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【ミラノデザインウィーク2026】観るから、「入り込む」へ。Louis Vuitton、GUCCIで際立つ没入体験DAY2

  • 2026.5.11

今年のミラノは、やっぱり「入り込ませてくる」展示が圧倒的に人気。作品を見ているつもりでも、気づけば光や音、味や香りに導かれ、空間そのものに引き込まれていく……。2日目もそんな体験の連続でした。エルメス、ルイ・ヴィトン、グッチ、アシックス、イソップなどを巡りながら、ブランドごとに思考を凝らした「体験」の作り方を探ります。

1. MARNIで朝食を!老舗Cucchiとコラボレーション

予約制の展示も多く、2日目は少し早めのスタート。まず向かったのは、マルニがコラボレーションした老舗カフェ「パスティッチェリア・クッキ(Cucchi Pasticceria)」。1936年創業のこのカフェも、期間中はすっかりマルニ仕様。普段はグリーン一色のオーニングがストライプへと変わり、ポップな存在感を放っていました。

画像: 1. MARNIで朝食を!老舗Cucchiとコラボレーション

今回のポップアップでは、砂糖のパッケージやナプキン、テイクアウトカップからプレート、ティーポット、テキスタイル、さらにはカメリエーレのユニフォームに至るまで、両ブランドのロゴが落とし込まれたデザインに。

画像: エスプレッソ€3、ミックスベリーとメープルシロップのパンケーキ€12
エスプレッソ€3、ミックスベリーとメープルシロップのパンケーキ€12

テラス席に案内され、パンケーキとエスプレッソをオーダー。ブランドロゴがあしらわれた陶器で運ばれてくるだけで、自然とテンションも上がります。ただ朝食をとるだけなのに、なんだか映画のワンシーンに入り込んでいるような感覚。ミラノの日常に溶け込む、そんなコラボレーションでした。このカフェは、デザインウィーク後も7月まで続くそうです。

2. タペストリーで歴史を紡ぐ『GUCCI』での体験

続いて向かったのは「Gucci Memoria」。アーティスティック・ディレクターのデムナがキュレーションを手がけた展示です。10時の予約枠を確保したものの、到着するとすでに長蛇の列。結局中に入るまで30分待ち。

画像: 2. タペストリーで歴史を紡ぐ『GUCCI』での体験

ようやく中へ足を踏み入れると、まず現れたのは真っ黒な巨大自動販売機。予約時に受け取ったQRコードをかざすと、「GUCCI GIARDINO」と書かれた特別仕様のミニドリンクが出てくる仕組みで、さりげない遊び心に思わず気分も上がります。

その先に進むと空気が一変。歴史ある回廊の中庭には、可憐な花々が咲き誇り、空間全体がボタニカルなムードに包まれていました。

画像: Early Beginnings(原点)
Early Beginnings(原点)

回廊の壁に沿って配置されていたのは、12点の巨大なタペストリー。創業者グッチオ・グッチの人生からメゾンの歩みを辿っていく構成です。最初のタペストリーでは、ポーター姿のグッチオ・グッチがロンドンのホテル「ザ・サヴォイ」で働いていた頃の姿が描かれていて、ブランドの原点を感じさせる一枚。

画像: A House Reborn(ブランドの再生)
A House Reborn(ブランドの再生)

中でも印象的だったのが、トム・フォードによる黄金期(1994〜2004年)を表現した「A House Reborn」。象徴的なルックが脚光を浴びる構図で、その時代の高揚感のようなものが伝わってきます。

画像: 「La Famiglia」(ラ ファミリア)
「La Famiglia」(ラ ファミリア)

そして後半に進むにつれて物語は一気に現在へ。11枚目のタペストリーでは、初コレクション「La Famiglia」を象徴するルックが描かれ、デムナによる新たな時代の幕開けを表現しているのが印象的。

画像: Work in Progress(創造は続く)
Work in Progress(創造は続く)

