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虐待事件、加害母親は叩かれるべき存在か? その複雑に絡んだ背景を想起させる漫画『その叫びは聞こえていたのに』【著者インタビュー】

  • 2026.3.28

【漫画】本編を読む

「お母さんと2人でお父さんから逃げてきてん」。小学生の時、複雑な環境で育つ同級生・ナルミと仲良くなったカヨコ。しかしナルミは突然いなくなってしまう。大人になり、民生委員という地域を見守るボランティアとして活動するカヨコの前に、18歳の母親・アカネが現れる。アカネはナルミに瓜二つ。カヨコはアカネにナルミを重ね、民生委員の仕事範囲以上に彼女を助けようと奮闘する――。

自身も民生委員、そして子育て世代に特化した支援を行う主任児童委員として活動するきむらかずよさんが描く『その叫びは聞こえていたのに 消えた母子をめぐる物語』(KADOKAWA)。無縁社会に落ちてしまった母と子どもを描いたセミフィクションエッセイだ。孤立した母親が育児困難に陥り、育児放棄・虐待などの事件を起こしてしまう場合もある。本作はそんなきっかけにもなり得てしまう、子育て中特有の孤独や不安に焦点を当てた一冊。本作について、民生委員として見つめてきた社会から孤立した子育てについて、著者であるきむらさんに話を伺った。

――読者の声はきむら先生の耳に届いていますか?

きむらかずよさん(以下、きむら):はい。何が正解かわからない、深いテーマだとよく言われます。「虐待のニュースが出たらすぐに『母親が悪い』と言うような人が、この本を読むことで、事件の背景について考えるきっかけになるんじゃないか」と言われました。「表面だけを見て母親を叩くんじゃなくて、手を差し伸べる選択肢がある、そういう支援があることを知る窓口になると思うから、ぜひ役所の待合室に置いてほしい」と言っていただいて。嬉しかったですね。

――確かに私も悲しい事件が起きても、その時悲しいなと思うだけで深く考えてきていなかったので、考えさせられる部分が大きかったです。お気に入りのキャラクターはいますか?

きむら:一番お気に入りはアカネです。アカネのキーワードのひとつに愛着障害(幼少期に安定した愛着関係が形成されなかったことにより、情緒や対人関係に困難を抱える状態)があって。愛着障害を調べれば調べるほど、昔の同級生たちが重なったんです。愛着障害を抱える人たちは人との距離の取り方がわからないとよく言われますが、それはピュアだからこそ人と距離を置くことができない。裏表がなく素直だからこそ、人が聞いたら引くような家庭環境を笑いながら話してしまう。私は彼女たちのそんな憎めないところが愛しかったんだなと。

――人によっては「面倒だから距離を置こう」と思ってしまうかもしれないアカネのような子に対するきむら先生の愛情というか、人柄が作品に表れているんだなと今お話を聞いていて感じました。本作をどんな方に読んでほしいですか?

きむら:虐待のニュースを目にしたことのある、全ての方に読んでもらいたいなと思います。ニュースに出てくるお母さんたちを叩く前に、その背景を想像してみてほしい。視点を変えて「自分にできることはないか」と考えていただけたらと思うので、そのきっかけになれたら嬉しいです。もちろん子育てに困っておられるお母さんたちにも読んでいただきたいですね。

取材・文=原智香

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