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森英恵さん生誕100周年。次世代へ継承するファッションの夢

  • 2026.4.12
パリでの1995-96年秋冬オートクチュールコレクションで発表されたドレス。透ける黒のチュールには、星くずのような細かいビジューが施され、森さんの代名詞ともいえる蝶のモチーフを華やかに彩ります。羽衣のようなストールにも、蝶が浮かび上がるドラマティックなルック。ドレス ストール(2点共 HANAE MORI Haute Couture) Seiji Fujimori

「生き生きと生命力に溢れ、敏捷(びんしょう)げに目を光らせた女性が美しい」。1961年に雑誌の記事で新しい女性像を提案したデザイナーの森英恵さん。彼女が考える魅力的な女性、“ヴァイタル・タイプ”を展覧会名に掲げた回顧展が、森さんの故郷である島根に続き、東京でも4月15日(水)から開催されます。森さんが日本を越えて世界に届けた美意識とモード、未来への夢について振り返ります。

祖母、森英恵から、森星へ伝承する生き方とは? 「命を編み、人生をしつらえる」

青のグラデーションに無数のビジューがきらめくトップスは、太陽の光を反射する海面のよう。ボトムには、歌舞伎をモチーフにしたプリントが描かれて。日本の文化を世界に伝えながらも、裾にレースをあしらうなど、西洋のドレスの歴史に敬意を表した1983年発表のオートクチュール。ドレス(HANAE MORI Haute Couture)靴(スタイリスト私物) Seiji Fujimori

今回、森英恵さんのアーカイブをまとい登場したのは、モデルの森星さん。日本の文化や美学を国内外に発信する「tefutefu(テフテフ)」のクリエイティブディレクターとしても活躍する星さんが英恵さんについて語ります。

時代の流れを捉えた祖母の好奇心に学びたい

大小の水玉を一針一針縫いとった、光り輝くイブニング。幾何学的なのに主張しすぎない、たおやかな美しさは森さんの作品に共通するもの。熟練した職人たちと年2回、パリでオートクチュールコレクションを発表し続けてきた、クチュリエールとしての矜持が感じられる一着。ドレス(HANAE MORI Haute Couture) 靴(スタイリスト私物) Seiji Fujimori

「祖母のオートクチュールを着てカメラの前に立ったとき、家族だからこそ感じる、彼女の強い思いをまとっている気持ちになりました。カラーレスの生きるか死ぬかという戦争を体験してきた祖母だからこそ、あふれる色彩と飛翔する蝶の柄で、世の中に夢と生きるパワーを伝えたかったこと。海外進出のときに、好奇心と同時に強い緊張感を抱いたことも、服に袖を通して実感したことです。パリのオートクチュールコレクションに参加するチャンスを得たときに、評価されていた鮮やかな色彩や蝶のモチーフに頼らないと決めた覚悟と挑戦。『日本の品格は西洋のエレガンスに負けない』という誇りを持ちつつ、フランスの美意識へはらった敬意。仕事をする中で悔しいこともあったと思いますが、『常に時代を読み、アップデートした自分でいないと、時代の先を表現する服を作れない』という思いを抱いていたことは、今の私の生きる指針にもなっています」

1977年にパリのオートクチュールコレクションにデビューした森さん。「原点に立ち返り、ゼロからのデザインに挑戦したい」と取り組んだのが、アイコニックな蝶のモチーフの封印と、モノトーンのドレスの製作でした。’92年発表のドレスは、きものの帯を思わせる、リボンが扇のように広がる意匠。ドレス(HANAE MORI Haute Couture) Seiji Fujimori

4時間しか睡眠時間を取れない時期もあったという多忙な英恵さんですが、「どんなに忙しくても、暮らしを大切にしていた」と語る星さん。

「祖母は見て触れる家のしつらえが、美意識をつくると知っていました。だからこそ、日本人が茶の湯を通して育んできた、命を丁寧に編み、生をしつらえるというすべを実践し、伝えてきたのだと思います」

「大学時代、祖母に、母、姉、自分のための服のスケッチを描いてみてと言われたことがあります。自分が届け先を意識するようになった今、『各世代の生に寄り添うことが、真のファッションである』と、祖母は伝えたかったのだなと思います」

問い合わせ先
HANAE MORI
URL/www.hanae-mori.com

森英恵の大回顧展「ヴァイタル・タイプ」開催! オートクチュールのドレスなど約400点を展示

Hearst Owned

森英恵さんの没後初となる展覧会「生誕100年 森英恵 ヴァイタル・タイプ」が、東京・六本木の国立新美術館にて、4月15日(水)から7月6日(月)まで開催されます。第一会場として森さんの故郷、島根県立石見美術館でも開催された回顧展の見どころは、森さんが27年間にわたってパリで発表したオートクチュールコレクション。こだわり抜いた贅沢な素材と卓越した職人技による華やかなドレスを、テーマごとに見ることができます。

1968年のイブニングアンサンブル (コート、ドレス)。島根県立石見美術館所蔵。 (C)MASAKI OGAWA
1974年にNYで発表されたイブニングアンサンブル。1996年にメアリー・グリッグス・バーク氏が寄贈(1996.130.6a,b)し、’96年からメトロポリタン美術館所蔵。 (C)The Metropolitan Museum of Art. Image source:Art Resource,NY

またニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵のドレス4点も、日本初公開。伊藤若冲の≪月下白梅図≫(1755年)から着想を得たドレス(写真上)もそのうちの一着です。

横尾忠則が携わった雑誌『流行通信』。No.195( 1980年4月)流行通信、島根県立石見美術館所蔵。 (C)RYUKO TSUSHIN

森さんが1966年に創刊した『森英恵流行通信』や、現在も続くテレビ番組「ファッション通信」など、モードの情報基盤となるクリエーションの数々も展示。

1964年に発表された帯地のコ-トのブランドラベル。島根県立石見美術館所蔵。 (C)MASAKI OGAWA

同じ時代を駆け抜けたモデルの松本弘子さんや俳優の岡田茉莉子さん、黒柳徹子さん、グラフィックデザイナーの横尾忠則さん、田中一光さんとの交流を伝える貴重な資料や、制服コレクションも必見です。

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「生誕100年 森英恵 ヴァイタル・タイプ」
会期/2026年4月15日(水)~7月6日(月)
会場/国立新美術館 企画展示室1E
所在地/東京都港区六本木7-22-2
休館日/火曜日※5月5日(火・祝)は開館
料金/当日一般¥2,200、大学生¥1,800、高校生¥1,400、中学生以下無料
TEL/050-5541-8600(ハローダイヤル)

初出:リシェスNo.55 2026年3月27日発売
PHOTOGRAPHS:SEIJI FUJIMORI
STYLING:MISAKI ITO
HAIR:JUN GOTO(REPUBLISH)
MAKEUP:MIFUNE(SIGNO)
TEXT & EDITING:KAORI MIURA

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