そして最後のタペストリーは、アトリエでの制作風景を描いた印象的な一枚。伝統的なアトリエ空間の中に、ひっそりと置かれたゲーミングチェアがどこか異質で、歴史を受け継ぎながらも、今のリアルな制作環境が交差したかのような不思議なムードを放っていたように感じます。

ただ展示を観るというより、ブランドの歴史を時間軸で歩いているような壮大な体験でした。

3. 『Hermès』で感じるクラフトマンシップ

次にやってきたのはエルメス。中に入って感じたのは、無機質と自然体の絶妙なバランス。派手な演出はなく、コンクリートの床にオフホワイトを基調にした空間。そこに、高さや比率の異なる立方体や直方体のオブジェが置かれ、その上に新作のホームコレクションがランダムに点在。

画像: 3. 『Hermès』で感じるクラフトマンシップ

今回のテーマは、「旅人が空間をつくる」。物を並べること、測ること、積み上げることで、空間(住まいの原型)が生まれるというストーリーを感じさせる展示です。

画像: テーブル「スタジアム・ドゥ・エルメス」
テーブル「スタジアム・ドゥ・エルメス」

中でも注目は、中央に置かれた大理石のテーブル「スタジアム・ドゥ・エルメス」。8の字を描くような優雅なフォルムが馬の背の曲線や競馬場のトラックを彷彿とさせる、エルメスのルーツを感じる端正な佇まい。

画像: 上:ベース「パラディオン・ドゥ・エルメス」、下:プレード「クランプ・ダイ」
上:ベース「パラディオン・ドゥ・エルメス」、下:プレード「クランプ・ダイ」

また、銀細工職人のクラフトマンシップが光るベース「パラディオン・ドゥ・エルメス」は、槌目を施したメタルにホースヘアー(馬の毛)を組み合わせた大胆さ。カシミアをベースにネパールで手織りされたプレード(ブランケット)「クランプ・ダイ」は、防染加工で幾何学模様が描かれ、柔らかさの中に熟練の技術が宿る作品です。

このプラットフォームの中を自由に歩き回り、見上げたり、覗き込んだりしながら、冒険心をくすぐるように鑑賞する、そんな新鮮味溢れる演出でした。

4. 五感を刺激する『Aesop』

ここで急遽、オーストラリア発のスキンケアブランド、イソップへ。というのも、グッチの列に並んでいたとき、隣の人に勧められ、リストに追加することに。会場となっているサンタ・マリア・デル・カルミネ教会へ急ぎ足で向かいました。

が、しかし。ここでも先が見えない長蛇の列に思わず二度見(笑)。結局40分ほど並び、ようやく中へ。

画像1: 4. 五感を刺激する『Aesop』

カーテンをくぐると、ハンドジェルを手にしたスタッフが待ち構え、まずは手を洗うところから体験が始まります。なんだか、参拝前に手を清めるような感覚。

画像2: 4. 五感を刺激する『Aesop』

柑橘系のやわらかな香りに包まれながら奥へ進むと、足場のような構造体に、布で覆われた壁面が広がります。よく見ると、布には建物が描かれ「だまし絵」のよう。これは、ミラノの街並みの断片が切り取られコラージュされたものなんだそう。

今回のインスタレーション「The Factory ofLight」は、初の照明器具「Aposē(アポーゼ)」のお披露目の場でもあります。4つの映像作品を通して、ものづくりの過程を、聴く(Hear)、見る(See)、触れる(Touch)、嗅ぐ(Smell)という感覚に紐づけて体験できる構成に。

画像3: 4. 五感を刺激する『Aesop』

華やかな香りに誘われるかのように奥へ進むと、今回の主役、「Aposē」の空間へ。10,826本の琥珀色のボトルが波打つように配置され、そこに「Aposē」の光が柔らかく重なります。室内に光が反射し、空間全体に静かに広がっていく神秘的な光景。

