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「続編は無理だろうな」「諦めてる」“絶望視”されるワケ…それでも「NHK様、今でも待ってる」“切望の声”が絶えない『至高ドラマ』

  • 2026.5.10

ドラマや映画の中には、傷だらけになりながらも前へ進む人物の姿が強く残る作品があります。今回は、そんな中から“実力派の名演が光るNHK作品”をテーマに5本セレクトしました。本記事ではその第3弾として、ドラマ『ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~』(NHK)をご紹介します。 

殴られても、疑われても、34歳の女性探偵が目の前の違和感を見逃さない本作の魅力とはーー?

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です 

※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ 

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ドラマーで女優、シシド・カフカが「写真展 オードリー・ヘプバーン」の内覧会に出席した(C)SANKEI
  • 作品名(放送局):ドラマ『ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~』(NHK) 
  • 放送期間:2020年1月24日〜2020年3月6日 
  • 出演:シシド・カフカ(葉村晶 役)、間宮祥太朗(岡田正太郎 役)、池田成志(村木義弘 役)、津田寛治(速見治松 役) ほか

本作の主人公は、34歳独身の葉村晶(シシド・カフカ)です。晶はミステリー専門書店「MURDER BEAR BOOKSHOP」でアルバイトをしながら、店のオーナー(中村梅雀)が半ば冗談で始めた「白熊探偵社」の調査員として働いています。

質素な生活を送り、訳ありの転職や転居を十数回も重ねてきた人物です。 物語では、晶が依頼を受けるたびに事件へ巻き込まれていきます。

第1話では、姉の珠洲(MEGUMI)が晶の前に現れて海外旅行のチケットを押しつけました。その直後、山中で見つかった女性遺体の身分証に「葉村晶」と記されていたことで、晶の日常は一気に不穏な方向へ動き出します。 

本作は、探偵が鮮やかに謎を解くだけの物語ではありません。晶自身が危険の中心に置かれ、痛みを受けながら真相へ近づいていく点に大きな特徴があります。ミステリーでありながら、ひとりの女性が自分の人生と向き合う物語としても見応えがあります。

続編希望の声が相次ぐも、制作環境の変化で実現は遠い可能性も

本作は、続編を望む声が挙がることが自然に感じられる終わり方をしていました。実際に古書店や探偵社、刑事たちそして晶を取り巻く人間関係には、まだ先を見たいと思わせる余白があります。 

しかし、SNSでは「続編は無理だろうな」「諦めてる」「せめて再放送を…」など、続編が簡単ではないと見られる声もあります。その理由は、NHK名古屋放送局が2022年度からドラマ制作から撤退したためです。

ドラマ『ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~』はNHK名古屋放送局の制作であり、制作環境の変化が続編の実現を難しくしていると考える方がいるのも無理もありません。ここで大切なのは、公式に続編は不可能と発表されたわけではない点です。

2020年に全7回で放送された作品が今も語られ、視聴者から続編を期待する声が上がっていることに注目したいです。晶が事件の後も書店で働き、また誰かの依頼を受ける姿を想像できるからこそ、視聴者は続きを待ちたくなるのだと思います。

「私の調査に手加減はない」傷だらけでも真相へ向かう探偵の覚悟

本作の完成度を支えているのは、事件の陰惨さと人物の感情を同時に描くバランスです。物語の終盤、晶はミチル(井頭愛海)から昔の写真を受け取り、事件の裏で岡田(間宮祥太朗)が暗躍しているのではないかと疑い始めます。

その後、晶は美和の母・亜寿美(筒井真理子)が自ら命を絶ったことを知り、事件への関与を疑って岡田に詰め寄りました。ここでは、亜寿美の自決や事件に関わるゲームの存在を通じて、背後にある悪意や追い詰められていく人物たちの苦しさが示唆されます。

印象的なのは、葉村晶のモットーとして紹介される「私の調査に手加減はない」という言葉です。これは晶が依頼人や関係者に対して、ただ優しい言葉をかけるだけの探偵ではないことを示しています。

最終回で、晶は監禁されて逃げ延びたあとも退かず、亜寿美の死を知って岡田へ向かいました。傷ついた自分を守るより、隠された悪意を暴こうとする晶の姿によって、この言葉が生き方そのものとして伝わります。

シシド・カフカさん自身もウェブメディア「本の話」でのインタビューで、次のように語っています。

クールに見えて情に厚い女性ですね。そのクールさも、調査相手と距離をとるためにあえてつくっていると思っています。そもそも、情に厚くないと探偵なんかやれないでしょうね。それと、タフじゃないとやっていられない。葉村はレンガで殴られた後でもすぐに立ち上がって、走ってますから
出典:シシド・カフカ「世界で最も不運な探偵 ハムラアキラ」を演じて 本の話 2020年1月30日配信

SNSでは「NHK様、今でも待ってる」「ハムラアキラ続編…」「続編やってほしい」「続編希望!」といった声が多く見られます。物語や映像、音楽が一体となりNHKドラマらしい硬派な見応えを生んでいます。

初主演のシシド・カフカが体現した、“不運でも折れない”34歳の女性探偵

葉村晶は34歳の女性探偵で、私生活も仕事も決して順調ではありません。それでも晶は、黙って視線を向けることで、相手の嘘や違和感を探っていきます。

だからこそ、晶が一歩踏み出す瞬間に重みが生まれました。上述のインタビュー内で、シシドさんは次のようにも語っています。

走らされるわ、殴られるわと、さすが、「世界で最も不運な探偵」といわれるだけのことはあります
出典:シシド・カフカ「世界で最も不運な探偵 ハムラアキラ」を演じて 本の話 2020年1月30日配信

実際の劇中でも、晶は危険に巻き込まれ、監禁されて逃げ延びても調査をやめません。普通なら身を引きたくなる状況で、晶が汚れた服のまま相手のもとへ向かう姿からは、シシドさんが身体ごと役を生きているような迫力が伝わります。

シシドさんのクールな存在感やスタイリッシュな映像、菊地成孔さんの音楽が作品世界をかたち作っていました。本作の葉村晶は、無表情に見える顔の奥で怒りや悲しみをにじませ、必要なときだけ短い言葉を置く芝居によって成立しています。 

不運に見舞われても、他人の痛みを見捨てない本作は、まさに“実力派の名演が光るNHK作品”と呼ぶにふさわしい一作です。ハードボイルドなミステリーが好きな方はもちろん、傷つきながらも仕事を全うする人物の物語に惹かれる方にも届くドラマです。ぜひ一度、ご自身の目で葉村晶のまなざしを確かめてみてください。


※記事は執筆時点の情報です