixiv)

多くの人にとって、医師や看護師といった医療従事者は「身近なようで、実はよく知らない存在」ではないでしょうか。漠然と「有能そう」「優しそう」といったイメージを抱きながらも、実際の仕事内容や胸の内までは、案外知られていないものです。

今回は、そんな“何となくのイメージ”に、ちょっと違う角度から光を当ててくれる漫画、pixivで連載中の『おつかれさまです、榛原さん』を紹介します。

主人公は、手術件数、術後成績ともに国内トップの心臓血管外科医・榛原あおい。「天才外科医」と評判の彼女ですが、その内側には、周囲が抱くイメージとはまったく違う顔が隠れています。

作者のあまめのこしさんに、作品づくりの背景を伺いました。

「榛原の痛いところを突く存在を作りたい」

undefined
出典:『おつかれさまです、榛原さん』【一話】榛原あおい、心臓血管外科医。(pixiv)

榛原の自伝本の装幀を手がけることになったのは、売れっ子装幀家・梶 良太。

梶は初めての打ち合わせで、予定になかった表紙デザイン案を提案します。当初のデザインは、いかにも「天才外科医」然とした凛々しい榛原の写真を使ったものでした。ところが梶が出してきた別案は、頭を抱え苦悩をにじませる榛原の横顔を前面に押し出したもの。内面を見透かされたような感覚に、榛原は思わず身構えてしまいます。ですが、この出会いをきっかけに、榛原は少しずつ自分の内面と向き合い始めることに……。

――榛原さんと同じくらい、梶さんというキャラクターにも魅力を感じております。どのようにキャラクターを作り上げていったのか教えてください。

あまめのこしさん:
ありがとうございます。まず、非医療従事者から見た医師って、想像以上に解像度が低いと思っています。それくらい、わりと未知な存在として扱われつつ、漠然と「医師ってかっこいい、すごい」と一方的にイメージを押し付けられている気がして。だから、本作に出てくる出版社の編集者って、読者に一番近い存在だと思っています。
梶は、書籍の装幀を作るお仕事ですが、この仕事をするには、物事のバックグラウンドをよく知り、人の話をきちんとヒアリングしないといけない。先入観や偏見を抱かないからこそ、榛原の痛いところを突く存在を作りたいと思った時、梶が生まれました。

大切にしているのはフィクションとリアリティのバランス

undefined
出典:『おつかれさまです、榛原さん』【3話】仕事人の矜持(pixiv)

地方で生まれ育った榛原は、高校時代、母と同じ看護師を目指していましたが、ある日、同級生の男子から看護師について性的な偏見からくる揶揄を受け、激しく憤ります。帰宅後、祖母に「母さんってすごいよなあ? 看護師ってかっこいいよな?」と尋ねた榛原。「看護師はいいよぉ」という祖母の返事に一度は安堵したものの、続く言葉に強い違和感を覚えることになります。祖母が当たり前のように口にしたのは、「世話上手さやけ。旦那さんにゃあ困らんがや。嫁にもろた家ぁ、そりゃ幸せなもんやわいね」という言葉だったのです。

――作中で、榛原さんが祖母の「看護師観」に違和感を覚える場面がありますが、このエピソードに込めた思いを教えてください。

あまめのこしさん:
よく、看護師というだけで家族の看護、介護を担保されると思い込んでいる、あるいは看護師を嫁入り修業か何かだと思い込んでいる人がいまだに(若い人でもそうでもない人でも)見受けられることに、常々嘆かわしく感じていて、このシーンを描きました。
専門的かつ包括的な視点で常に予測性・準備性・即応性をもって患者を看護するプロフェッショナル集団なんだよ、という思いで描きました。

――制作にあたって大切にしていることや、読者へのメッセージがあればお聞かせください。

あまめのこしさん:
病院の屋上には行かないし、医師と看護師のロマンスはないし、患者の急変は起きません(笑)。医療従事者の方々が読んでも「ないない!」と思われないように、フィクションとリアリティのバランスは大切にしています。

――貴重なお話、ありがとうございました。

「イメージ」の外側にいる、等身大の榛原

undefined
出典:『おつかれさまです、榛原さん』【3話】仕事人の矜持(pixiv)

「看護師は世話上手」「医師はかっこいい」、今でもそんなぼんやりとした印象を持っている人も少なくないようです。しかし、そのような先入観だけでは見えてこない部分に、本作はさらりと切り込んできます。

他者との出会いをきっかけに少しずつ自分自身と向き合っていく榛原の姿には、自分ごととして共感を覚える方も多いのではないでしょうか。

作品あらすじ
手術件数、術後成績ともに国内トップクラスを誇る心臓血管外科医・榛原あおい。後輩からの信頼も厚く、「天才外科医」との呼び声も高い彼女だが、自分自身のことには無頓着で、私生活では“汚部屋”暮らしを送っている。自伝本の出版をきっかけに、売れっ子装幀家・梶 良太と出会った榛原。人の心の機微に敏い梶と関わるうちに、榛原は少しずつ自分自身と向き合い始める――。

取材協力:あまめのこし
2024年9月に『おつかれさまです、榛原さん』の読み切り版をpixivに投稿し、翌2025年4月から連載を開始。本作は2025年4月の「pixivマンガ月例賞」で大賞を受賞した。普段は社会人生活を送りながら漫画制作に取り組んでいる。趣味は、読書、映画、乗馬、観劇。

・ブログ
・作品:『おつかれさまです、榛原さん』

 



 

▶『おつかれさまです、榛原さん』本編を読む

#1 この人 苦手だ
#1 この人 苦手だ

▶︎ こちらの記事も読む(インタビュー前半)

「彼らも同じ人間なのに…」医療従事者の私生活が犠牲になるのは当然?「天才女医」マンガであえて描いたのは【作者インタビュー】
「彼らも同じ人間なのに…」医療従事者の私生活が犠牲になるのは当然?「天才女医」マンガであえて描いたのは【作者インタビュー】

クリエイター情報

あまめのこし

野生の漫画描き。  『おつかれさまです、榛原さん』という女医が主人公のヒューマンドラマを描いています。汚部屋外科医と、おせっかいデザイナーの再生譚。 人間愛が好き。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