香りと光に包まれながら、視覚と嗅覚が強く刺激されるインスタレーションでした。

5. 都会に佇む『ZARA』のテルマエで気持ちを整える

画像: 5. 都会に佇む『ZARA』のテルマエで気持ちを整える

賑やかなブレラ地区を離れ、向かったのは緑豊かなセンピオーネ公園。園内にあるパラッツィーナ・アッピアーニで行われている「Calma by ZARA」は、古代ローマのテルマエ(浴場)の儀式や体験を、現代のウェルビーイングとして再解釈したインスタレーションです。

都会の喧騒から離れ、足取りもゆっくりに……。自然と気持ちがほどけて、ふっと脱力できる時間でした。

6. 『ASICS』では「履いて体験する」新しい提案

続いて向かったのは、今回がミラノデザインウィーク初参加となるアシックス。会場は、まるで宇宙ステーションのようなミニマルでフューチャリスティックな空間。やわらかなライティングと有機的フォルムが共存していて、心地いい空気感の中、スタッフの丁寧な対応も印象的でした。

画像1: 6. 『ASICS』では「履いて体験する」新しい提案

今回の「ASICS Kinetic Playscape」は、新作スニーカー「GEL-KINETIC™ 2.0」を実際に履いて、体感できるインスタレーション。案内されるままスニーカーと靴下を受け取り、その場で履き替えます。

画像2: 6. 『ASICS』では「履いて体験する」新しい提案

足を入れた瞬間、ゲル由来の抜群のクッション性を実感。ふわっと持ち上がるような感覚で、なんだか少し身長が伸びたような軽やかさがあって、気分が上がります。

そんな感覚を携えたまま、砂が敷き詰められた架空の「アシックス研究所」へ進みます。ここでは、ジャンプしたり、歩いたり、自由に動きながら履き心地を確かめられる構成で「試すこと」そのものがコンテンツになっているのが印象的でした。

画像3: 6. 『ASICS』では「履いて体験する」新しい提案

新作を履いてひと通り楽しんだあとは、隣接するカフェスペースで靴を脱ぎ、ひと休み。朝から駆け足状態だったこともあり、抹茶ラテを飲みながら少しパワーチャージ。新作を見るだけでなく、身体で理解する体験型のアプローチが、アシックスらしい提案に感じられました。

7. 『H&M HOME』はケリー・ウェアストラーとの初コラボ

次に訪れたのは、ポルタ・ロマーナ地区にあるパラッツォ・アチェルビ。長い間非公開だった17世紀のバロック建築ということもあり、建物に入れるだけでも特別な体験です。

画像: 2Fから見た中庭のNoxenスツール
2Fから見た中庭のNoxenスツール

ここでは、「H&M HOME × ケリー・ウェアストラー」の展示が行われていて、会場は多くの来場者で賑わっていました。中庭に置かれたNoxenスツールは、家具と建築が自然に調和し、空間そのものがひとつの作品のような印象に。

画像: 左上:ランプ「Aurex」、右上:シーティング「Soluna」と「Poma」、左下:フラワーベース「Curva」、右下:アームチェア「Avers」とテーブル「Ortra」
左上:ランプ「Aurex」、右上:シーティング「Soluna」と「Poma」、左下:フラワーベース「Curva」、右下:アームチェア「Avers」とテーブル「Ortra」

2Fのエントランスには、足元を照らすテーブルランプが連なり、奥の部屋には、カバナのような空間が設けられ、その中で宝石のように光を放つランプが印象的でした。さらに奥へ進むと、ストライプの壁紙を背景に積み重ねられたシーティング、曲線が印象的なフラワーベースが配置され、空間ごとに異なる表情を見せてくれます。アームチェアとテーブルが置かれた最後の部屋では、自然光が差し込み、空間全体をやわらかく引き立てていました。

歴史ある建築の中で展開されるインスタレーションは、スケール感があり、見応え十分。家具と空間が一体となった展示でした。

8. 「旅」をテーマにした『LOUIS VUITTON』圧巻の体験

そしてラストは、ルイ・ヴィトンのインスタレーションが行われているパラッツォ・セルベローニへ。格式ある宮殿を舞台に、アール・デコと現代が融合した「旅」が広がっていました。

画像1: 8. 「旅」をテーマにした『LOUIS VUITTON』圧巻の体験

約40分待ってようやく宮殿内へ。目の前に現れたのは、幾何学的なデザインやオブジェで構成された美しく開放的なフォトスペースのような空間。

ここから建物の中へアクセスするのですが、ここでも列ができていて、さらに1時間待ってようやく中へ。そして、そこに待ち構えていたのは、待ち時間さえも忘れさせてくれるほどの圧巻の展示でした。

画像2: 8. 「旅」をテーマにした『LOUIS VUITTON』圧巻の体験

アイコニックなモチーフで彩られたトランクを横目に螺旋階段を上がり、「ジャンガレアッツォ」の間から旅がスタート。ここでは、ブランドのルーツを辿る体験が広がります。初期のトランク、トラベルアクセサリーなど旅にまつわるオブジェが、1920年代の列車を思わせる空間に展示されていました。

画像: 上:アームチェア「Aventura」、左:チェア「Riviera(リヴィエラ)」、右:ドレッサー「Celeste(セレスト)」
上:アームチェア「Aventura」、左:チェア「Riviera(リヴィエラ)」、右:ドレッサー「Celeste(セレスト)」

今回のハイライトは、「ナポレオニカ」の間に展示された、フランスのアーティスト、ピエール·ルグランへのオマージュコレクション。1921年に依頼を受けてルグランがデザインしたオメガ型ドレッサー「セレスト」の復刻版も登場。彫刻的な家具とグラフィカルなテキスタイルを組み合わせた、とても印象に残るコレクションでした。

画像: エストゥディオ・カンパーナとジェラルディン・ゴンザレスがコラボレーションした「Dichroic Cocoon」
エストゥディオ・カンパーナとジェラルディン・ゴンザレスがコラボレーションした「Dichroic Cocoon」

「ブドワール」の間では、熟練した職人たちによって生み出された作品が集結。中でも、注目を集めていたのが、新作「Cocoon Dichroic」。手作業でカットされた虹色のフューチャリスティックな「繭」と、見る角度で表情が変わる生地を使用し、宇宙空間へと誘ってくれる新作アームチェア「Stella」。

画像: イギリスのデザインスタジオ、ロー・エッジズによるアームチェア「Stella」
イギリスのデザインスタジオ、ロー・エッジズによるアームチェア「Stella」

世界中のデザイナーや職人たちのクラフトマンシップが集結した「オブジェ・ノマド コレクション」。巨大オブジェ、螺旋階段、部屋ごとに変わる世界観。ただ観るのではなく、進むごとに新たな旅へと誘ってくれる構成でした。

気づけば閉館前。最後の最後まで、高揚感と好奇心が途切れることなく続く、そんな2日目でした。

今年のフオーリサローネを巡って

今回はアパレルブランドを中心に2日間巡りましたが、ただ「見る」だけで終わらない、インタラクティブな展示が多く、自然と惹きつけられていました。

マリメッコとマルニでは味覚を通して世界観に入り込み、ナイキでは「Air」の歴史と技術を体感。グッチでは歴史を辿る構成の中に引き込まれ、アシックスでは実際に履くことでプロダクトを理解する体験が用意されていました。触れて、味わって、香って、空間を歩くうちに、気づけばその世界に入り込んでいく……。そして、その体験を思わず誰かとシェアしたくなる。この感覚こそが、多くの人を魅了している理由なのかもしれません。

ミラノという空間とここでの時間の流れがあってこそ、生まれる体験だと実感しました。来年はどんな「出会い」があるのか、今から楽しみです。

Photographer & Senior Writer:Aco.Hirai

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